一度見たら、忘れられない大逃げレースの魅力とは?

競走馬には脚質と呼ばれる得意な戦法がそれぞれあります。大きく4つに分けられますが、この中で競馬の華と言えるのが「逃げ」という脚質の馬たち。
 

競馬用語での「逃げ」とは、スタートからゴールまで先頭に立ってレースを引っ張る戦法のこと。中でも後続の馬群を10馬身以上離して逃げた場合は「大逃げ」と呼ばれ、向こう正面を過ぎたころから、レースを見ている観客の声援が一層大きなものに。まさに競馬の華と言っても差し支えないでしょう。
 

今回はそんな逃げ馬たちが大逃げを見せ、なおかつ3馬身以上の差をつけて勝利したレースを過去20年の中から紹介していきます。
 

歴史に残る大逃げレースその1:1998年金鯱賞

もう20年もの月日が経過しましたが、未だに「大逃げ」といえば1998年の金鯱賞を挙げる方も多いでしょう。稀代の逃げ馬、サイレンススズカのベストレースとしても語り継がれています。
 

前年の暮れから武豊を鞍上に迎えるようになったサイレンススズカは、明け4歳になったこの年、本格化の兆しを見せていました。迎えた金鯱賞は、前年の菊花賞馬マチカネフクキタルらの豪華メンバーが名を連ねていましたが、1番人気に支持されました。もしかしたら、ファンもサイレンススズカの胸をすくような逃げを期待したのかもしれません。
 

そんなファンの気持ちに応えるかのようにサイレンススズカはスタートから飛ばして先頭に立つと、最初の1000mを58秒1で通過。この間、2番手のテイエムオオアラシには優に10馬身の差をつけていました。
 

これだけのハイペースを記録しておきながら、サイレンススズカは4コーナーを過ぎてもバテるどころかさらにペースを上げ、涼しい顔のままゴールイン。2着のミッドナイトベットには10馬身以上の差をつける大差勝ちで、1分57秒8というレコードタイムも飾りました。
 

ちなみにこのレースでは、先頭をひた走るサイレンススズカの姿を見た中京競馬場のファンから、大歓声だけでなく拍手が沸き起こるという異例の事態が起こりました。1998年の金鯱賞が未だに語り継がれる所以と言えるでしょう。
 

歴史に残る大逃げレースその2:2014年アイルランドT

エイシンヒカリ
その後2015年の香港カップ (G1)で優勝したエイシンヒカリ(写真:アフロ)

大逃げで勝利した馬はファンに強い印象を与えますが、中でもインパクト抜群だったのが2014年のアイルランドT。圧倒的1番人気に推されていたエイシンヒカリがデビューから5連勝を飾ったレースですが……単に勝利しただけでなく、そのレース振りにファンは度肝を抜かれました。
 

デビュー2戦目以降、エイシンヒカリは逃げの戦法を取るようになりましたが、当時は後続に付ける着差は2~3馬身程度という一介の逃げ馬に過ぎませんでした。初の東京競馬場でのレースとなったアイルランドTではスタートから飛ばして、3コーナーを過ぎたあたりで約15馬身の差をつける大逃げ。直線が長く、逃げ馬が不利とされる東京競馬場ではあまり見られない光景だけに、ファンは大歓声で迎えます。
 

直線に入ると後続が迫り、鞍上の横山典弘が懸命にムチを振るって追い出しますが、エイシンヒカリはヨレてしまい、外ラチ沿いへと接近していきます。あわやラチに激突するかというほどに近づきましたが、最後までそのスピードは衰えず、2着のエックスマークに3馬身半差をつけて勝利しました。
 

エイシンヒカリはその後、香港C、イスパーン賞などの海外G1を制覇。そのスピードは世界レベルのものと言えるでしょう。
 

歴史に残る大逃げレースその3:2004年天皇賞(春)

「長距離戦のノーマークの逃げ馬ほど怖いものはない」という馬券格言がありますが、2004年の天皇賞(春)はそんな格言を体現したレースと言っても過言ではないでしょう。


レース前は1番人気に支持されたリンカーンをはじめ、前年のクラシック戦線を沸かせた4歳牡馬の4頭が中心的存在と目されていました。その中で風穴を開けたのが、18頭中10番人気という人気薄の存在だったイングランディーレです。
 

イングランディーレは1周目からすでに大逃げを見せ、勝負どころの2周目の3コーナーの時点で、その差は15馬身もの差になっていました。人気に推された4歳勢は折り合いが付かず、先行したゼンノロブロイ以外は互いがけん制し合う形で後方待機。その姿はまるで金縛りにあっているかのようでした。
 

そして迎えた直線。人気の4歳馬たちが伸びあぐねる中、イングランディーレが快調に飛ばすというまさかの展開に。結果的にイングランディーレは2着に入ったゼンノロブロイに7馬身差をつけての逃げ切り勝ち。単勝7100円、3連複は21万1160円という波乱の決着となりました。
 

歴史に残る大逃げレースその4:2011年三木特別

最後に紹介するこのレースは、競馬ファンの中ではいまだに語り継がれている知る人ぞ知る一戦と言えるでしょう。


このレースの主役となるのはアドマイヤベルナ。JRAで3歳夏にデビューしたものの、これと言った活躍はできず、名古屋競馬に移籍。すると先行策を覚えて半年間で2勝を挙げると再びJRAへ復帰。3戦目に自身初となる特別戦の三木特別に出走しました。
 

単勝オッズ1.8倍と圧倒的な人気に支持されたアドマイヤベルナは、スタートからけれん味のない逃げを見せて先頭に立つと、前半から1ハロン11秒台のタイムを連発。1000m通過時点では58秒3というハイペースの逃げを見せ、2番手の馬にはすでに12~13馬身もの差をつけて直線に入りました。
 

ラストはさすがに疲れが見えたアドマイヤベルナですが、最終的に2着のエクスペディションに5馬身差をつけての逃げ切り勝ち。その圧倒的なスピードを見たファンは将来の活躍を期待しました。
 

しかし、その後のアドマイヤベルナは故障に悩まされることになり、三木特別の1年後に現役を引退。この三木特別が最後のレースとなってしまいました。それだけにファンの記憶にこのレースが強く残っているとも言えるでしょう。
 

一度見れば忘れられない大逃げレースの数々。現地で見たら忘れられないものになるだけに、ぜひとも競馬場でこの感動を体験してみましょう。