恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第7回

伊豆急行の新しい観光列車「The Royal Express」が21日デビュー

伊豆急の「The Royal Express」 はどんな列車?

関係者のスイッチオンで車両登場
関係者のスイッチオンで車両登場

7月21日よりJRの横浜~伊豆急下田間で運転を開始する観光列車The Royal Express。そのお披露目セレモニーが、運転開始に先立つ7月15日に伊豆高原駅隣接の車両基地で行われ、車内も報道陣に公開された。料金設定からも、その豪華さが窺われ、どんな様子なのか注目の的なので、レポートしてみたい。
 

水戸岡鋭治デザインらしいクラシカルな雰囲気

車両の外観
車両の外観

The Royal Expressは、伊豆急行が東急グループの一員でもあることから、東急電鉄が主体となって企画された。車体は、全くの新車ではなく、「アルファ・リゾート21」という従来からある車両をリニューアルしたもの。車両デザインは、JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」や「指宿のたまて箱」「A列車で行こう」などの観光列車などで実績のある水戸岡鋭治氏が担当した。
 

全体的な印象としては、斬新さというより、従来の水戸岡デザイン車両の集大成とでもいうべき、定評あるデザインを手際よくまとめた感がある。木のぬくもりを大切にしたインテリア、数種類の凝った模様をちりばめたシート、クラシカルな雰囲気など、もはや水戸岡デザイン車の定番となったようであり、熱心な鉄道ファンにはマンネリ化に映るようだ。ただし、The Royal Expressオリジナルのものもあり、表面的な外観や内装だけ見ていると、そうした特色を見失しかねない。
 

3号車は結婚式などイベントに。生演奏も楽しめる

マルチカーでは各種イベントが開催予定
マルチカーでは各種イベントが開催予定

特徴の第一は、3号車のマルチカーであり、水戸岡氏の話では、やっと実現できた車両だという。この車内では、結婚式やパーティー、展覧会などイベント会場としての利用が提案されている。内覧会では、テーブルと椅子が並べられていたけれど、これは着脱可能なものであり、何も設置しない広々としたスペースにもなりうる。列車を貸し切った場合、室内楽や声楽コンサートなど思い切ったアイデアも出そうで、興味深い。

ピアノ演奏も車内での楽しみのひとつ
ピアノ演奏も車内での楽しみのひとつ

音楽に満ちた車内というのもThe Royal Expressの特色である。ヴァイオリニストで演出家でもある大迫淳英氏が創作したThe Royal Expressのテーマ曲を中心に、車内には2ヶ所にピアノを設置し生演奏を楽しめるようにしている。ピアノは、「ななつ星」「四季島」にも設置されているけれど、ひとつの編成のうち、2つの車両に合計2台もあるのはThe Royal Expressだけ。それだけ車内での生演奏をウリにしているとも言える。
 

大迫淳英さんのバイオリン演奏も
大迫淳英さんのバイオリン演奏も

内覧会では、ピアノだけではなく、バイオリンとピアノのデュエットもあり、生演奏にもヴァリエーションがある。3号車での演奏会も企画できそうで、音楽に関しては華やかなイベントも期待できる。また、音楽以外でも、クルーによるおもてなしも手厚そうで、こうしたソフト面でのサービスに力を入れている列車でもある。
 

展望スペースをバッサリ失くした理由は?

8号車の前面展望室は書斎に変身
8号車の前面展望室は書斎に変身

観光列車というと、展望を重視して、窓を向いた座席や前面展望をアピールするものだが、The Royal Expressでは、意外にも展望を重視してはいない。もちろん、窓を向いた座席がないわけではないが、改装前の「アルファ・リゾート21」の特徴であった窓向きのシートや雛段の展望スペースをバッサリ失くしているほどだ。
 

伊豆急というと伊豆半島東海岸の車窓を思い浮かべるかもしれないけれど、実際に乗ってみれば分かるであろうが、海岸線に沿って走る区間は短く、意外にも山中を走る区間が多い。車窓に過度の期待を持たせないようにとの配慮か、あるいは、展望をウリにしている他のリゾート21や昨年デビューした観光列車「伊豆クレイル」との差別化を念頭に置いているのであろうか?
 

アテンダントさんのおもてなしにより優雅な旅ができる
アテンダントさんのおもてなしにより優雅な旅ができる

車内での食事と音楽をはじめとしたおもてなしを重視することによって、あまたある観光列車の中で埋没してしまうことを避けたとも言える。インテリアは従来から定評あるもので手堅くまとめているので、それだけに気を取られて没個性と考えてしまうと、この列車の魅力がなかなか分からないかもしれない。
 

もうひとつ、豪華観光列車では認められていない子供を伴った乗車、ファミリーでの利用を1、2号車に限って認めていることも幅広い層の乗車を受け入れる寛容さと歓迎する向きもあり、子供思いの水戸岡さんらしい方針と言えるだろう。
 

横浜から近場の伊豆へ破格の料金設定。果たして評価は?

関係者とクルーの記念撮影
関係者とクルーの記念撮影

さて、横浜から、むしろ近場とも言える伊豆への観光列車として破格の料金設定は、どのような評価を受けるのか。特急「スーパービュー踊り子」のグリーン車利用で横浜から伊豆急下田まで乗車すると、6670円。それが、The Royal Expressの食事付き片道プランの最低ランクで25000円、宿泊付き1泊2日のクルーズプランなら13万5000円~20万円とはかなりの高額である。予約状況は順調というが、当初の話題性が去った後まで持続することを望んでやまない。

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