「男女の一線」という境界線

不倫を疑われた芸能人が「男女の一線」は超えていないとか何とかと弁明して話題になり、2017年の流行語大賞の候補になるのではないかとまで言われました。法律上、不倫は違法ですが、おそらく弁明している人は「男女の一線」を超えてないので違法ではないし、道徳的にも問題ないと言いたいのでしょう。
 

では、法律上違法と評価される「男女の一線」がどこなのか検討してみたいと思います。
 

裁判例にみる男女の一線とは

夫婦は相互に貞操義務を負っていますので、夫婦の一方がどちらでもこれに反した場合は、違法になります。具体的には、民法で夫婦の一方が「不貞行為」に及んだ場合、離婚事由となり、かつ相手に慰謝料を支払う義務が発生します。したがって「男女の一線」というのは「不貞行為があったかどうか」という一線だというと分かりやすいのではないでしょうか。
 

そして、不貞行為とは最高裁判例の定義によると、配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと、とされています。もちろん、男女の肉体関係があれば当然該当します。
 

もっとも、以下のような行為で違法と評価されている裁判例もあります。

  • 浮気相手と夫が、自宅のベッドで下着姿で抱き合ったり、愛撫した(夫が病気のため性行為できないという事情がありました) 
  • 妻が第三者の男性から精子の提供を受けて人工授精をした 
  • 浮気相手が夫に、「チュ」「今週は●●(夫の名前)忙しい?いつ一緒に居られる?」というメールを送信した
  • 浮気相手と妻が、(肉体関係があったとはいえないが)お互いに結婚することを希望して交際し、周囲の説得を聞かずに一緒に、夫に対して(浮気相手と妻とを)結婚させてほしいと懇願し続けた


これらの行為は肉体関係がありません(正確には、判決で肉体関係があったと認定されなかったということ)。しかし、裁判所は違法と判断しました。
 

ただし、上のメール送信の事例をみて、ただちに、メール送信=違法と考えるのは誤りです。状況によって違法にならない事案はあり得ますし、実際に違法にならなかった例もあります。違法となるかどうかは、配偶者との平穏な婚姻生活を破壊するような行為かどうかという基準があるのですが、ある行為がこれに当たるかどうかは個別の事案を検討する必要があるからです。
 

裁判での実際は……

ところで、不貞行為(肉体関係を結ぶ行為)の話に戻しますが、一般的に不貞行為は、密室で行われるものですから、目撃者の存在は期待出来ませんし、その他の証拠でも直接に不貞行為の存在を立証する手段は限られます。
 

したがって、裁判では、不貞行為があったと推認(推定)される事実を立証し、この事実により、不貞行為の有無について判断していくのが通常です。ただし、しばしば、不貞行為そのものを動画や写真にしている人がいます。これは、不貞行為の存在を直接立証できる例です。稀な例のように感じますが、裁判になる事例では、このような事例もそれなりに存在します。
 

「ホテルに入ったが何もしなかった」の言い訳は通用する?

では、どのように不貞行為を推認していくのでしょうか。言葉を換えるとどのような事実があれば不貞行為が推認されるのでしょうか。
 

これは結局、社会常識に即して考えるほかありません。例えば、独り暮らしの相手方の部屋を訪問し、ある程度の時間一緒にその部屋で2人きりで過ごせば不貞行為が推認される可能性が高いでしょう。他方で、短い時間であればその可能性は低いでしょうが、とはいえ、単なる上司と部下の関係なのに、風邪で休んでいる部下の自宅をわざわざ見舞うために自宅を短時間訪問したとなれば、その訪問時に不貞行為があったとは推認できないものの、その他の事実関係と相まって、不貞行為があることを推認する事実になるかもしれません。
 

ホテルに

このように、事実関係を総合的に見て不貞行為の有無を考えていくことになります。したがって、この事実があればアウトだが、これならセーフなどとは一般化していえるものではありません。
 

よくある弁解として、一緒にホテルの部屋に入って2人でそれなりの時間(例えば、朝までとか)を一緒に過ごしたけれども、一線を超えていません、一緒に勉強してました、仕事をしてましたという弁解はしばしば聞くところです。
 

結局これも常識に照らして考えるほかありません。常識として、仲の良い男女が2人きりでホテルにわざわざ籠もって行うことは何かを考えるとき、不貞行為があると推認されるのは、かなり常識的判断ではないかと思います。