厚生労働省は2016年版厚生労働白書をまとめ、4日の閣議で報告した。
今年の同白書は「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」がテーマで、盛り込まれた調査には40歳以上の男女3000人が回答した。
日本の高齢化率は2015年に26.7%と急激に上昇し、2060年には39.9%と65歳以上の人口が約2.5人に1人という社会になる見通しを示した。
また、2015年の65歳以上の労働力人口は744万人と増加傾向にあり、労働力人口総数に占める構成割合は11.3%と1970年(4.5%)から約2.5倍に増加。就労意欲についても、65歳を超えて働きたいと回答した人は合計で65.9%だったという。
本来は年金を受け取る年齢である65歳以上が働き続ける傾向は、今後も続くと予想される。「年金世代」が働くメリットについてファイナンシャルプランナーの小川千尋氏がAll Aboutで以下のように解説している。
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65歳以降も働けるよう国もバックアップ
小川氏によると、公的年金である老齢基礎年金は、原則、65歳から受け取れるという(本人の希望で繰り上げ・繰り下げは可能だが、多くの人は65歳から受け取る)。
年々65歳以上で働いている人口が増えているが、その理由として、最近の60代後半が元気であるということに加え、会社や団体が中高年のマンパワーを活かすため、再雇用年齢を65歳から70歳に引き上げたり、定年を廃止したりしている社会背景があると小川氏は説明する。
また、国も65歳以上の人を雇う企業向けに助成金を給付しているといい、小川氏は「少子化で労働力人口が減る一方の日本では、高齢者と女性が力を発揮しないといけないというわけです」と述べている。
そのうえで、年金を受け取りながら働くメリットについて、小川氏は以下の3つを挙げている。
メリット1:公的年金以外の収入が得られること
現役世代は、景気がよくて会社がもうかれば給料アップやボーナスという形で収入が増える恩恵を受けられるが、年金世代には波及しない。また、少子超高齢社会が改善されない限り、公的年金額は減っていかざるを得ないため、減っていく年金をカバーする収入源がないと、余命が延びる一方の昨今、老後資金が枯渇してしまう危険性が高まる。よって、働いて収入を得ることで、老後資金を増やして経済面を改善する効果が期待できると小川氏は説明する。
メリット2:健康面・精神面に良い影響を与える
働き続けると、規則的な生活を送れる、人とのコミュニケーションをとれる、緊張感がある、会社や社会、人の役に立っているというやりがい・生きがいを感じられる、といった健康面にも精神面に良い影響があると小川氏は述べる。また、会社勤めなら、定期的に会社の健康診断を受けることになるため、重大な病気を早期発見できる可能性が高くなるという。
メリット3:社会の支え手・担い手になれる
会社員として働けば、70歳まで高齢年金保険料や健康保険料、税金などの義務的負担をするため、社会の支え手・担い手になれる。自営業や農業の人も、働いて得た収入に対して健康保険料や税金を払うので、同じように社会の支え手・担い手となれる。
また総務省の家計調査によれば、60歳以上の勤労者世帯の消費性向(可処分所得のうち、消費する割合)は現役世代(40~50代)より消費に回すお金が多く、働く年金世代の収入が増えれば消費の下支え役になってくれると小川氏は述べる。
小川氏は年金世代が働くことは、いいことずくめとしており、「会社が雇い続けてくれる限り、健康状態が許す限り、働き続けましょう。できれば、生涯現役の志で働き続けたいですね」と述べている。
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