強豪校を脅かす「通信制高校」野球部。甲子園の勢力図は塗り替わるのか?

夏の甲子園に初出場する通信制高校・未来富山。近年、野球に集中できる環境で力をつける通信制高校が増えています。高校野球の勢力図は、今後変わっていくのでしょうか。(画像出典:PIXTA)

夏の甲子園イメージ写真
通信制高校も出場する今夏の甲子園。高校野球の在り方も変わりつつある(画像出典:PIXTA)
熱戦が始まった夏の全国高校野球選手権。出場49代表の中に、他校とは異なるシステムで強化してきたチームがあります。富山県代表として甲子園に初出場する通信制の未来富山です。近年、通信課程を持つ高校が力をつけています。高校野球の風景は今後、変わるのでしょうか?

全校生徒24人のうち23人が野球部員

未来富山は、愛媛県松山市に本校のある広域通信制「未来高等学校」の富山中央学習センターとして2018年に開校し、創部8年目にして甲子園への切符を手にしました。

全校生徒24人中、23人が「アスリートコース」に在籍する野球部員。富山県内の出身者は1人だけですが、県外から集まった生徒たちも加えた部員全員が富山県魚津市の寮で共同生活を送っています。

平日の午前中はプリント学習に取り組み、午後は地元の球場を借りて練習に励んでいます。専用の室内練習場やトレーニングジムもあり、豊富な練習量でレベルアップを図ってきました。
 
エースの江藤蓮投手は、長野県の硬式野球チーム「千曲ボーイズ」出身。18歳以下(U-18)日本代表候補にも選ばれ、今大会屈指の左腕として注目されています。

他にも関東地区を中心に中学時代からボーイズリーグやリトルシニアなどで硬式野球の経験を積んだ選手が、甲子園出場の夢を求めて未来富山に集まっているのです。

学校の公式Webサイトでは、「高校生の時期は非常に重要な時期です。世界で活躍するトップアスリートの多くが通信制高校を卒業していることからも通信制高校に『夢を追いかけるために』通う方が多いことが分かります。(略)将来のために自分らしく学ぶことができる本校で一緒に夢を追いましょう」とPRしています。個性を伸ばす教育が重視される時代に、このような学校が目立つようになってきました。

通信制初の甲子園出場は13年前

通信制の高校が初めて甲子園出場を果たしたのは、2012年春の選抜大会です。長野県佐久市にある地球環境が、前年秋の北信越大会を勝ち上がって、出場校に選ばれました。週に1日登校するスクーリング制度を利用し、野球に集中できる環境が強みでした。
 
これに続いたのは、北海道深川市に本校のあるクラーク記念国際です。野球部員はスポーツコースに所属し、2016年夏の初出場以降、これまで春夏合わせて4回、甲子園の土を踏んでいます。2023年夏には通信制初の勝利を挙げました。
 
通信制と全日制を併設する学校も、トップアスリートの養成を掲げて台頭しています。今春の選抜大会に創部3年目で初出場した沖縄県名護市のエナジックスポーツもその1つです。2021年に通信制高校として開校し、その後、全日制も設置されました。
 
野球部員は現在、寮生活をしながら全日制で学んでいますが、ゴルフ部では通信制の生徒がプロテストにも挑戦しています。このように競技や生徒の事情によって制度を使い分け、スポーツ強化を打ち出す高校も増えています。
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増え続ける通信制高校
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