【大学入試の現在地】指定校推薦を減らし一般選抜を拡大。関西学院大学に見る「学力重視」への揺り戻し

大学入試は今、大きな転換期を迎えています。推薦入試の主流である指定校推薦で入学した学生の退学が増加し、大学が入試の在り方を見直し始めているのです。その背景には、何があるのでしょうか。(画像出典:PIXTA)

推薦入試ブームに異変? 関西学院大学が一般選抜を拡大

関西学院大学は、かつて推薦入試を拡大し、2020年度には一般選抜の割合が34.6%まで減少しました。しかし、2024年度にはそれが54.3%にまで増加しています。この動きは、大学側が一般選抜の方がより優秀な学生を確保できると判断したことの表れだと推測できます。

この関西の名門大学の動向を受け、筆者は関東の大学でも同様の動きが起こると予想していました。実際、関東の高校の進路指導の先生方も、「指定校推薦は今後減少するだろう」と見込んでいたようです。

そして、その動きは予想よりも早く現実のものとなっています。2025年には、関東の大学も指定校推薦の枠を絞り込み始めています。

高校生のオンライン塾「展展堂」の代表で教育系YouTuberの天童辰也さんは、現状について次のように語っています。

「指定校推薦で求める評定平均値を急に上げている大学もあります。中には4.3を4.6に上げたところも」

一気に0.3ポイントも引き上げるというのは、確かに驚くべきことです。実際、大学の教職員の間でも「そんなに急に上げるなんて」という声が聞かれたほどです。少子化が進む中で、大学は学生を確保したいという思いと同時に、少しでも優秀な学生に入学してほしいという強い希望も抱いていることがうかがえます。

ある人気の中堅大学は、しばしば定員割れをしています。志願者は多いのになぜ定員割れをしているかというと、「繰り上げ合格者を増やすと学力が足りない学生を入学させることになるから」と言います。つまり、定員を充足させることよりも、学生の学力の高さを保つことを優先しているのです。

生き残りのために少しでも優秀な学生を集めたいという大学の模索は、今後も続きそうです。
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大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法
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この記事の執筆者:杉浦 由美子 プロフィール
キャリア20年の記者。『女子校力』(PHP新書)、『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)など単著は14冊。『ダイヤモンド教育ラボ』、『ハナソネ』(毎日新聞社)『マネーポストWEB』(小学館)などで取材記事を寄稿している。趣味は取材。
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