人気ロックバンド、Mrs. GREEN APPLEの新曲『コロンブス』のミュージックビデオが炎上した。
「植民地支配のきっかけをつくった人物」や「先住民族を大量虐殺した」という評価が定まりつつあるコロンブスのコスプレをするだけでもビミョーなところ、類人猿を登場させて人力車を引かせたり、乗馬や楽器の演奏方法を教えたりする描写があったことで、「無知すぎる」と批判が殺到したのである。
周りに止める人はいなかったのか
ご存じの人も多いだろうが、かつて我々が欧米人から「イエローモンキー」と蔑視されたように、「猿」「類人猿」は、白人社会では自分たちよりも劣った「有色人種」を見下す際に使われるアイコンだ。黒人差別でも「猿」という言葉は頻繁に使われる。この件に関しては、Mrs. GREEN APPLEが所属するユニバーサル・ミュージックや、この曲をキャンペーンソングとしてタイアップしていた日本コカ・コーラという大企業が、事前にこのような設定や描写は問題だと指摘できなかったのか、ということが議論されている。要するに、「Mrs. GREEN APPLEやスタッフが無知だったとしても、周りに誰か止める人はいなかったのか」と首をかしげる人が多いのだ。
ただ、筆者のような企業危機管理を長くやってきている者からすると、このような作品がノーチェックで世に出てしまうのはそれほど不思議なことではない。むしろクリエイティブな現場では「あるある」ともいうべきベタなリスクだ。
それはひと言で言えば、「トガッたクリエイター暴走リスク」である。
一体どういうことか、報道対策アドバイザーとしてこの手の炎上リスクにも関わってきた筆者の経験に基づいてご説明しよう。
「トガッたクリエイター暴走リスク」はこうして起こる
ある時、某有名企業で、ちょっとトガった広告キャンペーンを予定しているので内容をチェックしてくれと頼まれて、担当者らと一緒に広告を制作したクリエイターや代理店から説明を受けた。ちょっと聞いて、「アウト」だと思った。あまり具体的なことを明かせないが、今回のMrs. GREEN APPLEのミュージックビデオ同様、歴史認識がかなりズレていて炎上必至という内容だった。そこで問題のあるポイントを細かく指摘させていただくと、急に室内が重苦しいムードになった。
筆者の話を聞いているクリエイターが「チッ」と舌打ちをしたり、わざとらしくため息をつくなど明らかに不機嫌な感じになったのだ。そして、自分としてはこのような「演出」には、こういう狙いがあって、筆者が指摘するような「ひねくれた見方」をする人はいないと反論をした。
そのような感じで筆者とクリエイターと2人でケンケンガクガクの議論をするうち、それを見かねた担当者が、最終的にはちょっと慎重になろうということで今の方向性を再検討することになった。クリエイターはややキレ気味で、「この段階で広告のことを分かっていないセンスのない人に口を出されてもねえ……」とボヤきながら退席していった。
すると、意外なことが起きる。重苦しかった部屋の空気がパッと晴れて、担当者や代理店の営業まで筆者のところにやってきて、「ありがとうございます、言っていただいて助かりました」と礼を述べ始めたのだ。