ファインニードルが新王者に! 第48回高松宮記念レースレビュー

直線で外から伸びた2番人気のファインニードルが差し切って勝利した今年の高松宮記念。先に抜け出していたレッツゴードンキとの直線の攻防や馬場状態を加味した各騎手の思惑なども入り混じり見どころ満載なレースになった今年の高松宮記念を振り返ります。

馬場状態を完璧に読み切ったファインニードルが新たな短距離王に

ファインニードル
高松宮記念 (G1) ファインニードルが優勝(写真:伊藤 康夫/アフロ)

3月25日、中京競馬場で第48回高松宮記念が開催されました。春のスプリント王決定戦としておなじみの一戦は2番人気に推されていたファインニードルが直線で鋭く伸び、先に抜け出していたレッツゴードンキをハナ差交わして1着。新たな短距離王が誕生しました。
 

直線の攻防が見ごたえ満点だった今年の高松宮記念、その激戦を振り返ってみましょう。
 

いつも以上に動けなかった、短距離界の絶対王者

今年の高松宮記念で最も注目されたのは昨年の最優秀短距離馬・レッドファルクスの動向でした。スプリンターズSを連覇し、短距離のG1レースで昨年3着に敗れていた高松宮記念を制して、日本の芝スプリントG1秋春連覇を果たすかが焦点となりました。
 

当然、レッドファルクス陣営も春のスプリント王決定戦のタイトルを獲るべく、年明けからこのレースを目標に仕上げてきました。復帰初戦の阪急杯では3着でしたが、上がり3ハロンのタイムはメンバー最速の33秒4を記録し、王者の実力を見せました。
 

叩き2戦目となった高松宮記念は単勝2.3倍の1番人気に推され、パドックでも元気いっぱいに歩いていたのですが、いざレースになるとダッシュが付かず、道中の位置取りは18頭中17番手というかなりの後方策。これまでのレッドファルクスらしからぬ位置取りに、馬券を買ったファンたちもどよめきました。
 

そして直線を迎えた際、ミルコ・デムーロ騎手は猛然と追い始め、最短距離であるインコースを突きましたが、残り200m地点で進路がふさがるというアクシデントも。やむを得ずに外へ進路を取り直しましたが、時すでに遅し。結果はまさかの8着に敗れました。
 

筆者がレースを見ていて感じたのはスタート後の反応の鈍さ。昨年の高松宮記念と比べてみても発馬は変わりありませんでしたが、すぐに馬群の中団に付いて行った昨年とは異なり、今年は押し寄せる馬たちに進路を譲るかのように後ろに下がっていきました。
 

短距離界の絶対王者とはいえ、レッドファルクスは今年で明け7歳の高齢馬。徐々にズブさが見られるようになってきたことが、思わぬ大敗につながったと言えるでしょう。
 

力の要る馬場状態を考慮した、川田将雅の好判断

そして、今年の高松宮記念を振り返る上で切っても切れないのが馬場状態。発表こそ良馬場でしたが、週中に降った雨の影響が残り、力の要るコンディションになっていました。そのため先行馬が粘りやすく、高松宮記念の前に行われたこの日の芝レース全5戦の勝ち馬のうち、4頭が4コーナーを3番手以内で回った馬でした。
 

そのため、高松宮記念も前に行った方が有利にレースを進められると考える陣営も多く、スタートから飛ばしていく馬が多数。その結果、前半3ハロンのタイムは33秒3というハイペースに。しかし、力の要る馬場だったため、あまり後ろにいすぎても届かないという騎手の判断力が問われるレースとなりました。
 

そんなシビアな馬場状態にいち早く対応したのがファインニードルの鞍上、川田将雅騎手でした。高松宮記念前の芝レースに4戦騎乗してコツを掴んでいたのもあるのでしょうが、それまで先行して結果を残していたファインニードルをあえて中団に待機させ、馬が密集する内側を避けて外を回し、残り200mのところまで追い出しを待つという好判断。「細針」の意の馬名の通り、鋭く伸びたファインニードルは先に抜け出していたレッツゴードンキをハナ差捕えての勝利を飾りました。
 

ファインニードルのこの勝利はオーナーのゴドルフィン、調教師の高橋忠成、そして生産牧場のダーレージャパンファームにとって初のG1レース制覇。特に世界屈指の大馬主として知られるゴドルフィンは3月17日に名義を変え、勝負服を「ロイヤルブルー」と称される青を基調にしたデザインのものに変更したばかり。ファインニードルの勝利は衣替えをアピールする最高の機会になったと言えるでしょう。
 

◆2018年高松宮記念全着順

着順  枠番  馬番  馬名 性齢 斤量  騎手 タイム/着差  人気  調教師
1 5 9 ファインニードル 牡5 57 川田将雅 1:08.5 2 高橋義忠
2 4 8 レッツゴードンキ 牝6 55 岩田康誠 ハナ 3 梅田智之
3 4 7 ナックビーナス 牝5 55 三浦皇成 1/2 10 杉浦宏昭
4 6 11 ダンスディレクター  牡8 57 武豊 1/2 4 笹田和秀
5 2 3 ブリザード セ7 57 K.ティータン  クビ 6 P.イウ
6 1 1 セイウンコウセイ 牡5 57 松田大作 クビ 5 上原博之
7 7 13 レーヌミノル 牝4 55 和田竜二 クビ 7 本田優
8 3 6 レッドファルクス 牡7 57 M.デムーロ 1/2 1 尾関知人
9 2 4 スノードラゴン 牡10  57 大野拓弥 3/4 15 高木登
10 8 17 キングハート 牡5 57 北村宏司 クビ 12 星野忍
11 6 12 ネロ 牡7 57 F.ミナリク 1 1/2 9 森秀行
12 8 16 シャイニングレイ 牡6 57 北村友一 クビ 8 高野友和
13 3 5 ノボバカラ 牡6 57 武藤雅 1/2 17 天間昭一
14 1 2 リエノテソーロ 牝4 55 吉田隼人 ハナ 13 武井亮
15 8 18 ラインスピリット 牡7 57 森一馬 ハナ 16 松永昌博
16 7 14 ラインミーティア 牡8 57 西田雄一郎 1 1/2 18 水野貴広
17 7 15 ジューヌエコール 牝4 55 福永祐一 1 1/4 14 安田隆行
18 5 10 ダイアナヘイロー 牝5 55 松山弘平 ハナ 11 大根田裕之 
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • 世界を知れば日本が見える

    韓国の戒厳令、尹大統領はなぜ突然「乱心」したのか。野党だけではない、北朝鮮とアメリカからの影響

  • ヒナタカの雑食系映画論

    独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