「iPhone 15 Pro」で対応した「Wi-Fi 6E」とは? 何が変わる?【専門家が解説】

Appleの新しい「iPhone 15」シリーズでは、「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」が「Wi-Fi 6E」に対応しました。Wi-Fi 6Eに対応すると、これまでと何が異なるのでしょうか。LAN/無線LANの専門家で「All About」ガイドの岡田庄司が解説します。

「iPhone 15 Pro」(出典:Appleのプレスリリース)
「iPhone 15 Pro」(出典:Appleのプレスリリース)
米Appleは9月12日(現地時間)、新型スマートフォン「iPhone 15」シリーズを発表しました。外部接続端子が「Lightning」から「USB Type-C(USB-C)」になるなど、従来シリーズからのアップデートがいくつかありますが、上位機種の「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」については、最新の通信規格「Wi-Fi 6E(ワイファイ シックスイー)」に対応した点もポイントの1つです。

Wi-Fi 6Eに対応するとこれまでとは何が異なるのでしょうか。Wi-Fi 6Eに対応するメリットをLAN/無線LANの専門家で「All About」ガイドの岡田庄司が解説します。
 

(今回の質問)
「iPhone 15 Pro」で対応した「Wi-Fi 6E」とは? 何が変わる?

 

(回答)
「iPhone 15」シリーズのうち、「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」は、Wi-Fi 6Eに対応しています(※)。Wi-Fi 6Eを利用すると、従来より電波の干渉が少なくなります。さらに帯域幅が広がり、より高速な通信が可能となります。※「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」はWi-Fi 6までの対応となり、Wi-Fi 6Eには対応していません

 

参考:【表で見る】「iPhone 15」シリーズのカラーや価格、発売日まとめ

Wi-Fi 6Eとは

Wi-Fi 6Eとは、現在普及している「Wi-Fi 6(ワイファイ シックス)」を拡張した通信規格。6EのEは拡張を意味するExtend/Extendedの略です。従来のWi-Fi 6は2.4GHz帯および5GHz帯を利用していますが、Wi-Fi 6Eはそれに加えて6GHz帯の周波数も利用しています。

Wi-Fi 6Eに対応するメリットは、主に以下の3つです。

Wi-Fi 6Eのメリット(1)従来より電波の干渉が少なくなる

突然ですが、テレビは各チャンネルごとに異なる周波数帯でそれぞれの番組を配信しています。それと同じイメージで、Wi-Fiもチャンネルという20MHz単位の幅を持った帯域で通信を行っています。この幅を帯域幅といいます。

Wi-Fi 6(5GHz帯)は従来、混信に強いといわれてきました。通信できるチャンネルが20chもあるのですが、郊外ならいざしらず都市部では、同じ周波数帯を利用しなければならないシーンも出てきています。同じ周波数帯を利用すると混信により速度が低下してしまいます。

Wi-Fi6Eは混信の心配がほとんどない(画像はイメージ)
Wi-Fi 6Eは混信の心配がほとんどない(画像はイメージ)

Wi-Fi 6Eは、24chものチャンネルがある上に、現状あまり利用されていない周波数帯なので、混信の心配がほとんどありません。そのため快適な通信ができます。
 

Wi-Fi 6Eのメリット(2)帯域幅が480MHzになり高速通信が可能

1チャンネルで通信を行うより、複数のチャンネルを束ねて通信を行う方が高速に通信を行うことができます。例えば1車線の高速道路と4車線の高速道路を比較すると、4車線の方が車がスムーズに流れるのと同じ考え方です。

Wi-Fiでは、最大8つのチャンネルを束ねて、160MHz幅(20MHz×8つ)の高速通信が可能です。従来のWi-Fi 6は帯域幅が400MHz幅なので、160MHz幅の高速通信は2chしか利用できません。Wi-Fi 6Eになると帯域幅が480MHz(※)になるので、160MHz幅の高速通信を3ch利用できるようになります。もちろん、Wi-Fi 6も利用できますから合計5chの高速通信を行うことができます。

(※)Wi-Fi 6Eは規格上最大1.2GHz幅まで対応可能ですが、日本では480MHzに規制中です(2023年9月現在)

また、束ねるチャンネルを2ch/4chにすることもできますから、その活用範囲は大幅に増えます。
 

Wi-Fi 6Eのメリット(3)Wi-Fiがレーダーで止まらない

Wi-Fi 6は5GHz帯を利用しているため、同じ5GHz帯を利用する公的な気象レーダーや航空レーダーと同じ周波数帯を利用してしまうことがあります。Wi-Fiルータは気象レーダーや航空レーダーと同じ電波を使っていることを検出すると、ほかのチャンネルに切り替えるために60秒間のインターバルが必要となり、その間通信が停止してしまいます。

一方、Wi-Fi 6Eの利用する6GHz帯ではレーダー波が利用されていないので、通信が切断されることはありません。
 

この記事の筆者:岡田 庄司
ライター歴は20年以上。パソコン通信時代からネットワークに興味を持ち、LANや無線LANが一般に普及する前からLANの話題を追いかけ続けている。著作はすでに40冊を超え、テクニカルライターとしても活動している。


【表で見る】「iPhone 15」シリーズのカラーや価格、発売日まとめ
 
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