クラス担任とのかけもちで超激務! 体育主任の仕事のリアルに迫る
体育主任の仕事は、児童の体力向上への取り組みや体育的行事の計画運営、プール指導に関わる計画管理など多岐にわたる。さらに、年間を通して何らかの業務がある役職でありながら、体育主任に手当はつかない。
運動会や水泳学習の時期は特に業務が多くなることが推測できるが、実際はどうなのだろうか。長野県の公立小学校で体育主任を務める中澤先生(仮名)に、1年間の業務の流れと働き方のリアルを聞いた。
行事の計画運営から事務作業まで。体育主任の多岐にわたる業務
中澤先生は2021年より現在勤務する小学校に着任し、4年目を迎える今年度は6年生の学級担任をしつつ、体育主任と児童会顧問を兼務している。体育主任として中澤先生が行う日常的な業務は、主に行事関係と事務関係、そして備品管理関係の3つに分けられるという。
「私の学校には、運動会や体力テストのほか、スキー教室、スケート教室などの行事があります。体育主任は、それぞれの実施当日までの計画を立てたり、各担任の先生に必要なアナウンスをしたりします。また、県で実施される体育主任会議への出席や、体力向上プランを作成して県に提出することも業務のひとつです」
さらに、体育の授業やクラブ活動で使う用具や備品を管理することも重要な業務に含まれている。おろそかにしてしまうと、児童の安全面にも影響するのだ。
「使い始めてからかなり年月がたっている備品や用具が多いので、そこは特に気を遣うところです。例えば、サッカーゴールにちゃんとくぎが打ってあるかや、校庭の遊具が問題なく使えるかは定期的に確認しています。ボールやストップウオッチなど、授業や体力テストなどで使うものが必要な分だけそろっているかも確認して、足りない分は事務の方と予算面の相談をした上で注文します」
運動会や体力テストなど、行事において全体指揮をとることはもちろん、それ以外にも目立たないところで児童の体力向上や安全管理につながる業務を行っていることが分かる。
中澤先生は、児童に体を動かすことの楽しさを伝えるために、各分野の専門家を学校に招くことも積極的に行っているという。
「プロのサッカー選手や体幹トレーニングの専門家、パラアスリートやヨガ講師など、それぞれの分野の専門家を学校に呼んで授業をしてもらうことがあります。県や市、民間団体からそのような取り組みについて通知や案内が届くので、日程調整ができたらできるだけ申し込むようにしています。やはり専門家の方が実際に指導をしてくれることで、子どもたちにはプラスの影響が大きく貴重な機会だと思っています」
担任としての学級づくりも重なり、新年度は特に激務に
体育主任の仕事だけではなく、学級担任や授業準備、その他の校務分掌もあるなかで、これだけの業務を行うのは決して容易ではないだろう。業務の負担については、どのように感じているのだろうか。中澤先生は、現在勤務している小学校で体育主任を担うのは2回目だという。前回との違いについては、こう振り返る。
「以前、体育主任をしていたときは、新型コロナウイルスの影響があり、運動会では人との接触を極力減らすような配慮をして実施しました。例年と違う動きが多かったので、大変さはありました。今年度はそういった配慮の必要はなくなったものの、接触をそこまで気にせずできることが増えた分、子どもたちから『こんなことをしてみたい』と提案を受けることもあります。それ自体はもちろんうれしいことなのですが、コロナ禍とは違った大変さが加わったような感じです」
さらに、中澤先生は昨年度3月までの1年間は育児休暇をとっており、現在は第一子の子育て中でもある。勤務時間が長くなることで、プライベートにも影響があるのではないか。
「今は妻が育児休暇中なのでなんとかなっていますが、夫婦2人とも働いていたらと考えると、本当に厳しかっただろうなと思います。子どもが生まれる前と後では、子育てをしている先生方の見え方も変わりました。以前はいつも早く退勤してしまう先生とは、なかなか話すタイミングが取れずに困ってしまうことがあったのですが、今は『そりゃ、そうなるよなぁ』という気持ちです」
教育基本法では、教育の目的として「健やかな身体を養う」ことを規定しており(*)、体育・健康に関する指導は、学校での重要な教育活動のひとつに含まれている。体育主任は、それらの活動に関わる業務を多く担っており、その責任も大きいだろう。中澤先生のお話しからは、体育主任の役割の重要さだけではなく、その負担の大きさもうかがえた。
この記事の執筆者:建石 尚子
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。
大学卒業後、5年間中高一貫校の教員を務める。フィンランドにて3カ月間のインターンを経験したのち、株式会社LITALICOに入社。発達に遅れや偏りのある子どもやご家族の支援に携わる。2021年1月に独立。インタビューライターとして、教育や福祉業界を中心にWEBメディアや雑誌の記事作成を担当。