(今回の質問)
「電車」と「列車」は何が違う? 使い分けがあるって本当?
(回答)
JR東日本では、首都圏の「電車特定区間」を走る車両を「電車」、それ以外に直通するものを「列車」と呼んでいる。
電車は列車の一形態でしかない
そもそも、列車とは、線路を走る車両全てをいう。1両のみか、2両以上連結したものかは問わない。列車にはさまざまな形態があり、動力別、動力の集中・分散によって下記の表のようになる(あくまで原則)。

「国電」が走る線区を「国電区間」と呼び、運賃は列車区間より若干安く設定。運行ダイヤ(時刻)は列車は全ての停車駅で厳密に決まっていたが、国電は駅間隔が列車区間よりも短かったので、主要駅のみ決め、そのほかの駅は標準時刻といって、おおよその時刻で運行していた。
国電区間は電車特定区間となったものの、今なお残る区分け

理由の1つとして、首都圏の場合、列車区間を走る列車も久留里線や八高線(高麗川駅~高崎駅)がディーゼルカーで運行される以外は、ごく一部の臨時列車をのぞいてほぼ電車となったため、区別の必要が薄れたからであろう。

原則は、「電車特定区間」内のみを走るものを「電車」、列車区間に直通するものを「列車」としている(例外もあるからややこしい)。

中央線は高尾駅や青梅駅へ向かう特快・快速は「電車」、「あずさ」「かいじ」といった特急や豊田駅発松本駅行きといった普通列車は「列車」扱いだ(高尾駅までが電車特定区間、青梅線・五日市線は全線が電車特定区間)。なお、中央特快の大月行きは、高尾から先に直通するけれど、都内では「電車がまいります」と案内される。オレンジ帯のE233系は「電車」(かつての国電)で、高尾から先の列車区間に乗り入れているという扱いなのだ。列車番号も、東京~高尾、高尾~大月で異なっている。
埼京線は「電車」、同じ線路を走る湘南新宿ラインは「列車」となる(大宮駅までが電車特定区間、その先、高崎駅や宇都宮駅は列車区間)。
地方での電車と列車

国鉄と私鉄電車が並走していて、圧倒的に私鉄が便利な場合、汽車と電車という使い分けは、結構あちこちの地域で行われていたのではないかと思われる。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。