トイレトレーニングで
トイレに入る前や、拭き残しに対処するときなどに、本人に選択肢を示し、「同意」の実践例を示します。トイレに入る前
「トイレのお手伝いしてもらいたい? それとも、全部自分でやってみたい?」トイレを出る前
「おっと、ちょっと拭き残しちゃったみたいだね。もう1回自分でやってみる? それとも、お手伝いが必要?」お子さんが、手伝ってほしいと選択した場合は、「じゃあ、お手伝いさせてもらうね、いい?」と確認しましょう。
お子さんが「いいよ」と返してくれたときに、「どうして『いいよ』って言ってくれたの?」と聞いてみることで、「同意」についての思考を促すこともできます。「いい?」って聞いてもらったから同意した、きれいでいるためのことだから同意した、と頭の整理につなげましょう。
お風呂で
子どもも4歳にもなると、お風呂に入るときには多少のプライバシーを確保したいと考えるようになるかもしれません。一緒にお風呂場にいてほしいと思っているか、おしゃべりしながらお風呂に入りたいと思っているか、お子さん本人の意向を聞いてみましょう。質問に対しては、肯定か否定、いずれかの返事をもらうようにします。
「一緒にお風呂場にいると落ち着かないかな? ドアの外で座って待ってたほうがゆっくりできそう?」こんなふうに聞いてみるのもいいかもしれません。
お子さんが一人でお風呂に入ることを選んだ場合は、もちろん安全上の注意は怠らないようにしてください。すっかりその場を離れることはせず、シャワーカーテンの裏や浴室のドア付近など、お子さんの目に入りづらい場所で待機し、浴室内の様子に注意を払ってください。
ちなみに、お風呂の時間は、その子のからだの各部位について正確な名称を教えるのに最適です。からだを洗いながら「ここはなんていう場所かな?」「◯◯はどこかな?」とからだの部位名クイズをするのも楽しいですよ。
子ども部屋で
ウェブサイト「同意を尊重した子育て(Consent Parenting)」の運営者で、児童性被害サバイバーでもあるロザリア・リベラさんは、「同意」を次のように定義しています。このことを実感するには、子ども部屋を例にするとわかりやすいです。同意とは、誰かがあなたにハグやキスをしたいとき、あなたのからだをくすぐりたいときなどに、前もって取らなければならない許可のことです。そうした行動に出る前には、それをしていいかどうかを相手に聞いてみなければなりません。聞かれた側には、その行動を許可するかしないかを選ぶ権利があります。
理想としては、それぞれの子どもに個室を用意したいところです。部屋という物理的な区切りがあれば、ほかの人の部屋に勝手に出入りするのはよくないことだということが感覚的にわかってきます。
とはいえこの形式は、多くのご家庭にとって現実的なものではないと思います。わたし自身、子どものころは妹のキャシーと同室でした。そうした場合は、室内に境界線を設けます。
たとえば、お互いのベッドを境界の一部として見ます。わたしたち姉妹の例で言えば、右側のベッドはキャシーのもの。左側のベッドはわたしのものです。
それぞれのベッドは、それぞれのプライベートスペース。妹が、わたしのベッドにちょっと腰掛けたいと思ったら、わたしの許可を取らなければなりません。わたしの側も、妹のプライベートスペースを尊重する必要があります。妹のベッドに座らせてもらいたいときは、妹に聞いてからにしなければなりません。
こうした会話を重ねることで、子どもたちはコミュニケーションスキルと自立心を育んでいきます。自分自身のプライバシーを守るために声を上げる方法を身につけ、「同意」の実践を学んでいくのです。
※性的同意とは、性的な行為において、関わる全ての人が「この行為を本当にしたい」という気持ちを持っているかを、お互いに確かめ合うこと。 キンバリー・キング(Kimberly King) プロフィール
ウィーロック大学(現ボストン大学ウィーロックカレッジ)大学院教育学修士(M.S.Ed.)。自身が性被害にあったことをきっかけに、メイン大学在学中から、サンドラ・キャロン博士のアシスタントとして性被害防止活動にかかわる。幼稚園教諭として働きつつ、非営利組織「ダークネス・トゥ・ライト(Darkness to Light)」の認定ファシリテーターを務め、児童性被害予防教育の専門家として活動している。近著に『子どもを守る新常識 性被害 セーフティガイド』(東洋館出版社)がある。