進行は緩和も2015年から50年間で人口は約3割減…
国立社会保障・人口問題研究所は10日、2065年の人口は8808万人とする「日本の将来推計人口」を公表した。2015年から50年間で人口は約3割減となる。
平成27年国勢調査の確定数が公表されたことを受けてまとめられた。
推計の前提となる合計特殊出生率(1人が生涯に産む子どもの推定人数)は、近年の30~40歳代の出生率実績上昇等を受け、2065年に1.44と、2012年公表の前回推計から上方修正された。また、平均寿命は、2015年の男性80.75年、女性86.98年から、2065年に男性84.95年、女性91.35年に伸長するという。
これを受け、総人口が1億人を下回る時期は2053年(前回推計:2048年)、 老年人口割合が38.4%(前回推計:40.4%)と、人口減少の速度や高齢化の進行度合いは緩和している。
こうした将来予測を受けて、個人の家計に与える影響を考え、今から計画的に将来に備えていきたいところだが、一体何から取り組めば良いのだろうか。年金ジャーナリストの山崎俊輔氏がAll Aboutの『人口減少・非婚社会に個人のお金はどう備えるか』で、世代別の老後への備え方と心構えについて考察している。
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社会の変化が大きくても「個人の財布」は守れる
山崎氏は、社会の変化がいかに大きくても個々人の「財布」レベルについては、個々人で守っていくことができると述べている。
「社会の変化について知ることができれば、自分の生活をその変化に対応できるように見直すこともできます。こうした統計は個人レベルの家計にも大いに参考になるはずです。ニュースを見て『大変だなあ』と言うだけでなく、しっかり備える意識を持ってみてください」
それでは、個々人の「財布」を個々人で守っていくために、どのような心構えが必要なのだろうか。世代別の分析は次の通りだ。
40~50歳代は備える「最後のチャンス」
40~50歳代は、まだ働いているが、現役世代の真ん中より上にいる世代。山崎氏によると、この世代は年金受給開始年齢が65歳からさらに切り上がるかどうかが不透明な状態という。
「50歳代はセーフだと思われますが、40歳代は67歳か68歳に引き上げられることは覚悟しておいたほうがいいでしょう。また、現役世代の減少が始まったばかりであり、高齢者雇用の確保が約束できないのがこの世代の難しさです。こうした特徴を意識して、老後の備えを検討していく必要があります」(山崎氏)
人口減、高齢者増の方向へ変化している中で、社会の変化に家計が備えるチャンスは、現役世代にしか残されていないということを留意した方がいいと述べ、下記のようなポイントを挙げている。
- リタイアして年金生活を迎えると「もらえる年金」「今ある財産」でやりくりするしかない
- リタイア後、現役以上に稼ぐ選択肢はない(運用で増やすとしても過度な期待はできない)
- 年金減額や医療等の自己負担増、消費税増等の影響を受ける(つまり、手取り減少要因だけは老後にやってくる)
こうしたポイントを受け、40~50歳代はどのように備えればいいのだろうか。山崎氏は、現役世代として「今稼いでいるお金」の一部を残し、将来の余裕を増やす最後のチャンスを迎えていると指摘。目の前の生活にもお金がかかるが、ここを乗り越えられるかどうかで老後の豊かさも大きく変化するとも述べ、個人としての備えを意識するよう勧めている。
20~30歳代の世代は「まだ残された時間がある」
20~30歳代の世代は、「50年後の世界」を年金生活に入った頃、見届けることになる。平均寿命を考えれば、ほとんどの人が50年後まで生きていると想定できる。
「今働いている若い世代としては、こうした老後のために備えていく意識を今より高めていく必要があります。年金給付水準が今より高まることはありえませんし、医療や介護の自己負担分は今より増えることが確実です。税金も今よりかかることでしょう。さらに、老後の期間は今よりも延びます。25年から30年を意識する時代になるはずです」
老後に備えるためのポイントは以下が挙げられている。
- 60歳代を働けるだけ働き続けることは現実的選択肢のひとつ
- 経済的安定を老後にもたらすのは資産の確保。目の前の家計のやりくりだけに目を取られず、先の先に備えていく意識が必要
悲観的に感じられるが、山崎氏は「まだ残された時間がたくさんある」と述べ、これから準備を始めても、20年以上余裕があるのがこの世代の大きなメリットとしている。
「もし、老後のための貯金枠がない、という人は今からでも年収の一部を備えて積み立て、運用することを検討してみてください。老後のことだから後で、と考えるとおそらく最後まで貯められずに60歳を迎えることになるからです」
また、年金受給開始年齢は67~70歳の可能性がある。高齢者雇用については現役世代の減少に伴い確保されると考えられるが、賃金水準は新卒程度とみられ、60歳代は貯められる期間ではないと心得て、今から貯めていく必要があるとしている。
まだ学生の場合は備えるだけでなく「どう稼ぐか」
これから社会人になる学生はどのように考えればよいか。
山崎氏によると、年金受給開始年齢が5年程度引き上げられるのは間違いないとしている。また、現役世代の人数が大きく減少しており、今より65歳の人も元気な世の中になっているはずで、65歳以降も十分働けると考えられ、年金をもらうまでの間、無収入になる心配はしなくてもいいと述べている。
「若いうちに考えておきたいのは、人口減少社会においてどう自分の仕事を確立していくかです。国内の顧客が減る分、仕事に必要な社員の人数も減っていくことになります。自分の能力を高めて、しっかり稼いでいくことと、きちんと将来にお金を残すやりくりを身につけていくことが重要です」
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