箱根駅伝、視聴率30パーセントめぐる「巨額マネー」はどこへ? 大学側が抱く収益構造への不信感

正月の風物詩、箱根駅伝のシーズンが巡ってきました。毎年、30パーセント近いテレビ視聴率を記録する「国民的な人気コンテンツ」。これに乗じて、ビジネスも拡大する一方です。大学スポーツは今後、どう変わっていくのでしょうか。(画像出典:PIXTA)

収益構造の不透明さに不満も

箱根駅伝は、関東学生陸上競技連盟(関東学連)が主催し、読売新聞社が共催しています。特別後援はレースを放送する日本テレビ放送網で、後援は読売系列の報知新聞社。大会の協賛企業は、メインスポンサーである「特別協賛」にサッポロホールディングス、「協賛」としてミズノ、トヨタ自動車、セコム、敷島製パン、NTTドコモの5社が名を連ねています。
 
今大会からは「協力」スポンサーというカテゴリが新設され、前田道路、共立メンテナンス、サンスター、きぬた歯科の4社も加わりました。

このように多くの企業が関わっている大会なのですが、ビジネスの拡大に伴って、競技の現場からは収益構造の不透明さに不満も漏れています。

青山学院大学の原晋監督は2023年出版の自著『最前線からの箱根駅伝論』(ビジネス社)で「お正月にあれだけの視聴率を取る箱根駅伝ですが、いったいどれくらいの収益をもたらしているのでしょうか」と疑問を投げ掛けています。

原監督は、日本陸上競技連盟(日本陸連)や関東学連が収益を上げる構造になっておらず、参加する各大学への分配金が300万円に過ぎないことを明らかにしています。  
最前線からの箱根駅伝論
最前線からの箱根駅伝論
「強化費が高いか否かという問題ではなく、箱根駅伝に見合っているお金はいくら程度で、その利益をどこが吸い上げているのかをまずあきらかにすべきでしょう」と述べている点は、重要な指摘です。
 
主催者である関東学連は「公益法人」ではない一般社団法人ですが、実質的には学生スポーツの振興を推進する公益性を有しています。数十億円規模ともみられる大会の収支は一般には公開されておらず、透明性を図る努力が求められるはずです。

アメリカでは学生アスリートに報酬も

大学スポーツのビジネス化によって、アメリカでは複数の訴訟が起きています。

人気のアメリカンフットボールやバスケットボールでは、有力校が巨額の放映権料収入を得ているにもかかわらず、選手に分配されていないと学生から不満の声が上がっていました。中には労働組合に加盟する男子バスケットボールのチームもあったほどです。

このため、全米大学体育協会(NCAA)は2024年、大学側が学生に報酬を支払うことを容認しました。NCAAは1906年の創設以来、長くアマチュアリズムを貫いてきました。学生の本分は勉強であり、プロのようにスポーツで報酬を得ることは認めていなかったのです。

しかし、肖像権などの商業利用への対価を求める学生アスリートの権利が尊重され、方針の転換を余儀なくされました。
 
アマチュアリズムの崩壊がアメリカの大学スポーツをどう変えるのかはまだ分かりません。ただ、日本にとってもこの現象は「対岸の火事」とはいえないのです。箱根駅伝は屈指の商業的価値を生むビッグコンテンツです。収益をどう還元していくか、ビジネス規模が拡大するにつれ、その公正さも問われていくでしょう。
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この記事の執筆者:滝口隆司
社会的、文化的視点からスポーツを捉えるスポーツジャーナリスト。毎日新聞では運動部の記者として4度の五輪取材を経験。論説委員としてスポーツ関連の社説執筆を担当し、2025年に独立。著書に『情報爆発時代のスポーツメディア―報道の歴史から解く未来像』『スポーツ報道論 新聞記者が問うメディアの視点』(ともに創文企画)。立教大学では兼任講師として「スポーツとメディア」の講義を担当している。
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