今夏の甲子園では地元出身選手だけで構成された金足農業が決勝に進出し、圧倒的優勝候補の大阪桐蔭との対戦は「漫画のようだ」と話題になった。どちらが正義というわけではないが、漫画のようなダークホースの快進撃に期待してしまうのは人間の性かもしれない。そんな「漫画のような展開」を好む方々に注目してほしいチームがある。
 

漫画的のプロローグのような歴史


イタリア一部リーグ、セリエAでは名門ユベントスが現在7連覇中。そのユベントスの対抗馬の筆頭が今回紹介するSSCナポリである。絶対王者に挑む挑戦者。実に「漫画のような設定」である。

イタリア南部の町、ナポリに本拠地を置くこのチームは、86-87、89-90シーズンに二度優勝を経験。また、当時チームの王様として君臨したマラドーナは今も伝説として語り継がれ、背番号10は今も永久欠番となっている。

そんな伝説の10番がいた黄金期以来、30年間優勝はない。それどころか97-98シーズンに2部に降格し、そこから暗黒期へ。2004年には破産宣告を受け3部へと降格してしまった。漫画であれば100点のプロローグだ。

それから3年。07-08シーズンにはついにセリエA復帰を果たし、ここから新生ナポリの物語が幕を開ける。
 

快進撃の始まり

順調にセリエAで成長を続けるもののまだ優勝には手が届かないナポリ。そこに15-16シーズンにやってきたのがサッリ監督だった。元銀行員という漫画でもあまりないくらい特殊な経歴を持つ監督は就任1年目でチームをリーグ2位へ導く。

名実ともにワールドクラスといえる選手は、圧巻の36得点で66年ぶりにセリエA得点記録を更新したエースのイグアインのみだったかもしれない。しかし、その美しいパスサッカーは翌シーズンの載冠を予感させた。
 

漫画的逆境に挑む、漫画的キャラクター達

盤石の体制で今度こそユベントスの連覇を阻むはずだった16年夏。エースのイグアインは移籍した。それもよりによってユベントスに。

チームとしての規模が大きくないナポリのようなチームは活躍した選手をビッグクラブに引き抜かれるのは宿命である。しかし、元よりナポリなど南部の都市はユベントスの本拠地トリノなどの北部の都市との間に歴史的遺恨があったこともあり、サポーターは怒り狂った。

だが、ナポリの快進撃は終わらなかった。チームの新エースになったのはインシーニェ。地元出身で163cmの小さなファンタジスタだ。この設定、漫画だったら間違いなく主人公である。

そしてサッリがイグアインの代役としてCFに据えたのは、これまたCFとしては極めて小柄な169cmのメルテンス。この小柄な二人が抜群のテクニックとコンビネーションで相手を翻弄する様は、さながらキャプテン翼の翼君と岬君のようであった。

さらにトサカ頭がトレードマークのチーム一古株のゲームメーカー、ハムシク。圧倒的なフィジカルを持ち多くのビッグクラブから注目される気鋭の若手CBのクリバリら、ジャンプ編集部も絶賛するほどの個性豊かなキャラクターが完璧にかみ合ったこのチームのサッカーは、名将グアルディオラも「欧州で最も美しいサッカー」と賛辞を惜しまなかった。もし漫画であれば、実写化する際にその美しさを再現しきれず原作ファンが落胆すること請け合いだ。

また、緻密で組織的なサッカー故に主力が一人でも欠けると途端に機能性が低下する選手層の薄さも主人公のチームっぽさがあり、その弱点すら筆者にはどこか色っぽく見えた。
 

優勝に最も近づいた年

そして昨シーズン、ついにナポリは首位を走ることになる。猛追するユベントスをかわしながら首位を守っていたものの、選手層の薄さと怪我人の続出が影響。シーズン終盤ついに首位の座を奪われた。しかし主人公はここでは終わらない。

シーズン終盤、チームを救うゴールを決めたのはシーズン通してなかなか活躍できなかったサブの選手たち。スラムダンクでいう小暮だ。

そして残すところ4試合、勝てば勝ち点差1に迫れるユベントスとの直接対決。ナポリはクリバリのゴールでユベントスを倒し、ついに6連覇中のチームを追い詰める。

しかしその後、ナポリは力尽きたかのように2試合連続で勝利を逃し、ハッピーエンドを迎えることなくこのシーズンの冒険を終える。これまたスラムダンクの最終回のようだった。しかしナポリのストーリーは今シーズン新章に突入し、盛り上がりを見せている。
 

新たなる逆境を超えて主人公になれるか

今シーズンのSSCナポリ(写真:ロイター/アフロ)


その翌シーズンとなる今年、ナポリは監督のサッリとチームの心臓だったジョルジーニョがチームを去りイングランドの強豪チェルシーに移籍。それでも選手の流出を最小限に抑え、新たに欧州5大リーグのうち4つで優勝を経験した名将アンチェロッティを監督に迎え入れた。

そして今度こそユベントスの連覇を阻止したいナポリの前に再び大きな壁が現れる。ユベントスがクリスティアーノロナウドを獲得したのだ。ハッピーエンドを迎えたいナポリの前についに世界最強の男がラスボスとして立ちはだかった。
 

ナポリは最後に笑えるのか

アンチェロッティ率いるナポリは多少の戦術的なマイナーチェンジはありつつもここまで強く美しいサッカーを見せ、リーグでも2位に。また昨シーズンまではチームにフィットしきれなかった選手たちも輝きだし選手層も厚くなってきたといえる。

そして迎えた9月29日、首位ユベントスとの今シーズン最初の直接対決。ナポリはロナウドに3得点に絡む活躍を許し敗北を喫した。

しかし、それすらもナポリのストーリーの伏線なのかもしれない。主人公がラスボスに勝つにはまだ早すぎる。数々の物語を経て最後に勝つのが主人公。今度こそナポリが主人公になれるのか。ぜひ注目していただきたい。