半年先まで予約埋まる…TWILIGHT EXPRESS瑞風、運行開始
2017年6月17日、JR西日本の豪華列車TWILIGHT EXPRESS瑞風が運行を開始した。これで、JR九州の「ななつ星in九州」、JR東日本の「トランスイート四季島」に続いて、JRの3つの豪華列車が揃うことになった。いずれも極めて高額な料金設定にもかかわらず、半年以上先まで予約で埋まり、しかもかなりの倍率の抽選に当たらなければ乗れないという狭き門である。
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「ななつ星」や「四季島」とは違う「瑞風」の特徴
最後発となった「瑞風」は、「ななつ星」「四季島」と比べてみると、特徴的な点がいくつかある。
■移動手段としての役割をも持たせた
まず、運行ルートについては、起点駅と終着駅が異なる通常の列車だという点だ。これは、「ななつ星」が3泊4日コースにせよ、1泊2日コースにせよ、博多駅を出発して博多駅に戻ってくるという周遊型、「四季島」についても、上野駅発で上野駅に戻ってくるという周遊型に対する本質的な相違である。
「瑞風」も2泊3日コースこそ、京都駅、大阪駅を出発して京都駅、新大阪駅に戻ってくるという周遊タイプなのに対し、1泊2日コースは、京都駅、大阪駅を出発して下関着、あるいは、その逆ルート(下関発、大阪駅、京都駅着)という起点と終点のある片道ルートであり、山陽コース、山陰コースが設定されているので、都合4つのバリエーションが用意されている。ある意味、列車本来の移動手段としての役割をも持たせたという点が、独自のセールスポントであろう。
■一人旅愛好者の需要に応えた
もうひとつは、少なからずいる一人旅愛好者の需要に応えて、1人用個室を取り入れた点である。「ななつ星」「四季島」は、原則2人個室であり、1人で利用する場合は、どうしても割高になってしまう。「四季島」の場合、1人利用にすると、どんなタイプでも、100万円を遥かに超える料金設定である。
それに比べると、「瑞風」のロイヤルシングルは1泊2日コースで33万円となっていて、これはかなり良心的な価格ではないだろうか。さらに、ロイヤルシングルの2段ベッドを利用して2人で使うと、1人あたり25万円であるから、これくらいの価格なら、「安い」とは言えないにしても、ちょっと贅沢して乗ってみたいと思う「普通の人」をもターゲットとした「適正」価格と言える。その分、競争率は驚異的に跳ね上がる恐れはありそうだ。
当分三つどもえの競争。しかし他エリアは「宝の山」
「瑞風」運行開始により、JRグループの豪華列車は出揃ったことになる。JR東海、JR四国、JR北海道の各社には、独自の豪華列車をつくる計画はなさそうだから、当分三つどもえの競争となるのであろう。
JR北海道に関しては、「四季島」が3泊4日コースのルートで青函トンネルをくぐって北海道に乗り入れるので、豪華列車の走行エリアということになるのだが、本来、こうしたクルーズ型列車がもっと広範囲に走ってほしい地域である。会社の状況が最悪に近いので不可能と言う見方もあろうが、旅行会社などが列車を所有して、JR北海道は運行のみを担当するというやりかたも考えて、観光に特化した列車を増やして活性化を図ってもらいたいものだ。
JR四国に関しては、JR西日本からのイベント列車が、時折、瀬戸大橋を渡って乗り入れている実績があるのだから、「瑞風」の乗り入れも考えていいのではないだろうか。最近、JR四国は「四国まんなか千年ものがたり」を走らせるなど、観光列車の運行にも積極的になってきている。狭い島内では夜行列車の設定は難しいかもしれないので、京阪神からの直通列車を望みたいところだ。
関連リンク:観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の優雅な旅
JR東海は、新幹線とリニアに専念しているけれど、高山、伊勢志摩、南紀といった一流の観光地が沿線にあるのだから、ぜひ柔軟に対応してほしいものだ。エリア的には西日本に隣接しているのだから、四国同様「瑞風」の乗り入れを要望したい。
「瑞風」のデビューはJR西の新たな歴史の幕開けとなるか?
あの忌まわしい福知山線の事故以来、自粛ムードがあったJR西日本は、北陸新幹線延伸以来、ようやく吹っ切れて、観光面でも積極的に動きはじめた。「SLやまぐち号」の客車もレトロ風の車両を新造して多くの人を驚かせている。「瑞風」の次には、庶民でも楽しめる長距離観光列車も構想しているとか。「瑞風」のデビューは、JR西日本にとって、新たな歴史の幕開けとなることを期待して、その成功を祈りたいと思う。
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