2020年東京五輪への出場が内定した(左から)鈴木亜由子選手、前田穂南選手、中村匠吾選手、服部勇馬選手(編集部撮影)

9月15日、東京五輪のマラソン代表を決める「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が開催され、中村匠吾選手、服部勇馬選手、前田穂南選手、鈴木亜由子選手の4選手が東京五輪代表として内定しました。その4選手がどのような選手か、それぞれキーワードとともに紹介していきます。
 

MGC1位:中村匠吾選手(富士通/27歳)

中村匠吾選手(編集部撮影)

高校時代から世代トップを争ってきた選手。MGC出場選手の中でマラソンの自己ベストは8番目の実力者でした。MGCでは、40kmまで集団の中にいましたが、最後に抜け出し、2、3位の選手とデッドヒートを繰り広げながら引き離して優勝。16日が27歳の誕生日で、自ら花を添えました。
 

●最後のエース

上野工業高校(三重県、現伊賀白鳳高校)時代、校名変更のため、その校名での最後の在校生となった。「一緒に汗を流した仲間たちが沿道に応援に来てくれたので、結果で恩返ししたかった」(中村選手)。
 

●恩師たちの言葉

高校時代、恩師の町野英二先生(2012年死去)より、「激流を流れる木の葉のごとく、うまくレースを運びなさい」とよく言われていた。まさに今回のレースがその通りの展開で、集団の中で勝機を見極め、最後に強敵を振り切ったところが重なります。
 

駒澤大学卒業後も、母校の大八木弘明監督の指導を仰ぐ。大学2年生の時に東京での五輪開催が決まった際に「一緒にやらないか?」と誘われたという。そして指導を受けて通算9年目のシーズン。ようやく掴んだ五輪への切符に「少しは恩返しできたかな」。

大八木監督おなじみのフレーズ「男だろ」を掲げて声援を送った富士通の選手(編集部撮影)


 

●思い出される「第91回箱根駅伝1区で見せた複数回のスパート」

駒澤大学の4年生として最後に臨んだ第91回箱根駅伝。1区の終盤で先頭集団から離れては食らいつき……を何度も繰り返し、最後はスパートを繰り返して、2位の選手を振りほどき、1位でタスキをつなぎました。このシーンと今回のレースを重ねたファンも多いはず。
 

●暑いのは得意

大学時代は夏のユニバーシアードのハーフマラソンで銅メダル、予想外に暑くなったびわ湖マラソンでの日本人1位、そして今回のMGCと、暑さに苦手意識はない模様。本人曰く「科学的に調べたわけではないのでわからないが、夏場は練習などでも大崩れしない」。真夏の東京五輪でも期待ですね。
 

●五輪の意気込み

「ここから1年、精いっぱいやっていきたい」
 

MGC男子2位:服部勇馬選手(トヨタ自動車/25歳)

服部勇馬選手(編集部撮影)

東洋大学時代は箱根駅伝の「花の2区」で2年連続区間賞をとるなど、同世代をけん引。4回目のマラソン挑戦となった2018年の福岡国際マラソンで14年ぶりに日本人優勝(国内のマラソンでも、優勝するのは海外勢であることが多い、というのが実情です)。期待の存在で、「4強」の1人としてMGC開催前から注目されていました。
 

●フォームがキレイ

筆者は服部選手のフォームがとてもキレイだと思っています。今までのマラソンでは後半失速することもありましたが、MGCでは最後までフォームも崩れず、タイムも安定していました。この苦手を克服した要因として「苦手な距離走など、嫌な練習を続けたこと」を服部選手は挙げていました。40km走った翌日に、箱根駅伝5区のような山登りのコースを走るなど、厳しい練習を積んだ結果だったのではないでしょうか。
 

●コースの下見

コースの下見は5~8回ほど(回数は曖昧だそうです)。「治療で東京に来た時に数回。遊びに来たときの朝に試走したりした」。さすがアスリートですね。
 

●兄弟の存在

弟・服部弾馬選手(トーエネック)は今年の日本選手権5000m覇者。トラック種目での五輪出場を狙っています。今回のマラソンにおいては、妹が作ったお守りに亡くなった祖父母の写真を入れて走ったそうです。
 

