3. 「すっぱい!」と感じることが交感神経を刺激する「レモン」
グレープフルーツ・ダイエットが話題になったことがあります。そのグレープフルーツ以上におすすめしたいのがレモンです。レモンには交感神経を刺激し、その働きを高める効果があります。私たちの研究チームがヒトを使って実験したところ、ほかのフルーツよりも圧倒的に高いレベルで交感神経に効くことが判明しました。
レモンをかじったときに「すっぱい!」と感じますね。そのとき、カレーやキムチと同様に、知覚が強く刺激され、その情報が知覚神経を介して、大脳の交感神経の中枢に刺激を与え、活性化させるのです。
その昔、私が体操選手をしていた頃、試合会場へ入ると、よくレモンの香りがしたものです。選手たちが持っていたレモンの砂糖漬けの香りでした。運動をするには糖がたくさん必要なので、「砂糖漬け」だったのです。そして、レモンには戦闘モードである交感神経を高める効果があることを、選手たちは経験から知っていたのでしょう。
レモンの果汁だけではもったいないので、搾らず、スライスなどにして果肉まで食べるようにしましょう。
4. 糖尿病予防にもなる? 食後の「コーヒー」
カフェインは自律神経の機能を高めます。それも、漢方と同じで「中庸(ちゅうよう)」にもっていくのです。つまり、交感神経であれ、副交感神経であれ、亢進(こうしん)しすぎているときには鎮める方向に、逆に、働きが低下しているときには、それを引き上げる方向に働きます。こうして自律神経全体の機能を整えて、アップさせるのがコーヒーの特徴。このことは、私たちの実験で証明されていますし、論文にもなっています。痩せるために自律神経を鍛えたいなら、1日3回の食事のあとに、必ずコーヒーを飲みましょう。砂糖を入れると、インスリンが先に分泌されて、体脂肪が燃焼しづらくなり、ミルクはカロリーが高いので、痩せたい人は控えてくださいね。
また、コーヒーに関しては、興味深い研究結果があるのでこちらで紹介しておきましょう。
糖尿病でない男女約12万人を長期間追跡し、コーヒーや紅茶、カフェインを含む食品の摂取状況を詳しく調べました。その結果、調査期間中に男性1333人、女性4085人が糖尿病を発症しました。ところが、年齢や肥満などの要因を考慮しても「コーヒーを多く飲む人ほど、糖尿病になりにくい」という傾向がはっきりわかったのです。コーヒーをまったく飲まない人をリスク1とすると、1日1〜3杯で0.98、4〜5杯で0.7、6杯以上では0.46と、発症率が大きく下がりました。
コーヒーに含まれる成分が、糖や脂肪の代謝を助けるAMPキナーゼという酵素を活性化し、糖尿病予防に役立つ可能性があると考えられています。脂肪の代謝も助けるのですから、コーヒーはダイエット向きの飲み物といえますね。
なお、カフェインの過剰摂取が問題とされることがありますが、1日に4〜5杯程度までなら、心配はいりません。
5. 食欲増進ホルモンの分泌を抑える「炭酸水」
手軽に取り入れられて、自律神経の活性化に役立つのが炭酸水です。ソーダ、コーラなどの炭酸飲料ではなく、水にガスが入った「炭酸水」を飲みましょう。独特のシュワッとした刺激が交感神経を刺激し、活性化します。また、水を多めに飲むと、胃が水でふくれるぶん、早くお腹がいっぱいになります。さらに、胃液が水で薄まって消化吸収が抑えられるので、そのぶん摂取カロリーが減り、太りにくくなるのです。
炭酸水にはほかにもいいところがあります。炭酸水のシュワッという刺激は、胃から出ている食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌を抑えるという、うれしい効果も発揮するのです。そのため、食欲がさらに抑制されます。炭酸水を常備しておいて、水のかわりに飲むとよいでしょう。 森谷敏夫プロフィール
京都大学名誉教授、株式会社おせっかい倶楽部代表取締役。
南カリフォルニア大学大学院博士課程修了。テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、米国モンタナ大学生命科学部客員教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て、京都大学名誉教授、中京大学客員教授に。専門は応用生理学とスポーツ医学で生活習慣病における運動の重要性を説く。『おサボリ筋トレ』(毎日新聞出版)など著書多数。



