内閣府は8日、「アルコール依存症に対する意識に関する世論調査」の結果を発表した。

  

調査はアルコール依存症に対する国民の意識を把握し、今後の施策の参考にするため行われ、7月28日〜8月7日に実施された。全国の18歳以上の3000人を対象とし、回答率は60.5%だった。

  

調査では、「飲酒をコントロールすることができない精神疾患である」というアルコール依存症の特徴を68.5%の回答者が理解していたが、「断酒を続けることにより、依存症から回復する」は32.2%しか認知していなかった。また、「女性の方が短期間で発症する傾向がある」は19.7%、「一度依存症になると治らない」に関しては15.9%、「お酒に強い人ほどなりやすい」は9.8%で、アルコール依存症への正しい理解は十分でないとみることができるかもしれない。

  

また、居住地域におけるアルコール依存症の具体的な相談場所については、「医療機関」(54.9%)や「保健所などの公的機関」(21.9%)の回答があった一方、「断酒会などの自助グループ」は4.4%にとどまり、「具体的に知っている場所はない」と回答した割合も33.7%に上った。

  

アルコール依存症についての正しい知識や治療法について、メンタルヘルスの専門家がAll Aboutで以下のように解説している。

  

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女性の方がアルコール依存症になりやすい

精神保健福祉士の大美賀直子氏によると、アルコール依存症は男性に多い病気だというイメージを持つ人は多いが、実は女性の場合、女性ホルモンや体重、体内の水分量などが影響して、男性よりも依存症になる期間が短いことが分かっているという。女性は、飲酒習慣を始めた男性が依存症になる期間の約半分の期間で依存症になり、肝臓障害も男性より少量、短期間で進行すると言われていると大美賀氏は説明する。

  

アルコール依存症の治療のゴールは

メンタルヘルスの専門家である中嶋泰憲氏は、アルコールに対する欲求、依存が強く、自分では飲酒コントロールがきかなくなるアルコール依存症は、性格の弱さや不健康なライフスタイルが原因と思われがちだが、実際は、脳内の神経科学的変化や、脳の変化を悪い方向に拍車をかける心理的、環境的要因などが原因であり、「アルコール依存症から回復するためには正しい治療が不可欠」としている。

  

中嶋氏によると、アルコール依存症のゴールは、アルコールに2度と近づかなくなることだという。内閣府の調査でも正しく理解されていなかったことがわかったが、「飲酒に対するコントロールを取り戻し、上手にアルコールと付き合えるようになること」がゴールではないのだという。

  

これは、一度アルコール依存症になると、長期間にわたる過剰飲酒で脳内に神経科学的変化が生じ、脳へのアルコール作用が刻みこまれてしまうからといい、「少量でもアルコールが体内に入った時点で、あたかもスイッチが入ってしまったように飲酒コントロールを失いやすくなる」のだと中嶋氏は説明する。そのため適度にお酒を嗜むことはゴールにできず、2度とアルコールを体内に入れないという徹底した目標を置かなければならないという。

  

治療は、入院療法、外来通院療法の2種類で行われるという。

  

入院療法によるアルコール依存症治療

アルコール依存症では、まず断酒をした時に生じる「退薬症状」に対処しなければならない。退薬症状には、痙攣など生命に危険な症状が起こる可能性もあるため、入院での治療が必要だと中嶋氏は述べる。

  

また、すでにアルコールによって全身状態が悪化している場合や自殺リスクがある場合などは、本人の状態を24時間確認して対処すべき必要もあると中嶋氏は説明する。

  

入院中は、感染症や臓器の機能低下など身体的な合併症状への対処を併せて行い、心身ともに安定した時点で退院し、以後は外来通院で治療を進めるという。

  

外来通院療法によるアルコール依存症治療

外来通院中は断酒を維持していくために、心理療法(精神療法)と、必要に応じて薬物療法が行われるという。

  

心理療法では、アルコール依存症に対する理解を深めることで2度とアルコールを体内に入れないためのモチベーションを高め、同時にアルコールに頼りたくなるような心の葛藤や苦悩に対処するために、生活環境からのストレス解消力を向上させる。

  

薬物療法の治療薬としては、まず、断酒へのモチベーションを高めるための抗酒薬を使うという。抗酒薬は二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドを高めるといい、これを服用しておくことでひどい二日酔いのような症状が出現するようになり、断酒が促される。

  

アルコール依存症に心の問題が合併している場合も、薬物療法を行うという。

  

家族、友人のサポート、自助グループへの重要性

アルコール依存症の治療ゴールである「2度とアルコールを体内に入れない状態」をキープする上で必要なのは、最終的には本人のモチベーション。しかしモチベーションを維持する上で励ましになるのは、何といっても家族や友人など周囲からのサポート、交流だと中嶋氏は述べる。

  

しかし現実には、アルコール依存症に関わる問題行動で家族や友人から距離を置かれて孤立している患者さんが多いことも事実で、治療と併せて人間関係を再構築していくことも、アルコール依存症治療の大きなチャレンジの1つという。こうした困難に立ち向かう上で、同じ目標に向かっている仲間の存在を知り、知識を共有するためにも、自助グループに参加することが望ましいと中嶋氏は勧めている。

  

【関連リンク】

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アルコール依存症の治療法

 
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