「お大事に」の敬語表現は? ビジネスで役立つ使い方や例文、言い換え表現を解説

相手が体調不良やけがをした際に使う「お大事に」という言い回し。よく使われる表現ですが、ビジネスで使う場合は注意が必要です。本記事では、「お大事に」の正しい使い方や言い換え表現について、現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。

「お大事に」の敬語表現は? ビジネスで役立つ使い方や例文、言い換え表現を解説
「お大事に」の敬語表現は? ビジネスで役立つ使い方や例文、言い換え表現を解説

体調不良やけがをした際など、相手を労わることばとしてよく使われるのが「お大事に」という言い回しです。相手を気遣って使われる表現ですが、ビジネスシーンで使う際には注意が必要です。

本記事では、「お大事に」の意味やビジネスシーンにおける使い方、言い換え表現などについて現役フリーアナウンサーの新保友映が解説します。実際に使える例文や英語表現なども紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

<目次>
「お大事に」とは
「お大事に」の敬語表現・言い換え
「お大事になさってください」の使い方・例文
「お大事になさってください」と言われたときの返し方
「お大事になさってください」の英語表現
まとめ

「お大事に」とは

「お大事に」を使う前に、まずは正しい意味について理解しておきましょう。ビジネスシーンにおける注意点と合わせて解説します。

・「お大事に」の意味
「お大事に」はお見舞いの表現として使われる言い回しですが、そもそも「大事」には「重大な事柄」「大切」などといった意味があります。体調不良やけがにより相手が大変な状況にあると捉え、そこから「(体を)大切に(してくださいね)」という気持ちを込めて使われています。また、「お大事に」は「お大事にしてください」「お大事になさってください」を省略したカジュアルな表現です。そのため、相手が病気やけがであっても、比較的症状が軽い場合にのみ使うと覚えておきましょう。

・「お大事にしてください」は目上の人には使わない
先述した通り、「お大事に」はカジュアルな表現となるため、ビジネスシーンにおいて目上の人や取引先の相手にかけることばとして適切ではありません。「お大事に」と言われて嫌な顔をする人は少ないと思いますが、できるだけ相手に不快な思いをさせないためにも、目上の人に伝える場合は「お大事になさってください」といった表現を使いましょう。

「お大事に」の敬語表現・言い換え

「お大事に」は目上の人には使わないと解説しましたが、敬語表現にしたり言い換えたりすることで幅広いシーンで使うことができるようになります。相手や場面によって使い分けられるよう、違いを知っておきましょう。

・(1)お大事になさってください
先にも解説した通り、目上の人に対しては「お大事になさってください」を使うのが最適です。「お大事にしてください」も間違いではありませんが、「する」を尊敬の意味を込めて「なさる」に変えた方が、より相手を敬う気持ちが表されます。「どうかお大事になさってください」「くれぐれもお大事になさってください」など、文頭に一言添えるとさらに丁寧な印象になります。

・(2)ご自愛ください
自分を大切にするという意味の「自愛」に接頭語の「ご」を付けて「ご自愛ください」と言うことで、相手に対し「ご自分(お体)を大切にしてくださいね」という気持ちを伝えることができます。目の前にいる相手に直接伝えるための表現ではなく、手紙やメールの最後に書き添えるのが一般的です。また、すでに相手の体調が悪くなっている場合は使わない表現となるため、注意が必要です。季節の変わり目や仕事の繁忙期など、体調を崩しやすいとされる時期に使う表現と覚えておくと分かりやすいでしょう。

・(3)養生なさってください
「養生なさってください」は、相手が重い病気や大変なけがを負った際に用いられる表現です。「仕事から離れてゆっくりと体を休めてほしい」という気持ちを込めて使うことばであるため、風邪気味や体調不良で早退する場合などには適しません。「お大事になさってください」と同じように、尊敬語の「なさる」を使い「養生なさってください」とすることで、相手への尊敬の気持ちが伝わります。

・(4)お体をお労りください
「慰める」「大事にする」といった意味を持つ「労わる」ということばに接頭語の「お」を付けることで、相手に敬意を示しながら回復を願う気持ちを表現する言い回しです。「お大事になさってください」や「ご自愛ください」に比べて、より強い気持ちが込められた表現として使われています。「ご自愛ください」と同じく、手紙やメールに書き添えるのが一般的ですが、急な体調不良だけでなく慢性的な持病などを抱えている人などにも使えるというのがポイントです。

・(5)静養なさってください
「静養」には、「心身を静かに休めて健康の回復を図ること」といった意味があります。そこに尊敬語の「なさる」を付けて「静養なさってください」とすることで、「しっかりと体を休めて回復に専念してください」という願いが込められた表現となり、自宅や病院で療養する際に使われるのが一般的です。体調不良やけがが原因で仕事をしばらく休む場合などに最適な言い回しで、「仕事のことは忘れて、静養なさってください」「どうぞゆっくりと静養なさってください」などと使います。立場や関係性に関わらず、ビジネスシーン以外でも幅広く使えるため、覚えておくと非常に便利です。

・(6)おいといください
「大事にする」「かばう」といった意味を持つ「厭う(いとう)」に接頭語の「お」を付け、相手に「体を大事にしてください」と伝えるための表現です。「厭う」には本来「嫌がる」「避ける」といった意味もあることからあまり頻繁に用いられる表現ではありませんが、手紙やメールの結びのことばとして使われることがあるため、知っておきましょう。なお、より柔らかい印象にするため「おいといください」と平仮名で表記されるのが一般的です。

「お大事になさってください」の使い方・例文

「お大事に」の敬語表現である「お大事になさってください」は、ビジネスシーンをはじめさまざまな場面で使うことができます。こちらでは、「お大事になさってください」の適切な使い方について、場面ごとに分けて解説します。

