中学受験といえば一般的に“お金がかかる”イメージではありますが、夏休みシーズンを前に高額な夏期講習代にあらためて驚いた保護者も少なくないのでは。かかる出費の中心は塾代ですが、実際どれくらいの金額を費やしたのでしょうか? 中学受験を経験した保護者への取材を通して、教育への負担について考えます。
世帯年収1000万円以上でも切実な「教育費」負担
厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査の概況」によれば、1世帯当たりの平均所得金額は約560万円であり、1100~1200万円未満の世帯は2.2%にとどまります。
一方で、文部科学省「子供の学習費調査」を見ると、子どもを私立中学に通わせている家庭の世帯年収は1200万円以上が約4割と中学受験世帯に高収入の家庭が多い事実がうかがえます。
そんな高収入世帯でも教育費を負担に感じているのが現実。今回取材した家庭はいずれも年収1000万円以上ながら、「教育費への負担を感じるか」という問いに対して「かなり感じる」「まあまあ感じる」と口をそろえました。実際、年間の学校教育費についても、公立中学では約13万200円のところ私立中学では約106万1000円にのぼります(文部科学省同調査より)。
>幼稚園から高校3年生までの15年間の学習費を比較すると?
小学4年生から6年生の塾通いで「100万円単位」のお金が飛ぶ
中学受験をする多くの子どもは、およそ3年間の塾通いをすることになります。低学年のうちは塾に通う頻度が低く費用もそれほど高くないものの、気付いたら高額になっていた、というのはよくあるパターンです。経験者に話を聞いてみると……。
「4年から5年、6年生と、少しずつ金額が上がっていくので、だんだん金銭感覚がマヒしてくるんですよね。月謝に加え、長期休みの際の講習費、模試代など、いろいろ合わせて総額いくらだったか考えると怖いです」(男子の保護者・東京都在住)
「特に6年生の1年間は、講習に数十万円単位の塾代を支払うことがたびたびあり、金額に驚いてはいました。とはいえ、特に6年生の夏以降になって受講しないという選択肢はもう考えられませんから、申込制という形ではありながら、オプションではなく必須という扱いですよね」(女子の保護者・東京都在住)
「塾代はとにかく高い! 我が家は夫が中学受験にあまり乗り気ではなかったので、夏期講習などのまとまった金額を請求されるときは、いちいち渋っていましたし、こんなにお金かけてやる意味があるのかなどと愚痴を漏らしていました。結果、志望校に合格できたのでよかったですが、あれで不合格だったらと思うと……」(男子の保護者・神奈川県在住)
「我が家は、ありがたいことに入塾時からずっと成績優秀者として塾代の優遇を受けていました。その代わり、塾に勧められる学校を受験したり、合格体験者としてインタビュー記事が掲載されたり、ということはありましたが、塾代はほとんど負担になりませんでした。息子が自分で頑張って勝ち取ったものだと思っています」(男子の保護者・東京都)
“特待生”という、うらやましい世界も
多くの保護者がお金の負担を感じていた一方で、1人、違う事情を抱えている方もいましたが、これは少し特殊な世界。優秀な成績の子どもに対して塾費用が免除もしくは割引される、いわゆる“特待生”です。特待生制度を設けている中学も多いので、入学後も学費を免除される状況が続く家庭もあるのですから、うらやましい限りですね。
※「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況」(令和4年9月9日、厚生労働省)
※「令和3年度子供の学習費調査」(令和4年12月21日、文部科学省)
この記事の筆者:古田綾子
雑誌・Webメディアの編集者を経てフリーランスライター。2児の母。子どもの受験をきっかけに教育分野に注力。自らの経験に基づいた保護者視点で、教育界の生の声やリアルな体験談などを取材・執筆。