9月27日に放送されたNHKの番組「あさイチ」で西表島(沖縄県)の“イノシシの刺身”が紹介され、波紋を呼んでいる。番組内では、「イノシシの生食は保健所が申請を受け付けた店でだけ提供ができる」と紹介されたのだが、イノシシの肉について、基本的に生食の許可を出すことはありえないのでは…? という声がインターネット上で挙がっている。

 

実際、イノシシ肉の生食は禁止されているのだろうか。All Aboutの専門家は食用ジビエについて次のように解説している。

 

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ジビエとは

ジビエとは、シカやイノシシなど、食用とする野生鳥獣、その肉のことをさす。ジビエの狩猟から消費に至るまでの安全確保のためのガイドライン「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」が、厚生労働省によって2014年11月に発表されている。

 

ジビエの生食は禁物!

食と健康アドバイザーである南恵子氏によると、ジビエは中心部温度が75℃度になるまで火が通るようしっかり加熱(1分間以上)する必要があり、調理器具の消毒、また調理用と食用の皿、箸を区別するなど、混ざらないように十分に注意すべきだという。

 

適切な加熱処理をすれば、特別神経質になる必要はないが、間違っても「生やたたきがおいしい」という習慣を優先することのないように理解しておく必要がある、と南氏は述べている。

 

生食にはどんな危険が?

ジビエ(内臓を含む)を、生で、あるいは加熱が十分ではない状態で食べると、E型肝炎や腸管出血性大腸菌症の食中毒、また寄生虫の感染のリスクがあることも報告されている、と南氏は述べている。特に妊婦やこども、高齢者などは、深刻な症状になると見られ、控えるように注意が必要だという。

 

ジビエを食する際のルールとは

例えばガイドラインでは、「腹部に着弾した個体は、食用に供さない」とされ、腹部に着弾しないように狙撃すること、わなで捕獲し生体で食肉処理施設へ運搬して衛生的に処理することが望ましいこと、野生鳥獣にできる限り苦痛を与えないことが望ましいことなどが示されている。

 

また狩猟対象動物の異常確認も必要で、足取りがおぼつかない、神経症状がみられ、異常な挙動がある、ダニ類などの外部寄生虫が著しい、脱毛が著しいなどが具体例が挙げられ、これらが一つでもあれば、食用に供してはならないという。

 

ジビエは、屋外で狩猟されるので、家畜と比べると病原菌や寄生虫のリスクも高くなる。食品取扱者の感染を防ぐため、処理施設までの搬入(場合によっては冷やして搬入)、服装(血液や内臓物に触れないように)、衛生的な処理方法や注意点等もガイドラインには細かく示されている。

 

食肉加工を行う場合には、食品衛生法の規制対象となり、基準に適合する食肉処理施設を設け、衛生的に処理加工を行うことが必要となり、狩猟者も含めた食品取扱者の感染を防ぐことも重要なポイントになると南氏は説明している。


 

家畜とは異なるリスク、私たちができることは?

飲食店営業者がジビエを仕入れて提供、あるいは加工品を作る場合などは、食肉処理業の許可施設で解体されたものを仕入れることがルールとなっている。

 

南氏によると、ジビエは野生なので、家畜のように飼料や飼育環境を人の手によってコントロールすることはできないし、個体ごとに生育や健康の状態にも差があるという。だからこそ、人の手で管理された家畜とは異なり、安全確保のためには、様々なプロセスで関わる人たちの認識と、確実な実践が必要なのだ。狩猟から処理、流通、そして消費のそれぞれのプロセスで十分に注意し、くれぐれも生食をしないように気をつけたい。

  

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