「娘の肥満は学校のせい!」担任教師を悩ます午後2時のクレーム電話

幼稚園や学校など、教育機関に対して理不尽な要求を行う「モンスターペアレント」。文科省の調査によれば、モンペの攻撃等により心を病み、休職にいたる教師も増加の一途なのだとか。彼らを苦しめる“理不尽な要求”を、実話にもとづいてご紹介しましょう。

幼稚園や学校など、教育機関に対して理不尽な要求を行う「モンスターペアレント」。2000年代に入ってから社会問題としてニュースで取り上げられるようになりました。文科省の調査によれば、モンペの攻撃等により心を病み、休職に至る教師も増加しているとのこと。ところで……この“理不尽な要求”とは、いったいぜんたい、どの程度の理不尽なのでしょうか。

午後2時。授業の真っ最中に母親が怒鳴り込み

数年前の秋のこと。東京都下の小学校で教鞭をふるう神山はるかさん(33歳・仮名)は、担任を受け持つ5年B組の授業中、校長から急な呼び出しを受けました。教頭に代理での授業を頼み、校長室へと急ぐと、そこにいたのはとある女子児童の母親。はるかさんの顔を見るなり、こうまくしたてたといいます。

家にヘンな手紙が届いた!! こんな手紙を送ってくるなんて、何を考えているんだ!

「その手紙というのは、学校から家庭に送った、生活習慣についての指導のお知らせだったんです。じつはその女子児童は、とても太っている子で……。近年では、肥満が子どもに及ぼす影響が大きいことから、生活改善・体質改善にむけて、家庭側にも問題意識を持ってもらうために書面+面談等の指導を行うことになっているんです。でも、そのことが気に障ったんでしょうね」

その母親は、

ウチの子どもがデブだって言いたいのか!

子どもに好きなものを食べさせて何が悪い!

ウチの子が太っているのは、私のせいじゃなく、学校のせいだ!

学校が責任をもって痩せさせろ!

と、校長やはるかさんに口を挟ませることなく、一方的に3時間ほど喚きたて、気が済んだところで帰っていったといいます。

しかしそれからも、午後2時頃になると思い出したように電話をかけてきて『娘がちっとも痩せない! どういうことだ!』と怒鳴ったり、『娘が、給食が少ないと言っている。まさか娘にだけ何も食べさせてないんじゃないだろうな!』と、意味不明なことを叫んだり。

はるかさんは、そのたびに授業や雑務を中断させられ、その分、残業になることの繰り返しだとか。

「給食を食べ終わると、憂鬱になります。どうか、今日は電話がかかってきませんように!と祈る毎日が続いていて、もう、ストレスはMAXですよ」

聴いているだけで「ウヘェ……」となるような出来事ですが、それでも、可哀想なのは当該する女子児童のほうなのだから「私たちは、ただただ、我慢するしかないんです」とはるかさん。
 

この親にして、この子あり……これは真実!

児童の肥満対策の際、親だけでなく、児童本人への指導も行われます。もちろん「太ってるから痩せろ!」というような直接的な指導ではなく、体育の授業の際に、運動することが楽しいと思わせるように、あえてほめたり、励ましたり。委員会やクラブなどの課外行動に積極的に参加させ、できるだけ身体を動かすよううながしたり。他の生徒以上に目をかけ、痩せるための道筋を付けていくそうです。

しかし、その女子児童は教師の指導などものともせず、「歩くと疲れる」からと、登下校は親が車で送り迎えをし(家は子どもの足で徒歩10分程度の場所)、体育の授業は「体操着を忘れたからできない」とサボってばかり。課外行動などもってのほかで、ホームルームが終わるやいなや廊下に飛び出し、「迎えに来て~」と母親に電話をする始末なのだとか。

「子供たちを平等に扱わなければならない教師が、こんなことを言ってはいけないとは思うんですが……性格が良い子なら、かわいげが少しでもある子なら、もっと情熱を傾けることができるのになぁ……って、そう思ってしまうんです。でもこの女子児童の場合、“この親にしてこの子あり”と思わずにいられないというか」

入学した時からわがままなことで有名で、他の児童から付けられた影のあだなは、国民的子ども向けロボットアニメに出てくる某妹キャラクター。授業中に3回も4回もトイレに行き、給食時は牛乳が嫌いな児童から牛乳を集めてきて全部飲んでしまう。隠れて持ってきたお菓子を休み時間に食べてしまうこともあり、そのたびにはるかさんをはじめ、教師陣が注意をしますが、

だってお腹が空いているんだから仕方ないじゃん。学校の給食が少ないのが悪いってママも言ってる!

先生うるさい!! しつこい!! ママに言いつけてやる!!

と、悪びれもせず、ヒステリックに言ってのけるのだとか。

「じつは、半年以上前から、クラスメートが彼女から距離を置くようになってしまっているんですよ。指導者の立場としてはどうにかしなければいけないんですが……何しろ本人が周囲にわがままを振りまいては嫌われる……の繰り返しなので、他の児童に『仲良くしてあげようね』なんてとても言えません。ほかの子たちが、その女子児童のためにがまんを強いられる義務はどこにもありませんから」

残念ながら現状では、親も子も「放っておく」以外に手段がないのだと、はるかさん。

理不尽な要求を繰り返すモンスターペアレント&モンスターチルドレンが増える中、私たちにできることとは……。せめて自分たちにモンスターの害が及ばないよう“近づかない”。それ以外に、効果的な方策はあるのでしょうか。

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