先行するウィーンのLGBTQピクトグラム「カップル信号機」
これはレズビアン、ゲイ、ヘテロセクシュアル(異性愛者)の3種類のカップルがそれぞれ赤信号と青信号に描かれたもので、いずれもペアが仲良く手を繋いだり肩を組んだりしているのが印象的です。
この信号機の導入時には、オーストリア代表の「ひげ美女コンチータ」がユーロビジョン・ソング・コンテスト優勝者として世間を席巻していたことや、ライフ・ボールがHIV感染者およびエイズ患者を支援するヨーロッパ最大のチャリティイベントという背景とも相まって、LGBTQ機運がかつてないほど高まっており、「圧倒的に好意的な反響をもって迎え入れられた」と、当時のマリア・ヴァシラコウ副市長は述べています。
そんな多様性にあふれていてリベラルだったはずのウィーンで、新しい優先席ピクトグラムはなぜ大炎上したのでしょうか。
行き過ぎたジェンダー論へのバックラッシュか?
もろもろの意見を吟味したところ、これまで常に進化を遂げてきたウィーンのジェンダー論が、どこまで走ってもゴールが見えないことから一般市民の「ジェンダー論疲れ」に繋がったこと、女性が自分たちの権利を侵されていると危機感を募らせていることなどが原因ではないかと感じています。日本でも昨年からジェンダーフリーの公衆トイレや、トランスジェンダーの公衆浴場利用が大きなテーマになっていると聞きます。誰もが排除されていると感じない快適な社会づくりは、どこの国でも手探り状態にあるようです。
この記事の筆者:ライジンガー 真樹
元CAのスイス在住ライター。日本人にとっては不可思議に映る外国人の言動や、海外から見ると実は面白い国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説を中心に執筆。All About「オーストリア」ガイド。