手の内を知っているのは選手もチームも一緒!?
2018年のプロ野球も開幕して、約1カ月が経過しました。新天地で心機一転がんばる選手も多くいる中で、やはり注目を集めるのがFAで移籍を果たした選手たち。今年は大和(DeNA)や増井浩俊(オリックス)、野上亮磨(巨人)らの選手が新天地でそれぞれプレーしています。
選手の権利とはいえ、古巣ファンからしたら活躍した主力選手が他球団へ移籍するのはやはり寂しいもの。
特に同じリーグに所属するチームに移籍した場合は古巣との対決も頻繁にあるため、悔しくもあり、寂しくもありというような何とも言えない気持ちになってしまうことでしょう。昨季、楽天へ移籍した岸孝之が古巣・西武と初対戦した際にブーイングを受けていましたが、このブーイングも、そうしたファン心理を表したものと言えるでしょう。
一方、移籍した選手も、古巣との対決はやはり意識するもの。かつての同僚たちの得意球や苦手なコースは熟知しているだけに、「古巣対戦」を得意としている選手もいれば、逆に攻略されてスランプに陥る選手もいます。そこで、FA制度を利用して同一リーグに移籍した選手たちの移籍初年度の成績について調べてみました。
期待のFA移籍投手が振るわない巨人
検証してみたのは過去5年、FA制度を利用して同一リーグに移籍した選手たち。中でも人的や金銭の補償が必要になる年俸ランクBランク以上の選手全10名。まずは投手6人を見てみましょう。
◆過去5年、同一リーグへFA移籍した投手の成績一覧(17-18年オフ移籍選手は2018年4月22日現在の成績)※選手名横カッコ内は、(旧在籍球団→新所属球団 / 年俸ランク / 人的補償選手or金銭)。選手名下上段はFA移籍前年の成績、下段は移籍初年度の成績。
13-14年オフ
- 久保康友(阪神→DeNA / B / 鶴岡一成)
44試合 / 3勝4敗6セーブ11ホールド / 防御率2.85
↓
28試合 / 12勝6敗 / 防御率3.33 - 大竹寛(広島→巨人 / A / 一岡竜司)
25試合 / 10勝10敗 / 防御率3.37
↓
22試合 / 9勝6敗 / 防御率3.98 - 涌井秀章(西武→ロッテ / A / 中郷大樹)
45試合 / 5勝7敗7セーブ13ホールド / 防御率3.90
↓
26試合 / 8勝12敗 / 防御率4.21
16-17年オフ
- 岸孝之(西武→楽天 / A / 金銭)
19試合 / 9勝7敗 / 防御率2.49
↓
26試合 / 8勝10敗 / 防御率2.76 - 山口俊(DeNA→巨人 / B / 平良拳太郎)
19試合 / 11勝5敗 / 防御率2.86
↓
4試合 / 1勝1敗 / 防御率6.43
17-18年オフ
- 増井浩俊(日本ハム→オリックス / A / 金銭)
52試合 / 6勝1敗27セーブ7ホールド / 防御率2.39
↓
7試合 / 1勝3セーブ / 防御率4.50
明らかにFA移籍後に活躍したと言えるのが久保康友と涌井秀章。この2人は本来先発投手ながら、チーム事情によって移籍前年にはリリーフをやっていたという共通点があります。いずれもFA宣言時には「先発投手として起用してくれるチーム」を希望していました。選手の希望を尊重してくれたチームで本来の力を出し切ったと言えるでしょう。ちなみに涌井は移籍2年目の2015年には15勝を挙げて最多勝のタイトルも獲得しました。
一方で悲惨な成績に終わっているのが巨人に移籍した2名。大竹寛は移籍初年度、9勝6敗と3つ勝ち越しているので活躍したように見えますが、9勝中6勝は中日から稼いだもので、古巣の広島戦では1勝2敗、防御率6.06と散々。山口俊に至っては故障の影響でたった4試合しか投げられなかったどころか、暴力事件を起こして書類送検されるというトラブルに見舞われました。
そんな山口ですが、今季は開幕から一軍に帯同し、4月22日時点で3試合に登板して2勝0敗。古巣DeNA戦では防御率1.69という好投を見せています。不祥事でチームに迷惑をかけた昨季の汚名を返上するのでしょうか?
古巣には弱い傾向のある野手たち
今度は野手の方を見ていきましょう。
◆過去5年、同一リーグへFA移籍した野手の成績一覧(17-18年オフ移籍選手は2018年4月22日現在の成績)※選手名横カッコ内は、(旧在籍球団→新所属球団 / 年俸ランク / 人的補償選手or金銭)。選手名下上段はFA移籍前年の成績、下段は移籍初年度の成績。
13-14年オフ
- 鶴岡慎也(日本ハム→ソフトバンク / B / 藤岡好明)
114試合 / 打率.295 / 2本塁打 / 26打点
↓
98試合 / 打率.216 / 0本塁打 / 25打点
14-15年オフ
- 相川亮二(ヤクルト→巨人 / B / 奥村展征)
58試合 / 打率.250 / 2本塁打 / 21打点
↓
40試合 / 打率.313 / 4本塁打 / 17打点
15-16年オフ
- 今江年晶(敏晃)(ロッテ→楽天 / A / 金銭)
98試合 / 打率.287 / 1本塁打 / 38打点
↓
89試合 打率.281 / 3本塁打 / 23打点
17-18年オフ
- 大和(阪神→DeNA / B / 尾仲祐哉)
100試合 / 打率.280 / 1本塁打 / 16打点
↓
18試合 / 打率.215 / 0本塁打 / 4打点
投手と比べると、野手は移籍前年と同じくらいか、下がっているかのどちらかといった印象。高額な年俸を支払って獲得するFA選手は移籍初年度、レギュラーとして起用されることが多いのですが、過去5年で同一リーグに移籍した選手で移籍初年度に規定打席に到達した選手はゼロ。故障で戦線を離脱する選手もいますが、2013年オフにソフトバンクへ移籍した鶴岡慎也のように古巣相手に抑えられ、レギュラーを奪われるというケースが目立ちます。
その中で今季、注目を集めるのがDeNAへ移籍した大和。もともと守備職人で、打撃面では不安がありましたが、昨季はスイッチヒッターに転向して打率.280をマーク。レギュラー起用を求めてDeNAへ移籍し、目論み通りにショートの定位置を確保しましたが、一方で打率は2割を超えるのが精いっぱいという状態。あまりの不振ぶりにとうとうスイッチではなく、以前のように右打席のみに戻しました。
ちなみに、大和の対阪神戦の成績は5打数1安打で打率.200(4月22日時点)。念願とも言えるレギュラーに固定された今季はどんな成績を残すのか、注目して見てみましょう。