ビジネスメールのやりとりをしていると、「表題の件について」「表題の件ですが」という言葉がよく使われます。社内、社外を問わず用いることができるポピュラーな表現ですが、正しい使い方をご存じですか。今回は、現役フリーアナウンサーの新保友映が「表題の件」の使い方や例文、言い換え表現について詳しくご紹介します。
<目次>
・「表題の件」の意味
・「表題の件」の正しい使い方と注意点
・ビジネスメールでの「表題の件」の例文
・「表題の件」の言い換え表現と例文
・「表題の件」の英語表現
・まとめ
「表題の件」の意味
まずは、「表題の件」の意味を改めてチェックしていきましょう。ビジネスメールにおける「表題の件」の意味
「表題の件(ひょうだいのけん)」とは、「メールの題名(件名)に記載された内容」という意味です。メールの題名に書かれた内容について、本文で言及する際に使うフレーズです。例えば、メールの題名に「打ち合わせ時間変更について」と入力し、本文で「表題の件についてご相談がございます」と書くと、相手に「このメールは、打ち合わせの時間変更に関する相談だな」と把握してもらうことができます。「表題の件について」と前置きをすることによって、二重に内容を説明することなく、スムーズに本題へ入ることができます。
一般的な「表題」の意味
ビジネスメールにおける「表題」は、「メールの題名」を指しますが、辞書における「表題」の意味とはやや異なります。本来「表題」とは、「本や書物に記された題名」あるいは「演劇や芸術作品の題名」を指します。ビジネスでの「表題」の意味は、これらの意味から派生したものと捉えることができます。関連記事;【例文あり】正しいビジネス敬語とは? メールの言い回しや間違いやすい使い方を解説
「表題の件」の正しい使い方と注意点
次に、「表題の件」の使い方と、注意すべきポイントをご紹介します。ビジネスメールを作成する際の参考にしてみてください。メールの題名は短く簡潔に分かりやすい内容にする
「表題」に当たるメールの題名は、短く簡潔な内容にしましょう。「いつ」「何の」「どういった」用件であるかを15~20文字程度でまとめることが望ましいです。中には、メールを一通ずつ全て開いてチェックするのではなく、メールの題名だけをぱっと見て、その場で読むか読まないかを決めている人もいます。メルマガと間違われてしまうような題名や、何についてのメールかがひと目で分からないようなものの場合、メールに気づいてもらえない可能性もあるでしょう。忙しくしている相手への気遣いという意味でも、分かりやすい題名をつけることが大切です。
メールの題名と本文の内容を一致させる
メールの冒頭に「表題の件」と書く場合は、必ずメールの題名と本文の内容を一致させましょう。表題と内容がちぐはぐになっていたり、全く別の話題を持ち込んだりすると、相手も混乱してしまいます。例えば、「定例会議の開催場所変更のお知らせ」と題名をつけたのであれば、はじめにその詳細について言及しましょう。相手の手間を考えて使わない方が良い場合もある
本文を「表題の件」から始めることは一般的な対応とされていますが、メールの題名を再度確認することが手間だと感じる人もいます。また、「表題の件」と省略されていると、丁寧さに欠けている、と捉えられる可能性もあります。目上の相手や新規の取引先に送るメールでは用いない方がよいこともありますので、職場のルールを確認して作成しましょう。ビジネスメールでの「表題の件」の例文
ここからは、ビジネスメールにおける「表題の件」の例文をご紹介します。例文(1)表題の件につきましてご報告いたします。
社内、あるいはチームに報告すべきことがあるときは、以下のような題名をつけた上で、「表題の件~」と書き出しましょう。【例文】
件名:◯月×日に発生した社内システムのトラブルについて
本文:お疲れさまです。表題の件につきましてご報告いたします。
例文(2)表題の件に関してご相談がございます。
相手に対し、何らかの相談を持ちかける場合は、以下のように「表題の件」を用います。【例文】
件名:△△プロジェクトのプレゼン用資料について