・ビジネスメールでの例文
ビジネスメールとして使う場合は、「お大事になさってください」の前に「どうか」「くれぐれも」など一言添えるとより丁寧な表現となります。

【例文(取引先の相手に対して)】
先ほど営業所へお電話させていただきましたところ、体調を崩しお休みされていると伺いました。お体の調子はいかがでしょうか。急ぎの用事ではありませんので、まずはご自身の回復を優先し、くれぐれもお大事になさってください。

・目上の人や上司への気遣いの例文
目上の人や上司が体調不良やけがをした場合は、「お大事になさってください」に加え、相手の状況に合わせた気遣いのことばを添えると、より気持ちを伝えることができます。

【例文】
先日は貴重なご助言、ありがとうございました。体調を崩して早退されたと聞き、大変心配しております。来月頭には新プロジェクトの公開も控えておりますので、どうか今は無理をなさらず、お大事になさってください。その間に行うべき仕事がございましたら、遠慮なくお申し付けください。

・知り合いの体調を気遣う例文
「お大事になさってください」は、直接やりとりのある相手以外にも、例えば相手の家族など知り合い程度の関係性であっても使うことができます。

【例文】
奥さまが体調を崩されたとお伺いしましたが、その後ご様子はいかがでしょうか。どうか、お大事になさってくださいとお伝えください。少しでも早く回復されることを祈っております。

・復帰が決まっている場合の例文
病気やけが、産休などで相手がしばらく休んでおり、復帰が決まっている状態で連絡をとる場合などにも、「お大事になさってください」が使えます。

【例文】
お疲れさまです。来月復帰されると伺いましたが、お体の具合はいかがでしょうか。現場のことを気遣っていただけるのは非常にありがたいですが、復帰後しばらくは無理をなさらず、くれぐれもお大事になさってください。久しぶりにお会いできることを、心より楽しみにしております。

・家族や親戚に対して使う場合の例文
ビジネスシーンだけでなく、家族や親戚など親しい関係の相手に対して「お大事になさってください」を使っても問題ありません。丁寧すぎると感じる場合は「お大事に」「お大事にしてください」と言い換えてもいいでしょう。

【例文】
入院が長引くかと心配していたけれど、退院したと聞いて安心しました。この夏、久しぶりにみんなで帰省しようと考えているので、楽しみにしていてください。病み上がりなので、しばらくは無理せずお大事になさってくださいね。

「お大事になさってください」と言われたときの返し方

「お大事に」の使い方について解説してきましたが、反対に相手に「お大事になさってください」と言われることもあるでしょう。そんなときに最適な返し方についてご紹介します。

・感謝を表す返事の仕方
相手から「お大事になさってください」と言われた場合は、感謝の気持ちを込めて「ありがとうございます」と素直に伝えるのが1番です。その際、「お気遣いありがとうございます」「お心遣いありがとうございます」と文頭に一言添えると、より丁寧に感謝を伝えることができます。

【例文】
お気遣いありがとうございます。予定が分かり次第、すぐにご連絡いたします。休みの間ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

・迷惑をかけたことをお詫びする返事の仕方
休暇を取るなどして相手に迷惑をかけた場合、お詫びのことばも添えるようにすると、相手に気持ちが伝わりやすくなります。

【例文】
このたびは、急なお休みでご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございません。不在の間も電話やメールは可能ですので、何かありましたらご連絡いただけたらと存じます。

・復帰予定に向けたあいさつとしての返事の仕方
体調不良や家の都合などで一定期間休んでおり、復帰のめどが立った場合は、復帰する日時などを一緒に伝えるのがマナーです。引き継ぎに関する連絡事項などがある場合は、その内容についても触れておきましょう。

【例文】
お心遣いありがとうございます。来週の月曜日には復帰する予定ですので、よろしくお願いいたします。なお、1週間の業務に関してはチーム内で共有し、引き継ぎをお願いしております。何かありましたら、ご連絡いただけますと幸いです。

「お大事になさってください」の英語表現

最後に、「お大事になさってください」の英語表現をご紹介します。ぜひ、海外の取引先の相手などに向けて使う際の参考にしてみてください。

・Please take care of yourself.
「お大事に」の定番フレーズとして知られているのが「take care」です。「気を付けて」といった意味で別れのあいさつとして使われる言い回しですが、「お世話をする」という意味もあり、「take care of yourself」で「あなた自身のお世話をする」つまり「ご自愛ください」という意味合いになります。家族や友人に対しては「Take care.」というカジュアルな表現で、上司や取引先の相手に対しては「Please take care of yourself.」と丁寧な表現で、と相手によって使い分けるといいでしょう。

・I hope you get well soon.
「get well soon」も、日本語の「お大事に」に該当する定番フレーズです。直訳すると「すぐによくなる」という意味となり、「I hope you get well soon.」は「あなたがすぐによくなることを願っています」つまり「早く元気になってね」という気持ちを表しています。すでに体調を崩している相手やけがを負ってしまった相手に使う言い回しで、こちらも家族や友人であれば「Get well soon.」と手軽に使うことができます。

まとめ

「お大事に」の敬語表現やビジネスシーンにおける正しい使い方、言い換え表現などについて解説しました。「お大事に」は、相手の様子を気遣って声をかける際に便利な言い回しですが、カジュアルな表現となるため目上の人や取引先の相手に使う表現としては適切ではありません。そうした相手に使う場合は「お大事になさってください」や「お体をお労りください」など言い換え表現を用いるのが適しています。

何より大切なのは「早くよくなってほしい」という気持ちを伝えることです。特にビジネスにおいては、注意しなければならない点も多いですが、この機会に正しい使い方を理解し、相手に正しく気持ちを伝えられるようになりましょう。

■執筆者プロフィール
新保友映
新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。
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