東京地裁は29日、2014年2月の東京都知事選をめぐる公職選挙法違反(運動員買収)で公判中の元航空幕僚長、田母神俊雄被告(68)の保釈を認める決定をした。産経新聞などが報じている。
田母神被告は選挙運動員に現金を配ったとして4月に公職選挙法違反(運動員買収)で逮捕され、公判では無罪を主張している。被告は保釈保証金600万円を即日納付し、保釈された。
保釈はどのような仕組みで行われるのだろうか。
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保釈保証金とは
保釈には、保釈保証金が必要になる。基本的に裁判が終われば、勾留はなくなり、無罪で釈放(勾留取消)か、刑務所などへの収監となるため、保証金が返還されるという。
被告人が逃亡など保釈条件を破った場合には、保証金は没収されるといい、裁判の出頭期日に意味もなく出頭しないときも、保証金没収の対象になることがある。
保釈保証金は、被告人への心理的プレッシャーを与えるのが目的なため、金額は被告人に応じて、裁判官が決定するという。起訴後、身柄を決定するのは基本的に検察官から裁判官に移るので、裁判官に決定権がある。
保釈は誰が請求できる?
保釈は被告人自らが請求できるほか、被告人の弁護人、法定代理人、保佐人(家庭裁判所で決定)と、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、被告人の保釈の請求権を持っているという。請求に却下する内容がなければ、裁判所は保釈をしなければならない。
また、被告人の勾留は裁判官が行うものだから、裁判官が職権で保釈を認めることができる。また、不当に長いと思われる場合、裁判官は保釈を認めなければならない。
刑事訴訟法では保釈決定をするときに検察官への意見聴取を義務づけられている(第92条)。意見には拘束力はないが、検察は、裁判官の決定に対し抗告をすることができる。
保釈と勾留停止は違う?
勾留停止とは、住居の制限を行い、親族や保護団体などに身柄を「委託」するため、釈放すること。保釈保証金が必要ない点が保釈とは異なる。
被告人が病気だったり、被告人の親族の葬祭などがあったりする場合、例外的に裁判官が認めることがある。ただし、自由に出歩けるものではない。
全面否認でも「保釈」、これはなぜ?
刑事裁判はふつう、第1回目の公判における下記の冒頭手続から始まる。
- 人定質問(確かに被告人本人かなどを確認)
- 検察官による起訴状の朗読
- 裁判官による被告人の権利の通知
- 弁護人・被告人の陳述
このあと、証拠調べが始まるが、2002年の刑事訴訟法改正によって、第1回目の公判前に「公判前整理手続」が導入され、証拠調べを公判前に行うことも可能になった。
証拠調べが終了することは、つまり隠滅できる証拠が存在しないことを意味するため、全面否認している被告人であっても逃亡の恐れがなければ保釈請求に応じることができることになる。
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