この併願校選びのアドバイスは私も気を遣います。第1志望の志望度が高い家庭ほど、併願校への提案を受け入れてもらえないことがあります。
例えば、世帯年収3000万円を超えるいわゆる“パワーカップル”世帯。第1志望が慶應義塾中等部、他に立教女学院中学校や共立女子中学校の受験を予定していましたが、「念のために」と女子聖学院中学校のアドバンスクラスを勧めたところ、「どうしてこんなに頑張っているのに偏差値40台の学校なんて」と強い反発を受けたことがあります。
こうした反応は実は珍しくありません。しかし、その生徒さんにとっては女子聖学院は合いそうな学校だったから勧めたのです。偏差値が50未満の学校で、経営を維持しているのは、それだけの価値があるからです。
偏差値だけでは測れない「お値段以上の教育」
あるお母さまは言います。「私は難関校で成績不振で苦労しました。学校は私みたいな落ちこぼれは相手にしなくって。ところが娘が通う中堅校は本当に手厚いです。成績が伸び悩むうちの娘に親身になって、本人の希望に合う進学先の大学を探してくれました」
ブランド力や大学合格実績などの“目に見える指標”だけでなく、「お値段以上の教育」を提供している学校が確実に存在するのです。
現在は受験校数の平均が6校程度。そのうち1校は「通えない場所にあるけれど1月のお試し受験」で受けるとして、実際に通う可能性があるのは5校。この5校全てを「合格したら通いたい学校」で固めることが理想です。なぜなら、せっかく入学した私立中高一貫校でも不登校は起こり得るからです。
仮にその学校に通うことになった時、「行きたくない」と感じることがないよう、最初から“本人と保護者の両方が納得して選んだ学校”を受験校として並べたいところです。
大人とは違う、子どもなりの「納得の理由」
まずは、子どもが「行きたい」と思えるようにすることを見ていきましょう。そのためには少なくとも6年生の秋には説明会や見学会に足を運ぶのが望ましいです。特に偏差値40台の中堅校は、直前期まで説明会を実施していることも多いので、親子で積極的に参加しておきましょう。
あるご家庭の例では、筆者が偏差値49前後の学校を勧め、親子で文化祭に参加した保護者は「先生が丁寧でいい」と好印象を抱いたものの、娘さんは「生徒たちが元気過ぎる。私はああいうノリについていけない」と拒否しました。特に女子生徒はこうした“ディテール”を重視する傾向があります。
子どもが気にするポイントは大人と全く異なります。昔からよく聞くのは、「プールがある学校がいい」「いや、ない学校がいい」。
ある塾で偏差値トップの生徒は、進学先の桜蔭中学校を選んだ理由をこう答えました。
「水泳が好きだからプールがある学校に行きたかった。でも男子の前で水着になるのが嫌だから女子校がいいと思った」
どこの学校にでも進学できる学力がある彼女がそう言ったのです。どんなに学力が高くても小学生の考える「進学理由」はこのように大人から見るとたわいもないものです。
「映画を見て伝統芸能に興味を持ち、長唄部があるから三輪田を受けたい」「十文字のスラックスの制服がかわいいから受験する」「バレー部が強いからサレジオに行く」「小川が流れているのが好きだから武蔵を第1志望にする」「器楽部の演奏がすごかったから横浜雙葉を受験する」
——こうした動機も立派な“納得の理由”になるのです。



