2018年冬から、田園都市線方面への着席ニーズに応える
2018年3月26日、東急電鉄は2018年冬から、東急電鉄初となる平日夜の有料座席指定サービスを大井町線で開始すると発表した。リリースによると、大井町駅から田園都市線方面へ帰宅する際の着席ニーズに応えるものだという。
私鉄各社では「有料座席指定列車」の運行が相次ぐ
このところ、首都圏の私鉄では、有料座席指定列車の新たな運行開始が相次いでいて、2月22日から京王電鉄が「京王ライナー」を、3月10日から西武鉄道が「拝島ライナー」をスタートさせたばかりである。また、運行開始1年を迎えた西武のSトレインも有楽町線直通のルートを夜間3本から5本に増発したばかりだ。
そうした動きに刺激されたのか、これまで、西武から土休日のみ東横線に乗り入れてくるSトレインをのぞいては有料座席指定列車と無縁だった東急までが、この流れに参戦するに至ったのである。
新サービスは「夜間1時間に1本ペース」「7両編成のうちの1両が指定席車」
リリースによると、新型車両6020系7両編成のうちの1両をロングシートからクロスシートへ転換できる車両に置き換え、平日の19時30分から23時台の間の5本程度を、座席指定サービス車両として運用する。この時間帯は、「京王ライナー」と似ていて、1時間に1本程度の頻度だ。
「京王ライナー」「拝島ライナー」は列車すべてが座席指定だが、東急の新サービスは、7両編成のうちの1両だけ。もっとも、6両編成だった急行を7両にしたばかりなので、普通車の利用客にしわ寄せがいくことはなさそうだ。一部の車両だけを指定とするやりかたは、JR普通列車の2階建てグリーン車や京阪電鉄のプレミアムカーのやりかたに倣ったものである。
渋谷経由の利用客を分散させる効果を狙うなら、停車駅はどうなる?
急行列車として運転の予定ということは、停車駅は現行の急行停車駅を踏襲するのだろうか? 指定席車が1両だけなら、ドアの開閉を1ヶ所だけにし、アテンダントを1人乗務させれば、指定券のチェックは問題ないのかもしれない。あるいは、指定席車だけは、ドアの開閉を行わない駅を設け、運転停車とする案、さらには、特急に格上げして停車駅を厳選することも考えられる。
田園都市線の渋谷に発着する列車に指定席車を連結しないのは、地下鉄半蔵門線に直通すると取り扱いがややこしくなることや、渋谷経由の利用客を分散させる効果を狙っているのかもしれない。
だとすれば、「京王ライナー」のように思い切って自由が丘や二子玉川を通過する可能性もある。永田町あたりからの利用客を渋谷経由にさせないためには、南北線に乗って、大岡山で大井町線に乗り換えさせることも必要であろう。となれば、大井町発の指定席車は大岡山だけに停め、次の停車駅は鷺沼あたりまでノンストップかもしれないし、思い切って大井町の次の停車駅は鷺沼ということも充分にありうるであろう。
大井町から鷺沼までは16.7kmだから、新宿~府中の21.9kmよりは短いけれど、各駅停車を追い抜く緩急接続駅という状況などを勘案すると、このあたりまでを座席指定区間とする可能性は高い。
東急では、有料座席指定サービスの愛称を募集
ところで、東急では、有料座席指定サービスの愛称を募集するという。列車まるごと指定席ではないので、サービスという言葉を使っている。とすれば、「TJライナー」「京王ライナー」「拝島ライナー」のような列車名ではないようだ。
むしろ京阪のプレミアムカーに近い愛称であろう。ロングシートとクロスシートを変換できる簡易な座席であるから、プレミアムやデラックスといった豪華な車内を連想させるような愛称はそぐわない。リザーブドカーのような横文字の愛称やJR北海道のuシートをまねてdシート、oシートといったアルファベット一文字の愛称になるのかもしれない。
憧れの東急沿線。一方で混雑でイメージ悪化も…挽回策となるか?
田園都市線をはじめとする東急沿線はイメージもよく、多くの人があこがれるハイクラスの住宅街として、ある意味、ブランドでもある。しかし、通勤時の混雑の激しさは首都圏でも有数のもので電車の遅延も常態化している。このままでは、他の沿線への転居を考える人も増えるなどブランドイメージが悪くなるかもしれないとの危機感があるのではないだろうか。
小田急の複々線化完成やロマンスカーでの通勤、京王や西武の通勤ライナー新設に刺激され、とうとう有料座席指定サービスに乗り出したものと思われる。
田園都市線の二子玉川~渋谷間は地下区間でもあり、複々線化工事はいまのところ考えられない。とすれば、大井町線を活用して、通勤客の分散を図るのは妥当であり、これまでも溝の口まで急行を走らせ対応してきた。さらに進めて有料座席指定サービスを始めることになり、その効果がどのようなものとなるのか興味が尽きない。ともあれ、詳細なリリースを期待して待ちたいと思う。