朝日新聞デジタルによると、奈良県生駒市立大瀬中で8月16日朝、ハンドボール部の1年の男子生徒(12)が35分のランニング後に倒れ、病院で翌日、熱中症による腎不全で亡くなった。市教委は、大瀬中が26日に出した調査報告書で「ランニング中に水分をとらせなかった」「通常は30分間なのに、5分長く走らせた」指導について不適切と判断したという。市教委も不適切と認め、9月初めに遺族に謝罪したと朝日新聞は報じている。
今回、中学校側は不適切な指導があったと認めて謝罪したが、そもそも水分補給に対する意識が違ったらこのような事故は防げたのではないか。まだ暑い日は続くため、今一度熱中症対策を見直すことが重要である。日本体育協会公認アスレティックトレーナーの資格を持つ西村典子氏はAll Aboutで、熱中症予防としての正しい水分補給について解説している。
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脱水症状の原因と特徴
西村氏によると、運動中に汗をかくことで血液中の水分が減り、血液の流れが悪くなる。すると身体にたまった熱を逃がすことや、筋肉を動かす機能が低下し、頭痛やめまい、吐き気などといった体調不良に繋がる。中でも、以下のような症状には注意が必要と西村氏に述べている。
- 筋肉が疲労して、けいれんを起こす
- のどの渇きから倦怠感(疲れたと感じること)を起こす
- 頭痛、めまい、吐き気、大量の発汗などが起こる
- さらにひどくなると意識を失う
こうした脱水症状をそのままの状態にしておくと、やがて熱中症へと症状が移行するという。
適切な水分補給は熱中症予防に効果的
運動中の熱中症予防として西村氏はまず、のどが渇く前に水分をとることが大切としている。あまり冷やしすぎず、常温もしくは8~13度程度に冷やした水を、運動を始める前と運動中、運動後に補給することを西村氏は勧めている。適切な量は以下の通りという。
- 運動を始める30分前、250~500mlを何回かに分けて飲む
- 運動中は20分~30分ごとに、一口以上、200ml程度を飲む
- 運動が終わった後は減った体重分を補うように何回かに分けて飲む
また糖度が5%を超えると水分の吸収率が悪くなるため、市販のスポーツドリンクを飲む場合には糖分濃度を確認し、水で薄めて飲むとより身体への吸収が早くなるという。
塩分・糖分の補給も忘れずに行うことが大事だといい、西村氏は「梅干は塩分とクエン酸を同時にとれる優れもの」と述べている。
正しく水分補給できているか自分で確認しよう
運動後は減った体重分を補う程度の水分補給が必要になるが、運動中にどのくらい身体の中の水分が失われたかは、運動前と運動後に自分の体重を量ることで確認できるという。運動前の体重と比較して、失われた水分量が体重の2%を超えないように心がけることを西村氏は呼び掛けている。たとえば、運動前に体重が50kgの女性であれば、1kg以内の体重減少に抑えるようにする(運動後は49kg)。体重の2%以上の水分が失われると、競技能力が低下するからだという。
また、尿の量と色を目で確認することでも、正しく水分補給ができているかを確認できるという。いつもよりも尿の色が濃く量が少ない場合には、代謝産物が多く、もっと水分をとる必要があり、色が薄い黄色であれば、水分の代謝バランスがよい状態だと西村氏は説明している。
水分補給で気を付けたいこと
最後に西村氏は脱水、熱中症予防の水分補給の気を付けるべきこととして以下のチェックポイントを挙げている。
- のどが渇いたと感じる前に水分補給をする
- 飲み物の糖分濃度に注意し、必要に応じて水で薄めて飲む
- 飲みすぎは消化器官に負担をかけるので、適時適量を心がける
熱中症は炎天下の夏特有のものではなく、湿気の多い時期や曇りの日でも起こることがあるので注意が必要だ。西村氏は「正しい水分補給で脱水症状や熱中症を予防し、よりよい身体のコンディションを保って楽しく運動しましょう」と述べている。
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