(質問)
10年勤めた会社の退職金が45万円でしたが、少なくないですか? 転職活動の際に退職金の確認もしておいた方がいいのでしょうか?
(回答)
退職金制度の有無や内容は企業によってさまざま。独自に定められた退職金規定で勤続年数や基本給・役職・退職理由などさまざまな基準で算出されるため、一概に「多い・少ない」を判断することは難しいです。また、転職先が退職金制度を見直すこともあるため、退職金の有無や支給条件を重視し過ぎた転職活動はしない方がベター。あくまで転職理由や、転職でかなえたいキャリアの軸を整理し、転職活動を進めることが大切です。
詳しくは以下で解説します。
退職金制度とそのトレンド
退職金の額は、退職金制度の種類によって大きく変わるため、一概に多いか少ないか判断することは難しいです。退職金制度を大きく分類すると「退職一時金制度」と「企業年金(退職年金)制度」に分けられます。一方を使用している場合もあれば、2つの制度を併用している場合もあります。
「退職一時金制度」は退職時に一度にまとめて全額支払われる制度のことです。「企業年金(退職年金)制度」は企業が社員のために加入する年金制度のことで、確定拠出年金、厚生年金基金などが含まれます。退職一時金を支払うのは会社側の負担が大きく、倒産した場合は支払いができなくなるという課題もあるため、近年では保険会社や信託銀行といった、企業が契約する金融機関で積み立てを行う、確定拠出年金制度へ移行する企業が増えています。
「退職一時金制度」のみを採用している企業の場合も、算出方法や退職理由によって金額は変わります。終身雇用が当たり前だった時代は、勤続年数に応じて退職金が増える「年功型」が中心でしたが、最近は会社への貢献度に応じて金額を計算する「成果報酬型」が増えているのです。
「会社を辞めるときは誰でももらえる」「まとまった金額をもらえる」と思い込んでいると、いざ退職するときになって今後のライフプランに影響が出ることも。在職中に一度就業規則を読んでおくことがオススメです。
転職活動でも退職金を考慮するべき?
転職活動時に退職金制度が充実している企業や、「退職一時金」の支給金額が多い企業を選ぶべきだと思う方もいるかもしれません。ですが、退職金のことを考慮した企業選びには注意が必要です。実は、退職金制度のある企業自体が減少傾向にあり、厚生労働省が発表した 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 によると、平成30年には全体の約80.5%だったものが令和5年では74.9%に減少しています。
退職金制度は元々、終身雇用を前提に普及した制度でしたが、それが崩れてきていることに加え、団塊世代の大量退職によって、従来のような退職金制度を維持することが難しくなってきているのが現状です。退職金制度が充実している企業を選んだとしても、入社後に退職金制度が変更される可能性もあります。
また、入社時は長年勤めようと思っていても、キャリアの志向やライフスタイルの変化に合わせて、転職をする必要が出てくることもあるでしょう。その場合、退職金を考慮し転職先を選ぶメリットがなくなってしまいます。同じような業務内容、職場環境、条件の企業が仮に2つあり、転職先をどちらにするか悩んだ際に最終的に決める要素の1つとしてであれば、考慮してもいいかもしれませんが、そのような局面になる可能性は多くはないでしょう。
条件面を確認するのは、内定後がベター
今後のライフプランのためにも入社前に退職金制度について詳しく知っておきたいという場合もあるでしょう。退職金の制度詳細や支給金額は求人広告や企業の募集要項で記載が義務づけられていないことからも、面接で退職金について確認することはNGではありませんが、聞き方を間違えると、事業内容や業務内容、キャリアステップのことよりも給与や待遇面の条件を優先する人だという印象を与えてしまう可能性もあります。もし、内定後のオファー面談の場がある企業ならその際に、面談の機会がなければ、内定承諾を検討するにあたり確認したい事項として質問するのがいいかもしれません。
条件面も大切ですが、退職金制度の有無だけで企業の良し悪しや自分に合った職場かどうかは分かりません。長期的に自分のキャリアプランに沿った企業選びをすることを心がけましょう。