有料座席指定列車の愛称は投票で決定!
新型車両新5000系の登場など着々と準備を進めてきた京王電鉄初の有料座席指定列車の詳細が1月24日に公表された。
まず、列車の愛称は「京王ライナー」。昨年4月から5月にかけて愛称投票を行っている。そのときにノミネートされた5つの候補は「京王ライナー」「京王スマートライナー」「京王プライムライナー」「Luxpress(ラクスプレス)」「WESTAR(ウェスター)」であった。この中では、一番単純でストレートな「京王ライナー」に決まったわけだが、分かりにくかったり、奇をてらったりした意味不明の愛称が氾濫している中、明快ですっきりした列車名であると思う。総投票数約24000票のうち最多の6300票ほどを得たのが「京王ライナー」とのことだから、誰もが納得するであろう。
停車駅に秘められた思惑
「京王ライナー」の気になる停車駅は、京王八王子行きが、新宿を出ると、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野の途中5駅に停車する。一方、橋本行きは、新宿の次は京王永山、その後、京王多摩センター、南大沢と途中の停車駅は3駅のみである。これらの停車駅は、従来の特急停車駅を基本としつつも、明大前、調布、京王稲田堤は通過としている。
明大前は、新宿から5分程で近すぎるので当然かもしれない。明大前に停車して、井の頭線からの乗り換え客の便を図るために「乗車のみ可能」とする方法も考えられるところではあるが、ホームが狭く、誤乗や指定券を持たない客の乗車があると精算作業などが煩雑になるので、それを避けるためであろうか。
◆重要駅「調布」は通過。JR中央線との競争を意識?
調布は、京王の本線と相模原線のジャンクションとして重要な駅である。停車すれば、調布駅利用者は30分に1本「京王ライナー」が利用できたはずだ。しかし、新宿から僅か15分なので、さらに遠距離客を優遇するため、敢えて通過としたのであろう。また、指定券は新宿駅のみ発売とし、最初の停車駅から先は、指定券不要としているので、調布に停車した場合、調布までは普通の特急や準特急を利用し、そこから京王ライナーに乗車しようとする裏ワザを使う客が殺到する恐れもある。そうしたいくつかの要因から調布を通過としたのかもしれない。
また、JR中央線との競争も意識して八王子への所要時間短縮をはかるため、停車駅を厳選したとも言える。競合すると思われるJRの「中央ライナー」と比較してみよう。例えば、中央ライナー7号は、新宿22:45発で八王子到着23:21(所要時間36分、510円)。一方、京王ライナー13号は、新宿23:00発で京王八王子着23:35(所要時間35分、400円)。運賃はJRが480円(ICカード利用なら474円)、京王は360円なので、京王が有利となる。もっとも、JRは特急形車両で座席前にテーブルを設置できるし、トイレもついている。そのあたりは好み次第と言えるかもしれない。
◆京王稲田堤を通過にし、分倍河原に停車する意味
京王稲田堤を通過にしたのは、多摩ニュータウンへの速達性を優先したからであろう。永山や多摩センターは小田急と競合するので、「新宿から京王多摩センターへ最速24分」というキャッチコピーはウリになるとみているのではないだろうか。小田急は、多摩線へのロマンスカー乗り入れを止めてしまったけれど、複々線完成に伴う3月のダイヤ改正では多摩線の利便性向上をアピールしている。それでも、直通の快速急行(ロングシート)で35分、新百合ヶ丘の同じホーム乗換のホームウェイ(新宿発の通勤用ロマンスカー)プラス多摩線各駅停車利用で41分なので、所要時間と着席保証の2つで「京王ライナー」は優勢だ。
一方、同じ南武線との乗換駅である分倍河原に停めるのは、立川方面への乗換の便宜を図り、JR中央線「中央ライナー」の立川駅周辺の利用者を取り込もうと考えた結果ではと思う。
料金は強気の設定?
列車本数は、それぞれの系統で5本ずつ。平日は、20時台から24時台まで1時間毎、土休日は17時台から21時台までとなる。従来からある電車の本数が減るわけではなく、京王ライナー分が増発となり、一般の利用者にしわ寄せが行く心配はない。
指定料金は、大人、子供とも同額、さらに乗車距離に関係なく一律400円としている。最初の停車駅までを座席指定券必要区間としたのは、東武東上線のTJライナーと同じシステムだ。
そのTJライナーは指定料金310円、京急のウィング号は300円である。東京メトロ有楽町線に乗り入れる西武のSトレインは2社にまたがるので510円(土休日の西武線内のみの指定料金は300円)なので、似たような列車を比較すると京王ライナーの指定料金は意外にも強気の設定だといえる(JR「中央ライナー」510円よりは安い)。ふたを開けてみての利用者の反応はどうなるのか興味深い。
リリースを見てユニークだと思ったのが、新宿駅停車中に車内でBGMを流すことである。指揮者の和田一樹氏が作曲したオリジナルなクラシック系の音楽らしいけれど、列車内でのBGMは珍しい試みだ。時を同じくして、東京メトロでも日比谷線の新型車両13000系車内においてBGMを日中の一部時間帯に限り流すという。乗客はどんな反応を示すのだろうか?
2月半ばの木曜から運転開始は異例
「京王ライナー」の運転開始は2月22日に決まった。同時に京王線と井の頭線ではダイヤ改正を行う。2月、それも週の半ばの木曜日からというのは異例のことだ。当初、春からと言われていたので、3月を想定していた。少々早めたのは様々な要因があってのことと思われる。
夜間に運転する列車の様子を見て、「京王ライナー」は、週末の高尾山口への行楽列車への投入、朝方新宿への上り列車への投入と守備範囲を広めていく計画のようである。また、前面に非常用ドアもあるので地下鉄乗入れも可能だ。都営新宿線直通での都心乗り入れと、夢は広がる。ともあれ、「京王ライナー」が好評を博することを祈るばかりである。