こうした人間としての土台を作っていくのが、「SEL(Social Emotional Learning)」である。非認知能力を高めるアプローチとして、近年注目を集めている。

子どもが関わるあらゆる場面でSELが必要
下向さんは主に学校現場へSEL(Social Emotional Learning)をベースとしたプログラム提供や伴走支援を行っている。SELは日本語で「社会性と情動の学び」と略され、「Social(ソーシャル)」と「Emotional(エモーショナル)」の2つの要素から構成される学びのアプローチだ。主に、自分への気付きを深める力(自己理解力)、自分の感情とうまく付き合う力(自己管理力)、他者への気付きを深める力(共感力)、他者と良好な関係を築く対人関係力(社会スキル)、責任ある意思決定ができる力(意思決定力)の5つの力を養う。
下向さんは「授業だけでなく、行事や部活など多面的な場面へのアプローチにより、SELの効果やインパクトが大きくなっていく」と語る。
さらに、SELは学校だけでなく、家庭や地域など、子どもが関わるあらゆる場面で行われることが重要だという。下向さんは「学校と家庭とで重視していることが180度違えば子どもは混乱してしまいます。SELの効果を出していくには、学校と家庭とが連携しながら推進していくことが欠かせません」と言う。
そこで、今回は家庭でできるSELワークを3つ紹介しよう。「いずれも主体的に行動できる子どもの土台を育むためのもの」と下向さんは続ける。家庭でSELを習慣化することで、お子さんと保護者自身の成長を実感できるようになっていく。親子で変化を楽しみながら取り組んでみよう。
食べる瞑想(めいそう)!? マインドフルイーティング
意識をしなければ、食事の際に感じるのは「おいしい!」や「冷たい!」くらいではないでしょうか。マインドフルイーティングでは、五感を使って深く観察し、それを言葉で表現します。<STEP>
1:食べ物を口に入れる前に、見た目や色、香りなどを観察する。「こんな色だったんだな」「断面がでこぼこしている」などさまざまな角度から見てみる。2:口に入れたあとも、「甘味が広がる」「鼻に抜けるにおいがある」といったことを感じ取り、咀嚼(そしゃく)の際も「グニグニしている」「口の中に甘味が広がった」など意識を向ける。
3:複数人で行う場合には、それぞれの気付きをシェアする。
このワークで、気付かなかった食べ物の一面や、それらに対する自分の反応を感じ取ることができます。余白をもって一つひとつの物事を観察すると、新たな発見があることに気付くワークといえます。レーズンが用いられることが多いですが、チョコレートでもスナックでもOKです。おやつの時間などにはじめてみてはいかがでしょうか。
・育まれる力:自己認知力
・対象(取り組みやすい年代):未就学児〜大人
・推奨人数:1人〜
・所要時間:5分