国際色豊かな出展がそろう「鉄道技術展」
鉄道関連の機材やシステムなどを集めた「鉄道技術展」は、2017年で5回目を迎え、11月29日から12月1日まで3日間の予定で、幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開幕した。国内の企業はもちろんのこと、ドイツ、フランス、オーストリア、中国など海外からの出展もあり、全部で525の企業や団体などが集結、会場内は国際色豊かに賑わっている。
出展企業に関連する人、技術者、専門家には興味深い展示ばかりであろうが、「専門的な技術には明るくないけれど、鉄道には若干なりとも興味ある人」に向けて、今回の展示内容の見どころや傾向を探ってみた。
バラエティに富んでいた東京メトロ
一般向けに分かりやすくバラエティに富んでいたのは、東京メトロのブースだった。地下鉄開業90周年を記念して、銀座線開業時の列車ダイヤ、建設時の関連施設の図面、当時の車両の模型などを展示していた。
ステージイベントでは、先の東京オリンピックが開催された1964年に開業した日比谷線の懐かしい写真、千代田線の初期の車両などをスクリーンに映し出したほか、女性司会者がリモコンでホームドアを開閉するデモンストレーションも行われた。このホームドアは、先日まで東西線九段下駅ホームにおいて、実証実験用に設置していた大きな扉の実物で、ドアの大きさが異なる車両にどのように対応させたかなど分かりやすく説明していた。
利用者に圧迫感を与えないホームドアも
ホームからの転落事故防止に有効な手段であるホームドアは、複数の企業がデモンストレーションを行っていた。すでに実績のあるナブテスコ株式会社は、やや背が高く壁面が透明で利用者に圧迫感を与えないホームドアを提案していた。国内はもとより、中国や韓国にかなりの納入実績があるので、ホームドアの脇にある列車発車案内の表示は、中国語のものを見せるなどして国際性をアピールしていた。
前回は、簡易型ホームドアの実演で注目を集めていた株式会社音楽館(社長=向谷実氏)は、JR九州への導入が決まって一段落したためもあり、今回は、実績ある列車シミュレータの新しいモデルを披露していた。それは、運転士と車掌の連携訓練が可能なシミュレータシステムで、JR東日本の乗務員が、会場の近くを走る京葉線の電車運行をモデルとして迫真のデモンストレーションを見せてくれた。運転障害やホームでの利用客と車両の接触事故などを想定したデモは、車掌の案内放送が利用者には身近なこともあって、大変興味あるものだった。
駅の発車案内掲示や行先案内も乗客には身近なシステムで、液晶やLEDなど最新のものの展示は興味深い。
寒冷地の列車向けの発熱シートや騒音防止の車輪も
列車の座席に関しては、三菱重工が、ゆりかもめ、埼玉のニューシャトルなどでお馴染の新交通システムのシートを展示していたほか、東レ株式会社が展示していた難燃ファブリック素材のシート、発熱シートが興味深い。寒冷地の列車で温かいシートに座れれば快適さは増すと思われるが、まだ実験段階で、車両への具体的な設置は未定とのことだ。
鉄道車両の足回りである台車や車輪は、ホームで列車を待っているだけでは見逃しがちな部分である。しかし、快適な車内を実現するためには欠かせないパーツだ。日本車輛製造株式会社のNSシリーズ台車は、乗り心地が良く国内外の特急列車に採用されていて、会場に展示している白い台車は、2018年春にデビュー予定の小田急の新型ロマンスカー70000系に使われるものなので注目を集めていた。また、新日鐡住金ブースに展示していた2つの車輪(防音車輪と一般車輪)は、見ているだけだと違いがわからないのだが、ハンマーでたたくと音が明らかに異なり、車輪に触れると違いが判明する。騒音防止の取り組みは、細かいところの工夫で成り立っていることがよく分かる一例だ。
ほかには、鉄道各社の新型車両のパネル展示が製造会社別になされ、路線の実態に合わせてバリエーションを持たせていることも見てとれる。3日間各種セミナーもあり、鉄道業界の現在のトレンドを肌で感じ取れる展示会なので、興味ある人は現地に足を運んでみると様々な収穫があるだろう。
第5回鉄道技術展2017: http://www.mtij.jp/
※サイトで事前登録をしてから出かけると、入場料2000円は無料になる