地下鉄丸ノ内線の車両内にコンセントが設置されている理由は? 使っている人はまれだが……
東京メトロ丸ノ内線の車両内にコンセントが設置されている理由について、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。
新幹線や特急列車では、座席に電源コンセントを備えている車両が増えてきている。しかし、地下鉄など乗車時間の短い車両でコンセントが設置されているケースはあまり見かけない。
ところが、東京メトロ丸ノ内線の新型車両2000系には、電源コンセントが設置されている。この理由について、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。
(今回の質問)
東京メトロ丸ノ内線の車両にコンセントがある理由は?
(回答)
利用者からの要望があったからではない。新たなサービスを採り入れて、快適な車内空間を作りたいと考えたからである。
車内にコンセントがある丸ノ内線2000系
車内にコンセントがある東京メトロ丸ノ内線2000系
新幹線や特急列車の座席に電源コンセントがある車両が増えている。これだけスマホやタブレット、ノートパソコンが普及すれば、充電設備の利用者も増加し、長時間乗るような特急列車を中心に、コンセントの設置要望も多い。当初は窓側の席にしかなかったものが、最近の車両では、各座席に取り付けてある。もっとも、特急券や座席指定料金など運賃以外の料金を払う必要のある列車で、比較的長時間利用のときに限られてきた。
それ故、丸ノ内線の新型車両2000系が2018年10月に報道公開されたときには驚きの声が上がったものだ。
丸ノ内線用2000系の車端部
このコンセントは特定の座席に設置されているものではない。各車両の車端部ドア付近にあるフリースペースの細長いテーブルの下に2つあるだけだ。その近くの2人掛け席から長めのコードを延ばせば座ったままでも充電できるが、どちらかといえば立ったまま充電する方が使いやすい。
小テーブルはタブレットのミニサイズが置ける
当初は、1車両に2カ所しかないので、取り合いになるのではないか、乗車時間が短いから必要ないのでは、といった声も聞かれた。しかし、筆者が乗車した限りでは、使っている人を見たことはない。おそらく、コンセントの設置を知っている人が多くないのと、知っていても短時間の乗車では利用する時間がないのだと思われる。
筆者は、スマホの電池残量が少なくなってきたときに2回ほどお世話になった。池袋駅で折り返し停車中の5分ほどでもかなり充電でき安心した。事故などで長時間停車中のときなど、コンセントがあれば助かる事例もあるのではないだろうか?
東京メトロ線内を走る電車のコンセント設置状況
しかし、丸ノ内線2000系の電源コンセント設置はあくまで試行のようだ。その後に新製された有楽町線17000系や半蔵門線18000系には電源コンセントが設置されていない。その辺りの事情を東京メトロに取材を試みたのだが、回答できないとのことだった。
東京メトロの路線内で電源コンセントを利用できる車両はないのだろうか?
西武40000系は、東京メトロ有楽町線や副都心線に乗り入れている
実は、東京メトロ有楽町線や副都心線に乗り入れる西武鉄道40000系のうち、クロスシートおよびロングシート変換車両にはコンセントが設置されている。ほとんどが座席指定列車S-TRAINに充当されるので、座席指定券が必要だが、まれに一般列車にも運用されるときがある。
S-TRAINとして使用されるときは壁にあるコンセントが利用できる
クロスシートをロングシートに転換した場合、コンセントは座席の背で隠れてしまい、利用できないのだが、車端部の3人掛けロングシートは固定のため、常時コンセントが座席と座席の間にあるアームの下にある。全席ロングシート時でも通電していて使えたという情報があるので、試してみてはどうだろうか?
西武40000系の車端部の3人掛けシートには肘掛けアームの下にコンセントがある
千代田線に乗り入れる小田急ロマンスカーMSEには、残念ながらコンセントは設置されていない。こうしてみると、丸ノ内線2000系の車内コンセントは極めて貴重なものといえよう。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『
ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『
シニア鉄道旅の魅力』『
にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。