●井上、木滑、大塚の影響

社会人2年目のボルダー合宿において「(一緒に合宿をした)井上(大仁)さん、木滑(良)さん(ともにMHPS)、大塚(祥平、九電工)の(厳しく取り組む)姿勢を見て変わらなきゃと思った」。影響を受けたメンバー全員がMGCに出場していますね。
 

●五輪の意気込み

「五輪での金メダル獲得は簡単ではないので、これまで以上に努力したい」
 

MGC女子1位:前田穂南選手(天満屋/23歳)

前田穂南選手(編集部撮影)

MGC出場を決める最初の指定レースとなった2017年の北海道マラソンで優勝。MGC出場権を一番最初に決めた選手です。2000年のシドニー五輪から2012年のロンドン五輪までの4大会連続で五輪女子マラソン代表を輩出している名門・天満屋で力をつけています。MGCでは20km過ぎから単独走となり、後続を3分離す圧巻の1位でした。
 

●会見等を通じて……

レース後の記者会見では、圧巻のレース運びからは想像できない、ひょうひょうとした印象。マイペースなのはマラソン向きの性格だと思います。
 

所属先の天満屋・武冨豊監督はそんな前田選手を「競技のことを生活の一部にしている。取り組みやすい選手」と評していました。
 

●ライバルも脱帽の強さ

MGCのレースを振り返り、2位の鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)は「前田さんのレースは強かった」。日本郵政の高橋昌彦監督も「前田選手は素晴らしかった。(MGCでの前田の走りには)鈴木は何回やっても勝てなかった」。
 

●日本記録に近い「2時間20分」を切る力は

所属先の天満屋・武冨監督曰く「そういう記録を狙うような練習もやってみたが、まだできなかった」。スピードを追いすぎると故障につながるので、今はそのような記録を狙う練習ではなく、これまでの練習を継続するそうです。

●陸上王国、兵庫県出身

長距離選手を多数輩出している兵庫県出身。高校は強豪の大阪薫英女学院(大阪府)に進学。選手層が厚く、高校時代は補欠に回りました。なお、MGC4位の松田瑞生選手(ダイハツ)の1年後輩になります。
 

●五輪の意気込み

「(MGCが終わったので)1回切り替えて、金メダルを目指して練習する」
 

MGC女子2位:鈴木亜由子選手(日本郵政グループ/27歳)

鈴木亜由子選手(編集部撮影)

リオデジャネイロ五輪では10000mで出場。今回五輪代表に決まった4選手の中で唯一、2回目の五輪挑戦となります。トラックからロードに舞台を移し、2回目のマラソンとなるMGCでは、後半に苦戦しながらも2位でゴールしました。
 

●中学時代から

中学2年、3年時に全国中学選手権1500mを連覇しており、当時から有名な選手でした。中学時代にトップだった選手が、社会人となっても一線で活躍し続けられることは珍しく、まさにエリートでした。
 

●東海地方

男子の中村匠吾選手(富士通・三重県出身)、服部勇馬選手(トヨタ自動車・練習拠点は愛知県)、鈴木選手も愛知県出身と東海地方にゆかりのある選手が活躍しました。
 

●伸びしろ

今回のMGCが自身2回目のマラソンでしたが、後半は身体が動かなくなるなどの洗礼を受けました。所属先の日本郵政グループ・高橋監督は「(鈴木選手は)我慢強さがマラソンに適している。いい経験をしたと思う」と話していました。
 

●走っているとき、笑っているように見える?

フィニッシュ地点の明治神宮外苑いちょう並木に戻ってきたときの鈴木亜由子選手。笑っているように見えるが……(編集部撮影)

終盤、口元が笑っているように見えましたが、鈴木選手は「疲れると口角があがるので、笑っているように見える。そう見えるときは、ああ、鈴木キツイんだな、と思ってください」「(日本郵政グループの)仲間は『きつそう』と思ったのではないか」とのこと。終盤は足が動かせなくなりながらも、粘り強く走り、粘り強くゴールしました。
 

●五輪の意気込み

「身が引き締まる思い。スピード持久力が課題。トラックのスピードを生かせるようにしたい」