東京五輪マラソン出場権は誰の手に?いよいよ号砲「MGC」の見どころ

9月15日、東京五輪マラソン代表選考会である、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が開催されます。初の試みであるマラソン五輪代表選手「一発選考」に臨む選手たちのこれまで道のりや主催側の思いを紹介していきます。

9月15日は「マラソングランドチャンピオンシップ」

9月15日、東京五輪マラソン代表選考会である「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が東京都内で開催されます。男子31名、女子12名が2020年の東京五輪の出場権獲得を狙います。


明治神宮外苑を発着とし、日本橋や浅草、銀座、芝公園などを通るコースで行われます。なお、東京五輪本番は新国立競技場の発着となりますが、ほぼ同じコースでのレースとなります。
 

男子は8時50分、女子は9時10分にスタート。コースは概ねフラットですが、終盤(36kmから41km)に上り坂があり、ここが勝負をわけるポイントになるのではないでしょうか。
 

MGC上位2名は内定!3位の選手も有利?

東京五輪マラソン代表枠は「3」ですが、MGCでは男女2位までの選手が東京五輪マラソン代表に内定します。
 

残りの「1」枠は、2020年までの指定大会で派遣標準記録(男子2時間5分49秒、女子2時間22分22秒)を上回り、最も速いタイムを出した選手1名が代表に内定します(参考:MGCホームページ)。
 

もしも該当者が出なければ、MGCで3位になった選手が内定することになります。
 

特に男子は派遣標準記録が日本記録に近い記録ということもあり、MGCで3位だった選手も、東京五輪内定の可能性があるといえます。
 

※参考

  • 男子マラソン日本記録 2時間5分50秒(大迫傑選手/2018年シカゴマラソン)
  • 女子マラソン日本記録 2時間19分12秒(野口みずき選手/2005年ベルリンマラソン)


 

MGC出場までの道のり

MGC開催が発表されたのが2017年であり、今回出場する選手は以下の条件をクリアした選手です。
 

  • 指定大会におけるタイム、順位の突破者
  • 期間内における上位2大会の平均記録での基準記録突破者
     

以上の条件を突破した男子31名、女子12名の選手がMGCへ出場します。
 

注目ポイントや注目選手は?

男子は日本記録保持者の大迫傑選手(ナイキオレゴンプロジェクト)、前日本記録保持者の設楽悠太選手(Honda)、2018年アジア競技会マラソン優勝の井上大仁選手(MHPS)、2018年福岡国際マラソン優勝の服部勇馬選手(トヨタ自動車)が4強といわれています。
 

筆者は他にも、東京マラソンで果敢にチャレンジした中村匠吾選手(富士通)、これまで故障が多かった中でマラソンで好記録を出し、まだまだ伸びしろを感じる藤本拓選手(トヨタ自動車)、箱根駅伝2区の上り坂で接戦を制した走りをMGC終盤の勝負どころでも期待される鈴木健吾選手(富士通)にも注目してほしいと思います。
 

女子は12名と少数ですが、マラソンのキャリアは2回ながらもいずれも2時間22分台のタイムでまとめている松田瑞生選手(ダイハツ)、2013年のモスクワ世界陸上マラソンで銅メダルの実績がある福士加代子選手(ワコール)などが出場します。
 

トラック種目で日本代表の経験のある上原美幸選手(第一生命グループ)、鈴木亜由子選手、関根花観選手(ともに日本郵政グループ)もマラソンでの初代表を狙える力があると思います。
 

日本陸上界のチャレンジ。これまでの五輪選考との違い

今までの五輪マラソン代表選考は、直近の世界選手権の実績、指定選考レースでの成績などによって選考されてきました。
 

このような選考方法に対して、不透明な選考過程という意見や、早期内定による弊害なども指摘されており、ファンの間ではたびたび、「一発選考」を望む声があがっていました。
 

9月15日に開催される「MGC」は五輪に出場する選手を「一発選考」で決める場です。主催する日本陸上競技連盟にとっては初の試みであり、思い切った「改革」をしたと思います。
 

出場選手発表会見に登壇した左から野口みずきさん(NHKで中継されるMGC女子マラソンの解説)、神野大地選手、瀬古利彦プロジェクトリーダー、高橋尚子さん(TBSで中継されるMGC男子マラソンのスペシャルキャスター)

6月3日に行われた出場選手発表会見において、瀬古利彦プロジェクトリーダーも「お祭りにしたい」と意気込んでいました。
 

陸上競技の難しいところは、「速い選手」が「強い選手」とは限らない点です。自己記録が速くても、レースで良い順位をとれるとは限りません。MGCではたくさんの選手が順位を狙うために、必ずしも日本記録がでるようなハイペースで推移するとは限りません(けん制し合う可能性もあります)。また、過酷な暑さの中での厳しいレースが想定されます。こうした厳しいレース環境の中で勝ち上がれる「強い選手」こそが、MGCを制することになるでしょう。
 

この記念すべき9月15日に、かつて日本のお家芸とわれたマラソン代表の「強い選手」をみなさんの眼で見てはいかがでしょうか。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい6つのこと。2つの用語、時系列、モノクロシーンの意味は?

  • どうする学校?どうなの保護者?

    なぜPTAで子どもの保険を扱うのか? 2024春、東京都Pが“別組織”で保険事業を始める理由

  • AIに負けない子の育て方

    2024年の中学入試は「弱気受験」だったというが…受験者増の人気校に見る、中受親の変化

  • アラサーが考える恋愛とお金

    仕事×子育てを両立できるのは「ごく一部の恵まれている女性」か。女性の社会進出という“風潮”が苦しい