「知らぬ間に漏れる個人情報」「PTA退会で班外し」「先生の負担増」実は問題だらけの登校班

PTAの経験談について保護者にアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”がいろいろあることが分かりました。ここでは、『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)から抜粋し、よく見られる「登校班」の理不尽について取り上げます。

PTAには“理不尽な慣習”があります。PTAの経験談について保護者にアンケートを取ったところ、次のような「登校班」にまつわる理不尽エピソードが挙がりました。

※本記事は『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)を一部抜粋したものです。
さよなら、理不尽PTA!
さよなら、理不尽PTA!

入学説明会のとき既に登校班が決まっており、班分けの名簿が配られた。入学前なのに、なぜPTAに名前も住所も知られているのかと怖かった。(猫しか勝たんさん)

登校班の世話人を取りまとめる役を引き受けたら、自動的に校外委員になった。災害時に避難所の管理もしなければならないと知り、さらに仰天。(どこかの都民さん)

月に1度、通学路の決まった地点でPTAが「登校見守り」をしているが、おしゃべりの場と化している。(大中小林さん)

じつは問題だらけの「登校班」

個人情報の取扱い上の問題も
個人情報の取扱い上の問題も(画像出典:pixta)
交通安全などのため、家が近い子どもを「登校班」で集団登校させる小学校がときどきあります。4月のみだったり通年だったり、2か月に1度だったり毎日だったり、実施期間や頻度は学校によりまちまちです。高学年の子に引率してもらえるので、新入生の保護者には魅力的ですが、いろいろと問題も見られる仕組みです。

PTAを退会するときは「子どもが登校班に入れなくなる」など、脅しのように使われることもあります。これは「登校班の編成」という手のかかる作業を、学校でなくPTAがやることが多いためです(集団登校は一部の保護者の要望で始まるケースが多いので)。

さらに、個人情報の取扱い上の問題もあります。PTAや子ども会が班編成を行う場合、多くの学校は保護者に無断で新入生の名簿を役員さんに渡していますが、これはもちろん不適切なやり方です。そのため、たとえば里親の名字を通名としている里子の実名が、知らぬ間に他の保護者に知られてしまう、といった問題も起きてきました。

同じ班の子ども同士の喧嘩やいじめ、「歩道をふさぐ」などへの近隣住民からの苦情など、PTAとは関係ないトラブルもあり、先生たちからもよく悩みを聞くことがあります。

こういった背景から、最近は個別登校をベースに切り替え、希望者のみグループ登校させる学校も増えているようです。今後はスクールバスの利用が広がる可能性もあります。

登校の見守り(旗振り・旗当番)

「登校の見守り」は、保護者や地域住民が歩道に立ち、子どもたちの安全を確保しようという活動です。最近は定番化していますが、30〜40年前のPTAではあまり行われていませんでした。ここ20〜30年ほどの間に広がったものと考えられます。

見守りも集団登校と同様、期間や頻度、参加形態は、学校によって異なります。委員や係で担当するところもあれば、すべての保護者を当番に組み込むところもあるほか、自治会や子ども会と共同で実施するところなどもあります。

子どもの安全はもちろん大切ですが、保護者たちも多忙です。たまに先生が見守りをする地域もあるようですが、先生も多忙です。見守りが必要なら、本当は公的な予算でちゃんと人を雇う必要があるのではないでしょうか。路面標示やガードレール、ハンプ、信号機の整備など、見守りなしでも安全が確保されるよう行政に働きかけることもだいじです。

なお、見守りは不審者対策の目的もあると言われてきましたが、2017年に登校見守りをしていた保護者会会長による児童殺害事件が起きて以来、防犯カメラを設置する自治体が増えています。

PTAを「やめたい」「変えたい」――そう思っている方へ

拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。

「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。

是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。 大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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