トラブルから遠ざけた結果の「暴力」急増。「傷つかない」社会が子どもから奪った“仲直り”の作法

小学生の校内暴力が10年で10倍に。『傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害』は、「もしわが子が加害者になったら」という視点で現代の危機を描く。スマホの影響や言葉の崩壊など、親が知るべき衝撃の実態をリポートしよう。(画像出典:PIXTA)

「キショ」「クサ」……スマホの影響が大きいのは事実

なぜ平気で「キショ」「クサ」と言うのか
なぜ子どもたちは平気で「キショ」「クサ」と言うようになったのか(撮影:宮本信義)
短文でしかコミュニケ―ションが取れず、気持ちのグラデーションを表現しきれないのは子どもに限った話ではなく、SNS上の大人同士のやりとりにも散見される。ゆえに社会構造が抱える問題が、子どもにも影響しているのではないだろうか。

「それだけの責任とは言い切れませんが、スマホやタブレットの影響が大きいのは事実です。だって、膨大な情報が年齢に関係なく入ってくるわけですよね。

例えばポルノだったら、30~40年前はそれこそ河原に落ちているエロ本を拾ってくるとか、年の離れたお兄さんが所有するアダルトビデオを盗み見ないと女性の裸を見る機会はなかった。

写真だってカメラ屋に現像に出さないとならないしお金もかかるから、めったなものは撮れなかった。リストカットだって、周囲に実行している人がいない限り、知ることもないですよね。

本来、大人や環境が遮断したり逆に教えてくれていたものに対して、ブロックする術を持たず、周囲に物事を客観的に見られる大人もいない。そんな子たちが影響を受けてしまうのは、ある意味当たり前の話です。

先ほどの『キショ』『クサ』ではないですけれど、言葉だって同じです。そういう言葉が無条件に次々と視界や耳に入ってくれば、使っていい言葉なんだと思ってしまう。それが無意識のうちに人を傷つける。

しかし、そういった情報を子どもたちに流しているのは大人たちで、それが時にビジネスとして成立している。そんな状況で生きていかなくてはならない今の子どもたちは、大変だろうと思います」

「ある日突然、自分の子どもが加害者になってしまった」ということを防ぐには何が必要か。

石井さんは、大人が子どもの周りで起きているリアルを知ること、子どもがトラブルを起こすメカニズムを把握すること、トラブルを起こす子どもに必要な対応を取ることが不可欠だと説明する。

その上でこう語る。

「できるだけコミュニケーションを取って人の痛みを聞くとか、自分がつながるものを大切にするとか、あるいは自分の言葉をもって問題を解決していくということが、いじめや暴力から身を守るための防御策になると同時に、人間性を育てていくことにつながります。

言葉を丁寧にすればいいとか小手先の方法ではなく、人と付き合って互いに傷つき合い、仲違いしたら一生懸命謝って、もう一度仲良くなる。その繰り返しの中でしか人間関係は築けない。

そのためには何が必要かのヒントを、『傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害』に書いています。あふれる情報にパニックになって、あっちもやらなきゃこっちもやらなきゃと苦しんでいる大人に手に取ってもらえたらうれしいです」
傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害
傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害
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石井光太 プロフィール
ノンフィクション作家・石井光太さん
ノンフィクション作家の石井光太さん(撮影:宮本信義)
1977年東京都生まれ。教育現場をはじめ、国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなうノンフィクション作家。著書に『物乞う仏陀』『本当の貧困の話をしよう』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(いずれも文藝春秋)、『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(いずれも新潮社)、『教育虐待 ─子供を壊す「教育熱心」な親たち』(ハヤカワ新書)などがある。

この記事の執筆者:朴 順梨
フリーライター。早稲田大学卒業後、テレビ番組制作会社、雑誌編集者を経てフリーランスに。おもな著書に『離島の本屋--22の島で「本屋」の灯りをともす人たち』など。共著に『奥様は愛国』(河出文庫)など。現在、朝日新聞社サイト「好書好日」にて「本屋は生きている」を連載中。
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