2016年上半期に、全国の警察が虐待の疑いがあるとして児童相談所(児相)に通告した18歳未満の子どもの数が、2015年同期比7287人(42%)増の2万4511人に上ったことが15日、警察庁のまとめで分かったと、時事通信などが報じている。上半期の統計が残る2011年以降、5年連続で増加し最多を更新しているという。

 

増え続ける児童虐待はなぜ起こり、防止する方法や虐待を受ける子供たちを助ける方法はないのだろうか。これに関して、メンタルヘルスや子育ての専門家らがAll Aboutで解説をしている。

                                    

**********

 

児童虐待とは

精神保健福祉士の大美賀直子氏によると、児童虐待とは「児童虐待防止法」の定義で保護者がその監護する児童に対して以下のような虐待を行うことだとしている。

 

  • 身体的虐待(殴る、蹴るなどの身体に加えられる暴力)
  • 性的虐待(児童にわいせつな行為をする、させること)
  • ネグレクト(必要な養育を行わずに放置する、食事を与えないなど)
  • 心理的虐待(暴言を浴びせる、おびえさせる、子どもの前でDVをするなど)

 

児童虐待が起こる背景については、「子ども虐待対応の手引き」(厚生労働省)では、大きく3つのリスク要因に分類しており、これらの要因が複雑に絡み合うことで起こるとされると大美賀氏は説明する。

 

  1. 保護者側のリスク要因
    妊娠、出産、育児を通して発生するもの、保護者自身の性格や、精神疾患などの心身の不健康から発生するもの(例:望まない妊娠だった、育児不安、産後うつなど)
  2. 子どもの側のリスク要因
    手がかかる乳児期の子ども、未熟児、障害児などのほか、子どもの側に何らかの育てにくさがある場合など
  3. 養育環境のリスク要因
    複雑で不安定な家庭環境や家族関係、夫婦関係、社会的孤立や経済的な不安、母子の健康保持・増進に努めないことなど

  

大美賀氏は、あくまでも虐待にいたるおそれのあるリスク要因であり、こうした要因を持つ人がすべて被害者、加害者になるわけではないと指摘しながらも、そうした要因を持つ人の方が、問題を放置したり、追いつめられた心理状態になりやすいという。

 

保護者の心を救うには

大美賀氏は、「多くの児童虐待は、保護者の心が追いつめられた末の行動」としており、子どもを傷つけずにはいられないほどの心境になる前に、保護者自身の心が救われる必要があるとしている。

 

虐待は保護者本人が相談できないまま深刻化しやすいのも事実。こうした構造から、大美賀氏は「児童虐待を防ぐには周りにいる人がそのリスクを察知し、見守る姿勢も必要」と述べている。追いつめられているように近所の人が感じたとき、声をかけてみることが大事で、拒否されても見守っていき、しつこくないように配慮しながら、やさしく挨拶をしていくことを勧めている。

 

また、虐待している可能性を察知したら、地域の児童相談所に通報(通告)をし、行政の支援につないでいくことも求められると大美賀氏は説明する。児童虐待防止法では、児童虐待を受けたと思われる児童を発見したときの通報(通告)は、国民の義務と定められているためだ。

 

子どもから発する虐待のSOSとは

また、女性支援を専門とするカウンセラーである福田由紀子氏は、子どもから発する虐待のSOSの見抜き方などを解説している。

 

福田氏は、以下のような状況は虐待のサインだとしている

  • 顔や体に不自然な傷やアザがある
  • いつも服や身体が汚れている
  • 態度がおどおどしている
  • がっつくように急いで食べる
  • 頭をなでようとするとビクッと身構える
  • 年齢にふさわしくない性的な話をする
  • 表情が乏しい
  • 家に帰りたがらない

 

子どもからのサインを察したらするべきこと

サインを見たら、児童相談所に通報するのが周囲の大人ができる最も効果的な行動だと福田氏は説明する。児童相談所は、虐待されている子どもを親から引き離す権限を持っており、通報から48時間以内に子どもの安全確認をすることになっているという。

 

どのような行為が「虐待の疑い」になるのかわからず、通報をためらう人も多いかもしれないが、福田氏は子どもから感じる「違和感」が大事であり、「確信を持ってから」と通報を先延ばしにしていると、手遅れになるかもしれないと指摘している。また、こうした「違和感」を周りの人と共有し、子どもを見守る目を増やすことも大切という。

 

子ども自身には「元気ないね?なにかあった?」と声をかけるなど、気にかけているということを、明確に伝えたり、チャイルドラインの情報をメモで渡すのも良いと、福田氏は述べている。

 

子どもから虐待を告白されたら

福田氏によると、虐待は家庭という密室の中で巧妙に行われており、口止めされていなくても、子どもは自分の被害を隠そうとする場合があるが、そうした状況でも子どもたちは「信頼できるかもしれないと感じた大人」に、かすかなサインを送っているという。

 

虐待を受けている子どもは、基本的に大人を信用していないため、SOSを受け取ったら、慎重に誠実に関わっていく必要があると福田氏は指摘している。被害を打ち明けられるというのは「もしかしたら、この人は自分の味方になってくれるかもしれない」と思われたということであり、信頼を裏切らないようにしたいと福田氏は説明する。

 

被害が深刻であれば「できるだけ早く、専門的な支援につなぐ」ことが緊急の課題となり、周囲の大人ができることは限られる。それを頭におきながら、子どもにどうしたいかをまずは聞く必要があるという。必ずしも「大人が納得できる答え」が返ってこない場合も多いが、その気持ちをそのまま受け止め「あなたの力になりたい。そのために他の人の力も借りたい」と伝えてほしいと福田氏は述べる。

 

そのほかの注意点として、

  • 虐待を打ち明けられたことを「秘密にする」という約束はしない(子どもに「嘘をつかない」)
  • 加害者へ大きすぎるリアクションは控える
  • 虐待の内容を詳しく聞きすぎないこと(子どもに聞いていいのは「だれに」「何をされたか」だけ。意図せず子どもを傷つけてしまう場合もあるため)

 

子どものSOSを見逃さないために

虐待を受けている子どもに見られる特徴的な行動として、「虐待されていると言った後で、嘘だったと否定する」「言うことをコロコロ変える」といったものがあるという。ただし、虐待の有無については嘘をつかないといい、嘘をつく場合も加害者をかばい、被害を小さく言う嘘がほとんどで、専門家につなぐ際もありのままを伝えれば問題ないと福田氏は述べている。

 

【関連リンク】

児童虐待の背景に潜む3つのリスク要因とは?

「もしかしてこの子、虐待されてる?」と思ったら