本文:◯◯部長 お疲れさまです。表題の件に関してご相談がございます。
例文(3)表題の件、承知いたしました。
相手からメールで何らかの連絡が届き、それに対する了承の旨を伝える際にも、「表題の件」を使用することができます。【例文】
件名:Re:《月次会議》時間変更のお知らせ
本文:お疲れさまです。表題の件、承知いたしました。
「表題の件」の言い換え表現と例文
続いては、「表題の件」の言い換え表現を、例文を交えてご紹介します。言い換え(1)掲題の件
「掲題(けいだい)の件」は、「題目(題名)として掲げられた事柄について」という意味です。「表題の件」と同様に使うことができます。ただし、「掲題」は一般に広く知られている言葉ではないため、使用される機会は少ないかもしれません。【例文】
件名:会議資料送付のご案内
本文:お疲れさまです。掲題の件について、内容をご確認いただけますでしょうか。
言い換え(2)首記の件
「首記(しゅき)」とは、「文章の冒頭に書かれたもの」という意味です。ここでの「首(しゅ)」は、「第一番」や「はじめ」を表します。「メールの初めに記載している事柄について」という意味合いで、「表題の件」と同じように使うことができます。【例文】
件名:会議室の予約について
本文:お疲れさまです。首記の件、◯月×日より予約方法が変わりますのでお知らせいたします。
言い換え(3)首題の件
「首題(しゅだい)」には、「文章などの初めに書く題目」という意味があります。「首題の件」は、「メールの冒頭」すなわち「メール題名に書かれた事柄」と捉えることができます。【例文】
件名:請求書発行のお願い
本文:お世話になっております。首題の件ですが、◯月末までにメールにて請求書を送付くださいますようお願いいたします。
言い換え(4)頭書の件
「頭書(とうしょ)」とは、文章の初めの部分のことです。「表題」とはややニュアンスが異なりますが、「文章の冒頭」という点を踏まえると、「表題の件」と似たような意味合いで用いることができます。特定の分野で多用される傾向がみられます。【例文】
件名:新規お取り扱い商品のお知らせ
本文:お世話になっております。頭書の件につきまして、ご案内申し上げます。
「表題の件」の英語表現
日本語では「表題の件」と示してビジネスメールのやりとりを行いますが、英語ではどのようにコミュニケーションを取るのでしょうか。最後に、「表題の件」に近い使い方ができる英語表現をご紹介します。ビジネス文書での正式な英語表現
「表題の件」を英語で表す場合、「◯◯について」という意味の「about ○○」や「regarding ○○」が適しています。「メールの題名」そのものを指す場合は、「題目・議題」という意味の「subject」が使われます。英語では、前に言及した内容と重複しないよう、あえて省略するようなフレーズはあまり使用されておらず、本文の冒頭でも用件をはっきりと伝えます。英語のメールで「表題の件」を使う場合の例文
メールの題名は、日本語で入力するときと同じように、簡潔かつ具体的に記載しましょう。ただし、「Notice」や「Important」など、単語のみの題名の場合、スパムと見なされてしまう可能性がありますので注意が必要です。メールの本文でも「◯◯について」と内容に触れることが大切です。【例文】
件名:Request for Quotation(見積もりの依頼)
本文:Please quote us for △△.(△△につきまして、見積もりをお願いします)
まとめ
「表題の件」は、「メールの題名に書かれた事柄」を表すフレーズで、ビジネスコミュニケーションでは日常的に用いられています。題名で言及した内容を省略するため、スマートに本題に入ることができる便利な言葉ですが、丁寧な印象が薄れてしまう可能性もありますので、使用シーンの見極めが大切です。また、「表題の件」と近い意味を持つ言い換え表現もありますので、相手や内容を考慮して使い分けてみましょう。■執筆者プロフィール 新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。