最近、いわゆるオレオレ詐欺、振り込め詐欺といった高齢者を狙った犯罪を耳にすることも多いと思います。ただそういった被害が現れる犯罪は、氷山の一角に過ぎません。
 

コンサルタントとして相続や財産にかかわるご相談にのる中で、しばしばご本人やご親族からお聞きする事例があります。
 

それは認知機能が落ちてきた高齢者に、金融商品の購入や不動産の売買を半ば強引に行わせる営業マンがいるということです。犯罪とまでは言えませんが、状況を聞いてみると極めて悪質なケースも多く、息子や娘と離れて一人で暮らす高齢者が特に狙われやすい傾向にあります。
 

ここでは先日、ご相談を受けた2つの事例をご紹介したいと思います。
 

勝手に「売却予定地」にされていた!Aさん家の事例

先日、60代のAさんから、自身の伯父のことでご相談を受けました。聞けば、80代の伯父が所有する土地が、勝手に売却されそうになっていたといいます。
 

Aさんの伯父さんは、独身で一軒家に一人暮らしです。地主の家系で、自宅以外にも土地をたくさん持っていました。少し離れたところに住むAさんが久々に伯父のところへ訪ねたところ、伯父の所有する土地に、見慣れない看板が設置されているのを発見しました。

※画像はイメージです
※画像はイメージです

誰もが知っているような有名な不動産会社の名前付きで『売却予定地』と掲げられていたのです。不審に思ったAさんは、伯父に尋ねます。
 

Aさん「おじさん、あの土地売るの?」

叔父  「いいや、そんなつもりはない」
 

どういうことなのか、詳しく話を聞いていくと、その不動産会社の営業マンが足しげく伯父のもとへと通っていたことが分かりました。本人がよく分かっていないままに口頭で了承を得て、売却に向けた動きを進めていたことが判明したのです。
 

伯父の年齢に合わせ、50代女性の営業マンが担当となり、しばしば家を訪ねては一緒にお茶を飲んで仲良くなるなど、手口は巧妙でした。伯父はといえば「〇〇さんは、良い話相手だから、悪く言わないで」といった始末です。
 

とはいえ、伯父に売却の意思がないことはしっかり確認ができたので、Aさんはさっそく売却予定の看板を取り外し、手続きを停止して事なきを得たのでした。
 

元本割れ必至の投資信託を買わされていた!Bさん家の事例

また、別のBさん家の事例もあります。Bさんの母は、田舎の実家で一人暮らしです。
 

家の掃除のためにBさんが帰省して書類を整理していると、母が数年前に投資信託などを大手都市銀行で購入した記録が出てきました。次々に、数百万円単位の商品を買っているようです。
 

母が運用に積極的だったという記憶はなく、聞いてみると「毎月毎月、お金が入ってくる」ということで、銀行の窓口で勧められたとのこと。ただ、内容はよく分かっていないと言います。
 

預金と違いリスクのある商品なので、場合によっては解約したほうが良いのではないかとBさんが調べてみると、衝撃の事実が判明しました。その商品は、毎月分配金が支払われる形式の投資信託で、運用難が続いてすでに元本を大きく割り込んでいる状態だったのです。
 

こういった元本割れのリスクをきちんと説明されないままに、金融商品をなかば強引に契約させられていたというケースでした。
 

悪質な営業マンから家族の財産を守るにはどうすればいいの?

これらは加齢に応じて認知機能が衰えてきたり、初期の認知症を患っている高齢者を狙った、はたから見れば極めて悪質な事例です。ところが、本人の意思で契約や購入している以上、防ぎようがない場合もあります。
 

こういった事態を防ぐために、日ごろからコミュニケーションを密に取っておくことが大切なのは言うまでもありません。とはいえ、離れて暮らしているとなかなか難しい面もありますよね。
 

そんな場合に活用できる仕組みとしては、成年後見制度や、家族信託があります。
 

たとえばAさんの事例では、Aさんと伯父の間で信託契約を結び、土地の管理権限をAさんの元に移しました。こうすることで、仮に不動産会社が伯父の土地を売買しようとしても、管理を託されているAさんが止めることが可能になります。
 

特に一人暮らしの親や親族がいる方は、手遅れになる前に認知症対策としての任意後見本人に十分な判断能力があるうちに利用できる成年後見制度)や家族信託の利用を検討してみてはいかがでしょうか。