今年、明光ネットワークジャパン(明光義塾)が行った「PTAに関する意識調査」では、PTAに加入したことがある小中学生の保護者980名のうち、約9割が「PTA役員の活動に負担を感じている」ことが分かりました。
同じく今年、ベビーカレンダーが子育て中の母親326名に行ったアンケートでは、約9割の人が「役員・係決めを憂うつに感じている」と回答しています。
PTAは、子どもが学校に入ると保護者を自動的に会員として扱い、クジ引きでクラス役員を決めるなど、本人の意思にかかわらず活動を求めることがいまだに多く、長い間保護者、主に母親たちの悩みや不満のタネとなってきました。
この春も「クラス役員にならないためにはどうしたらいいのか」と頭を悩ませている保護者は多いでしょう。できることを考えてみました。
「役員をできない」が認められないなら選択肢は1つ

でもおそらく実際には、「活動しないことは認めない。クラス役員決めには必ず参加してもらう」と回答するPTAも多いと思います。そういった場合は、やむを得ません、PTAを辞めるしかないでしょう。退会を伝えた時点で会員ではなくなりますから、あとは何を言われても「会員ではないので」と答えるのみです。
たまに、会員でない人に対し入会を求めてくるPTAもあります。先日はSNSで、「保護者全員を対象に役員決めのクジ引きを行う。入会していない方が当たった場合は、入会してもらう可能性がある」という冗談のような手紙を受け取った保護者の話を見かけました。
個人情報を正しく取り扱っていれば、PTAに入会していない保護者に連絡をとれないはずなのですが、もしこのように「入会してもらう」という連絡がきた場合は、やはり「会員ではないので」と伝え、断るしかないでしょう。
さらに稀(まれ)ではありますが、「入会しないなら、お子さんは登校班から外れてもらう/記念品をあげない」などと言ってくるPTAも、たまにあります。
これまで複数の教育委員会が通知(※)を出してきた通り、保護者の加入・非加入にかかわらず、PTAは子どもたちを平等に扱う必要があるはずですが、PTA=保護者の義務(任意ではない)と信じている人は「入らない人はズルい、罰すべき」と考える傾向があります。
PTA加入が任意であることが世の中にすっかり浸透すれば、こういったことを言う人はいなくなると思うのですが、残念ながらまだその段階ではありません。話し合いを続けるか、条件を受け入れて退会するか、諦めて入会を続けるかの、3択となるでしょう。
「クラス役員決め」の憂うつをなくす1番の方法
筆者がPTAの取材を始めて、約12年。繰り返しお伝えしてきたことですが、そもそも「必ず何人を選ぶ」というクラス役員決めのルールがおかしいのです。任意で加入・活動する団体なのですから、義務として活動を求められる筋合いは、誰にもありません。本当に必要なのは、「PTA役員にならないためにはどうしたらいいのか?」と保護者が知恵を絞ることではなく、「必ず何人」という役員決めのルールをなくし、「希望者のみが活動する」という仕組みにPTAを改めることでしょう。
どうやったらPTAを変えられるのか? という方法については、拙著『さよなら、理不尽PTA! 強制をやめる PTA改革の手引き』や『PTAをけっこうラクにたのしくする本』で詳しく紹介していますので、興味がある方は読んでみてください。
あるいは「PTAを変えるほどの時間や気力はないけれど、せめて“免除の儀式”(役員決めの際に「できない理由」を言わせる)をなくしたい」と思う方は、2024年に公開したこちらの記事を、ぜひご覧ください。
最近では、「PTAの解散」も徐々に増えています。正確なデータは存在しませんが、SNSで「わが子の小学校のPTAがなくなった」「近隣のPTAがどんどんなくなっている」といった話を見かけることは、もう珍しくなくなりました。ここ3、4年で、フェイズが変わってきたと感じます。
筆者は「PTAに限らず、保護者の団体はないよりあった方がいい」という考えですが、保護者の春を憂うつにするような団体なら、ない方がマシとも思います。「必ず何人の役員を出す」というルールを続けるPTAは、そろそろ解散してもいいのかもしれません。
※例)学校園管理者のための PTA運営の手引き(大津市教育委員会)
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。