波紋広がるJASRACの「音楽教室に著作権料」…文化祭で演奏したら?

パーマ大佐が「森のくまさん」の替え歌をCD発売しようとして訳詞者から慰謝料請求されたり、JASRACが音楽教室での楽曲演奏に著作権料を徴収する方針を固めたりと「著作権」に注目が集まる。自宅や学校で演奏したらどうなる?弁護士が著作権の基礎を解説した。

パーマ大佐の「森のくまさん替え歌問題」は決着がついたが…

最近、お笑い芸人のパーマ大佐が「森のくまさん」の替え歌をCD発売しようとしたところ、レコード会社とともに「森のくまさん」の訳詞者から慰謝料等の請求を受け、結果、和解になったという報道がされました。また、JASRACが音楽教室での楽曲の演奏に著作権料を徴収する方針を固めたという報道もありました。


そこで、著作権制度について簡単に解説したいと思います。
 

著作権を認めるには「著作物」が必要

著作権が認められるためには、著作物がないといけません。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽のカテゴリーに入るものといわれています。


具体的には言語(小説や詩など)、音楽、舞踊、演劇、映画など多岐にわたります。


森のくまさんはアメリカの民謡だったようです。この訳詞も著作物なのです。また、音楽教室の例でも、教室で著作物である音楽(楽曲)を演奏するわけですので、「森のくまさん」同様著作権の問題が生じるということになります。
 

ピアノ曲「4分33秒」も、子どものお絵かきも…

もっとも、著作物といっても本当に多岐にわたり、例えば「4分33秒」というピアノを弾かないピアノ曲があります。演奏者がピアノの前に座り続け、その後立ち去ってしまうという内容の作品です。全く演奏しませんのでこれが著作物?とも思われますが、これとて、思想又は感情を創作的に表現したものといえますから著作物なのです。よく言われる例は、子どもがお絵かきで描いた絵も著作物だというやつです。これも、描いた子どもの思想又は感情を創作的に表現したものですから立派な著作物です。
 

著作権は様々な権利の集合体

ピアノ

著作権と一口にいいますが、様々な権利の集合体といわれています。例えば、複製権、演奏権、上映権、公衆送信権等様々なものがあり、全て著作権です(他にも著作者人格権という財産的意味合いとは異なる著作権もあります。)。要するに、権利者に無断でコピー(複製)、演奏、上映、広く公衆にたいして送信することのいずれも出来ません、これらのことをするためには著作権の了解が必要ですよということです。
 

自宅で歌うのはOK?文化祭で演奏したら?

そうすると、自宅で大好きな歌手の楽曲をピアノで弾いたり、歌ったりしてはいけないの?というと、そうではありません。これは著作権法上の演奏権侵害にあたるかという問題で、これにあたるのであれば、無断で行うことはできません。演奏権の対象となる行為は、不特定多数の人、又は特定かつ多数の人のいずれかに見せたり聞かせたりする目的で行われる演奏行為といわれています。自宅で演奏するのはこれに当たりませんので、問題ありません。


では、学校の文化祭で生徒の前で発表したらダメなの?となりそうですが、著作権法では演奏権の対象となる行為でも、営利目的がなく、料金を徴収しなければOKとなっているのです。
 

音楽教室は「演奏権侵害」か?裁判所の判断に委ねる

音楽教室での演奏の話に戻ってみると、JASRACとしては、教室でピアノを弾くことが不特定多数の人又は特定かつ多数の人に聞かせる目的で行う演奏行為だ、と解釈したからこそ著作権料を請求する方針としたのでしょう。確かに音楽教室ですから、色々な受講生がやってくる環境で演奏すれば、少なくとも特定かつ多数の人に聞かせているといえそうです。


これに対しては、音楽教室側が団体を結成し、反対運動をしていくそうです。報道では教育目的の演奏である以上演奏権侵害にあたらないという主張を展開していくとのこと。


演奏権侵害かどうかは著作権法の解釈問題です。JARACが著作権料を徴収すると言ってもこれが正しい著作権法の解釈とは限りません。最終的には裁判所で問題の解決が図られるかもしれません。

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