約50万人が不妊治療を行っているとされ、少子化に歯止めのかからない現代社会。夫婦と子どもたちでつくりあげる、幸せな家庭を夢見た結果が「離婚」だった――そんな切ないエピソードをお届けします。
 

30代後半。まだまだ産める。そう思っていた

東京都在住の原田実花さん(38歳・仮名)は、中堅企業に勤め、34歳で課長に昇進。仕事の面白さが分かってきたときに仕事先で夫と出会い、半年でスピード婚。その後も仕事を続けていましたが、2年ほど経ったある日、夫とともに、義実家に呼び出されました。
 

「結婚してもうすぐ2年になるけれど、子どもはまだ? 子どもが欲しいと思っていないの? まさかこのまま、ふたりで生きていくつもりなの?」
 

「こんなことを言いたくはないが、年齢的にみて、そろそろ孫をつくらないとヤバイんじゃないのか?」
 

義父母からは、そのようなことを畳みかけるように言われ、実花さんは思わず、夫と顔を見合わせたといいます。
 

「やだなぁ。まだ結婚してから2年だよ? 何アセってるの?」
 

夫はのんきにそう答えたのですが、
 

「何言ってるの! もうすぐ実花さん37歳でしょう? 女は子どもを産めるときなんて、限られてるのよ?」
 

そう義母に言われ、実花さんは心臓に釘を打たれたようなショックを受けたといいます。
 

「子どもが欲しいと思ってはいました。でも、夫とふたりの生活が楽しかったし、仕事も面白くなってきたところだったので、このバランスが崩れるのはちょっと……って思っていた部分もあったんです。それに、心のどこかで『30代・40代であっても、女である以上、子どもなんて余裕で産むことができる!』と信じていました」と実花さん。
 

「家に帰ってから夫と話し合ったのですが、その時は、これまで通り、自然の成り行きにまかせるという方向性でいくことになりました。でも、どこかに不安が残っていたので、会社の近くにある婦人科医に相談しに行ったんです」
 

検査の結果は無問題。でも年齢がネックに

一般的な婦人科検査を受けた結果、生理も順調に来ていた実花さんの身体には、大きな不調はなかったといいます。
 

「自分自身は健康だったので、ホッとしました。でも『子どもが欲しいなら、今すぐにでも不妊治療を始めるべきですが、どうしますか?』と医師から言われてびっくり。『30代後半で自然妊娠を望むのは、無謀な行為ですよ』って。
 

だから思わず聞き返したんです。生理もちゃんとあるのに、私はもう、治療をしないと子どもが産めないような年齢なんですか?って。そうしたら、先生が“妊娠力”をグラフ化した図を見せてくれて……20代前半で100%ある妊娠力が、30代後半では70%、40代では40%以下って感じで、みるみる落ちていくんです。
 

反比例して流産の確率はグンと跳ね上がる。夫が言ったように“自然”にまかせてしまったら、とてもじゃないけど厳しいかな?って。目が覚めた気がしました」
 

家に戻り、子どもを産むには義父母の言うようにタイムリミットがあること。そのため、タイミング法から治療を始めたいこと。不妊治療を始めるために、夫にも検査を受けてほしいこと。それを夫に伝えた実花さん。しかし、とうの夫から返ってきたのは、
 

「この前話し合って、自然の成り行きにまかせるって決めたじゃん。おまえの身体に問題が無いなら、子どもなんかすぐにできるよ」
 

という、なんともお気楽な言葉でした。
 

夫は検査を拒否。それが離婚の引き金に……

何度も話し合いを持ちかけるものの、夫は検査を拒否。その日以来、実花さんの中で、夫への不信感が募っていたといいます。
 

その後、医師のアドバイスを元にしてホルモン剤の投与などを行いつつ、排卵のタイミングに合わせて夫婦生活を行ったという実花さん。しかし4カ月経っても妊娠の兆しはなし。焦った実花さんは、再度、夫に「お願いだから、検査を受けてほしい」と懇願したといいます。しかし、
 

「あーー、もう、うるさい! こんなことなら、もっと若い嫁さんもらえばよかった!」
 

夫からの信じられないひと言に茫然。我に返ったとたんに荷物を整理して家を出て、即座に夫との離婚を決意したという実花さん。
 

「私がこれまで学び、働き、得てきたすべてを否定する言葉を、まさか、最愛の夫が言うなんて……そう思った瞬間、夫への愛情はゼロになりました。こんな思いをするくらいなら、もっと早く結婚して、もっと早く子どもをつくればよかったと、いまさらですが、後悔してやみません」
 

男性も女性も、「子どもは、結婚すればすぐにできるもの」「いくつになっても産めるもの」と考えがち。晩婚での結婚を考える際は、家族プランについてしっかり意見を交わし、年齢的なリスクがあることをお互いに了承してからにしたほうがいいでしょう。