勤務先で年末調整をしています。後から確定申告をした方がオトクな場合があるって本当ですか?

複雑で時間がかかる確定申告は、不安な人も多いですよね。編集部側で設定したケースに対して、ファイナンシャルプランナーの川手康義が回答・解説します。今回のテーマは、「勤務先で年末調整をしていても、後から確定申告をした方がオトクな場合があるのか」です。

勤務先で年末調整をしていても、確定申告をした方がオトクな場合がある
勤務先で年末調整をしていても、確定申告をした方がオトクな場合がある?
複雑で時間がかかる確定申告。正しく理解できているか不安……そんな人もいるかもしれません。今回は、ファイナンシャルプランナーの川手康義が、編集部に設定された質問に回答・解説します。
 

(今回のケース)
サラリーマンで、勤務先で年末調整をしています。後から確定申告をした方がオトクな場合があるって本当ですか?

(回答)
年末調整を受けたサラリーマンでも確定申告をすることでオトクになる場合があります。手術や入院をした、年の途中で退職した、住宅ローンの1年目、ふるさと納税を行った、自然災害や盗難・横領を受けた、年末調整後に結婚した場合などです。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。

途中で退職、ふるさと納税……お得な場合をチェック!

以下のような場合は、確定申告をしたほうがお得になります。

●医療費を払った場合
ご自身や扶養家族の医療費を支払った場合、「医療費控除」により所得税が還付(戻ってくる)される場合があります。具体的には病院や診療所などの窓口で支払った医療費が10万円(所得年額が200万円未満の場合は所得の5%)を超えた分が控除の対象となり、還付される金額は、超えた金額にその方の所得税率をかけた額です。

●年の途中で退職した場合
年の途中で退職すると年末調整は行われないので、給料から控除された所得税額が本来納付すべき額より多くなっていることがあります。なぜなら毎月の源泉徴収額はその方の扶養人数に応じた暫定額であり、その他の事情は考慮されていないからです。例えば生命保険に加入している方であれば、在籍時は会社の年末調整で「生命保険料控除」が適用されていたでしょうが、退職した場合は、ご自身で確定申告をしなければ「生命保険料控除」を受けることはできず、税金は還付されません。

●ふるさと納税をした場合
ふるさと納税の寄付先が5自治体以内ならば「ワンストップ特例制度」を使うことで「寄付金控除」が受けられるため、確定申告は不要です。しかしながら寄付先が6自治体以上の場合は、確定申告をしなければ「寄付金控除」は受けられません。また、医療費控除や住宅ローン控除などで確定申告をする場合は、改めてふるさと納税についての申告が必要になります。

●自然災害や盗難・横領を受けた場合
自然災害や盗難・横領によって資産に損害を受けた場合、「雑損控除」を受けることで税金を少なくすることができます。
 
●年末調整後に結婚・親族の面倒を見始めた場合
年末調整後に結婚した場合や親族の面倒を見始めた場合、確定申告することで税金が安くなることも。具体的には結婚した場合は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が、親族の面倒を見始めた場合は「扶養控除」などを受けられることがあります。

住宅ローン1年目は確定申告が必須!

また、住宅ローンを組んで1年目の場合も、確定申告をした方がお得です。住宅ローンを利用してマイホームの取得や増改築等をした場合、「住宅ローン控除」を受けることで税金を少なくすることができます。ただし、ローンを組んだ1年目はご自身で確定申告をしなければ「住宅ローン控除」が受けられません。ちなみに2年目以降は会社の年末調整で対応できます。
 
この記事の筆者:川手 康義
元製薬企業MR(医薬情報担当者)のCFP・1級FP技能士。日本ファイナンシャルプランナーズ協会に所属しており、協会会員向けの研修会や一般の方へのセミナーの企画・運営に携わっている。
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