毎日放送などによると、大阪府大東市の大阪府立消防学校で在校生の半数を超える142人が発熱や頭痛、のどの痛みなどの体調不良を訴えていることがわかったという。
142人中78人が、12日学校を欠席し、登校した学生も同様の症状が出ており、病院で風邪と診断された人のほか、溶連菌の陽性反応が出た人もいるという。一方、府内で流行している麻疹(はしか)と診断された学生は今のところいないという。
子どもがかかる病気と思われがちの溶連菌だが、大人も感染、発症する。一体、どのような症状を引き起こすものなのか。医学博士の西園寺克氏がAll Aboutで以下のように解説をしている。
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溶連菌感染症の主な感染経路
溶連菌の主な感染経路は飛沫感染。菌を含んだ唾液などの飛沫を吸い込むことで、呼吸器系に感染すると西園寺氏は説明する。
溶連菌感染で起こる病気
西園寺氏は、溶連菌が起こす主な病気として以下のものを挙げる。いずれも飛沫感染で、気道や皮膚に感染を起こすという。
- 咽頭炎・扁桃炎
- 猩紅熱(しょうこうねつ)
- 急性糸球体腎炎
- リウマチ熱
- 飛び火
- 劇症型溶連菌感染症
咽頭炎・扁桃炎の主な症状・特徴
咽頭炎、扁桃炎では発熱に加えて口の中や喉が腫れる。腫れには痛みを伴い、また扁桃炎では膿みが溜まる事もあるという。
猩紅熱(しょうこうねつ)の主な症状・特徴
急性の溶連菌感染で全身症状が出るもの。発熱、咽頭炎に加え、舌の変化が特徴的という。赤く腫れて、イチゴのような感じになるので「イチゴ舌」と呼ばれると西園寺氏は説明する。
急性糸球体腎炎の主な症状・特徴
急性糸球体腎炎は溶連菌感染症が治ってから数週間後に起きることがある腎臓の病気。主な症状は、疲れやすさ、浮腫、尿量の減少。血圧が上昇し、尿検査では血尿、蛋白尿が見られるという。発症年齢としては小児から若い世代に多い傾向にあるといい、入院して安静と食事療法を行い腎機能が回復するのを待つ。後遺症は通常は残らないという。
リウマチ熱の主な症状・特徴
全身の関節炎(関節痛)を特徴とする病気。心臓の病気、心内膜炎を起こす場合もあるという。また、心臓の弁に起きた心内膜炎によって弁の動きが悪くなると、「弁膜症」という後遺症が残り、将来的に心臓外科手術が必要になることがあると西園寺は述べる。
飛び火の主な症状・特徴
皮膚のあちこちが化膿する飛び火の原因になることもあるという。皮膚の病気なので、菌を含んだ膿や、かさぶたなどに触れることで起きる接触感染。飛び火の原因はブドウ球菌(黄色ブドウ球菌)によるものが多いといわれているが、溶連菌による飛び火の場合、治ってからまれに急性糸球体腎炎を起こすこともあるという。
劇症型溶連菌感染症の主な症状・特徴
「劇症型溶連菌感染症」はごくまれな病気。血圧低下によるショック状態に続き、激烈な皮膚症状が起きる。皮膚炎で皮下の脂肪組織まで炎症が及ぶことを「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ぶが、さらに深い筋肉まで炎症が及び筋肉の表面が壊死する「壊死性筋膜炎」が起こるという。早期に治療を開始しても死亡率は50%以上で、毒性が強くなった溶連菌に感染した場合に起こるとされていると西園寺氏は説明する。感染経路は外傷が多いとされているが不明な場合もあるという。日本での1年間の報告は数十例。
溶連菌感染症の検査法
細菌感染なので検体を培養し、溶連菌がいることを確認する必要があるという。検体採取は喉の咽頭粘液を綿棒でぬぐって一瞬で済む。迅速診断キットを使って検査し、検査結果が出るまでは30分以内という。迅速診断キットで陽性が出た場合、溶連菌感染が病気に関係していると判断されると西園寺氏は述べる。
溶連菌感染症の予防法
溶連菌は飛沫感染だが、マスクなどを使うといった効果的な予防方法はないという。
ほとんどの成人は溶連菌に対する抗体を持っているという。他の多くの感染症の場合、免疫力があるということは、自身も発病せず、他人にも伝染させないことを意味するが、溶連菌の場合は、健康な状態の保菌者がかなりいて、他人に感染力を持っていることがわかっているという。喉に溶連菌をもっていても本人に自覚症状がなく、誰が保菌者か判らないこともあると西園寺氏は説明する。喉が腫れやすく咽頭炎から発熱しやすい人や、何回も扁桃炎を起こす人は保菌者の可能性があるという。
溶連菌感染症の治療法
溶連菌の感染には経口で投与できる抗生物質が有効という。また、溶連菌感染症は解熱してから別の病気を起こす事があるため、解熱してからも、しばらくは抗生物質の服用が推奨されていると西園寺氏は説明する。薬の飲み忘れに注意をしたい。
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