ここがヘンだよ、ニッポン企業 第35回

【ニチガク倒産は序章に過ぎない】SNSの更新が止まったら要注意? “ヤバい予備校”の見分け方

「受験シーズンに突入」というタイミングで、東京都新宿区の大学受験予備校「ニチガク」が倒産してしまった。“被害者”にならないよう、子どもの塾選びの際にチェックすべきポイントは何なのかを解説しよう。(サムネイル画像出典:ニチガク 公式Webサイト)

「先払い」に注意……計画倒産も

そこに加えて、学習塾・予備校の倒産が増えていく理由として、今回のような「先払いビジネス」がある。

今回、一部で報道されているが、ニチガクは昨年から経営が悪化していたにもかかわらず、冬期講習を名目に多くの生徒から授業料を前払いで受け取っていた。

しかも、経営が傾いてから経営者がコロコロ変わり、現社長は経営の素人。前社長らは今も高級マンションで生活していることなどから「計画倒産」の疑いまでかけられている。

このような疑惑は、2018年に破綻した振袖レンタル業者「はれのひ」や、脱毛サロン、英会話教室の倒産劇でもよく指摘された。「先払いビジネス」を悪用してカネを集めるだけ集めてドロンということをもくろむ詐欺師が、この世の中には確かに存在する。そのような「闇の仕事師」が、苦境の大学受験予備校を悪用していく可能性が高いのだ。

「ヤバい予備校」を選ばないためには?

では、そのようなリスクが増す中で、「ヤバい予備校」を選ばないためにはどのようなところをチェックしていけばいいか。

まず基本的なところで言えば、「大学受験」だけの予備校を選ぶのはやめた方がいい。パッと見た感じ、大学受験に特化しているところの方が、任せて安心のような印象を受けるだろうが、実はこれは経営的にはかなり危ない。

これから日本の少子化は加速度的に勢いが増すからだ。子どもが激減する中で教育ビジネスを成功させるには、幅広い世代をカバーしていくしかない。その道を放棄している、やりたくてもできないというところは、これから年を追うほど経営は厳しくなっていく。

実際、先ほどの臨海セミナーや東進、駿台、代々木ゼミナール、早稲田ゼミナールなど名だたる大手予備校・学習塾は小学生コースから完備している。

そのような経営スタイルに加えてチェックしておくべきなのはSNSだろう。本来、少子化で苦しんでいる業界なのだから、生徒の勧誘や定着を促すためにもSNS戦略を有効に活用するのが筋だ。実際、大手・学習塾や予備校の公式SNSでは、受験情報はもちろん、オリジナルの勉強法などを積極的に発信している。

しかし、ニチガクはそれほど熱心ではなかった。X(旧Twitter)に関しては、公式アカウントは2022年5月3日の「毎年、多くの生徒が上智大学に合格しています」という投稿が最後だ。

インスタグラムはニチガク予備校新宿本校(大学入試戦略相談室)という教育コンサルタントが投稿をしていて、昨年6月くらいまでは積極的に発信をしていたが最近はほとんどない。

不祥事企業では、こういうパターンは非常に多い。本来やらなくてはいけない施策をやっていないというのは、組織内部に何かしらの問題が発生して、そのような施策をやれるほど余裕もモチベーションもないのだ。

これから学習塾・予備校は厳しい淘汰(とうた)の時代に突入する。これらのチェックポイントを参考に「被害者」にならないようにしていただきたい。
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この記事の筆者:窪田 順生
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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