2023年5月、Twitter上でとあるツイートが拡散され話題となった。頭骸骨のような見た目の建物の写真に、「オープンしました。明日から仕事ですし死を見つめにおいでよ」という文が添えられている。
1.3万いいね(2023年6月時点)を超えるほど大きな反響を呼んだこの投稿は、兵庫県尼崎市にある私設博物館「シャレコーベ・ミュージアム」によるものだ。
尼崎市に住む筆者は、実はこのツイートが拡散されるよりずっと前からシャレコーベ・ミュージアムを知っていた。ドクロが苦手で敬遠していたのだが、今回のバズツイートを機に、勇気を出して取材してみた。
オープンしたての頃、奇妙な出来事が相次ぎ……
まず館内に入ると「紹介用の映像を見てください」とモニター前に案内された。赤と青の3D眼鏡を掛けて、飛び出す館内紹介映像を見た後に各所を回る。
3階建ての建物だが、1階の時点ですでに展示品は盛りだくさん。ポップさと怖さが共存する不思議な雰囲気が漂っている。
初代館長・河本圭司さん(2019年に逝去)の娘で二代目館長の山本佳代さんにお話を聞いた。
――ミュージアム開設後、奇妙な出来事が相次いだそうですね。
山本佳代さん(以下山本):はい。オープンしたての頃、家族のけがや事故が相次ぎましたが、おはらいをしていただくとピタッと止みました。このミュージアムができたきっかけになった最初の収集品の内側に御札のようなものが貼ってあります。
――その後は特に異変はないですか?
山本:ご安心ください。何度もリピートして来てくれる人も多いですが、皆さんとても元気です(笑)。
――ドクロは怖いもの、というイメージから、苦手意識を持ってしまう人も多いのではないでしょうか。
山本:日本では骸骨やドクロは怖くて縁起の悪いイメージが強いですが、世界を見渡すとさまざまな形で愛されています。
例えばメキシコでは、11月1日と2日に「死者の日」という行事があります。ドクロや骸骨にまつわる装飾品が街中にあふれますが、とてもカラフルで楽しい雰囲気がありますよ。
――館内の随所にこだわりを感じます。初代館長で父親の河本圭司さんはどんな人でしたか?
山本:すごく厳格な父でした。いくつもの医科大学の教授として世界中で学会発表をしたり、警察に専門的な意見を提供することなどもあったため、空いた時間はずっと部屋で勉強していたと思います。
なので日々ドクログッズを収集していることは全く知らなかったです。私が結婚して家を出てから、突然ミュージアムを作る話が出たので、本当にびっくりしましたよ。
――ミュージアムの魅力はなんでしょう?
山本:生活や文化、歴史、医学、人類について幅広く感じることができる施設です。ドクロや骸骨は死を意識してしまうものではありますが、決して怖いだけのものではありません。今、生きている自分を見つめ直すきっかけにもなると思いますよ!
展示品の中でも個人的なイチオシは、ペアの骸骨。数十年にわたる収集の中で全く別の場所、別の時に買ったものですが、元はペアだったようです。後から気付いて、巡り合わせに感動しました。
――どのような世代、雰囲気の人が来られますか?
山本:最初はロックやパンクを愛する人が多いのかな? と思っていましたが、年代問わずさまざまな人が来られますね。カップルで遠方からいらっしゃったと思えば、近所のご年配の方が1人でいらっしゃることもあります。
――平成10年10月10日10時10分10秒に庭にできたオブジェがあったり、2011年11月11日11時11分11秒にミュージアムがオープンしたり、2022年2月22日には日英対応のコレクションカタログが2222円で販売されたりしていますね。2033年3月3日3時33分33秒には何か予定はありますか?
山本:大分先ですね(笑)。でもそこに向けて何か考えるのも良さそうです。今から考えますね。
◇ ◇
インタビューを終えて写真を撮らせてもらうと、非常にノリノリだった二代目館長の山本さん。お会いするまでは仕方なくミュージアムを引き継いだ可能性も想定していたが、そうではない。非常に気さくで、来場者にどうしたら喜んでもらえるかを常に考えている人だった。
ドクロや骸骨にまつわるさまざまなが展示を見られるシャレコーベ・ミュージアム。気になった人はぜひ死を見つめに来てみてはいかがだろうか。なお開館日は不定期の日曜日なので、事前に公式Twitterでのチェックをお忘れなく。
取材協力:シャレコーベ・ミュージアム
所在地:兵庫県尼崎市浜田町5-49
開館日:不定期の日曜日(Twitterで事前告知)
開館時間:10:00~17:00まで(最終入館:16:30)
入館料:中学生以上800円、小学生500円
ホームページ:http://skull-museum.jp
Twitter:@skull_museum