史上初の豪華さ! 東京国立近代美術館「重要文化財の秘密」展は波乱万丈な作品だらけ

東京・竹橋の東京国立近代美術館で、明治以降の絵画などのうち重要文化財に指定された作品のみによる豪華な展覧会「重要文化財の秘密」がスタートしました。作品のエピソードはどれも波乱万丈で、知れば知るほどますます魅力的に見えてきます。

入り口
教科書で見たことがある名品ばかり! 作品にまつわるエピソードがすごい東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」

日本で最初の国立美術館であり、19世紀末から現在までの日本美術の名作を所蔵している東京国立近代美術館。開館70周年を記念して、明治以降の絵画などのうち重要文化財に指定された作品のみによる豪華な展覧会「重要文化財の秘密」がスタートしました。
 
明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財のみで構成される展覧会は史上初。この条件では2022年11月時点で68件が重要文化財に指定されていて、そのうち51点が今回展示されています。
 
横山大観、川合玉堂、鏑木清方、上村松園、藤島武二、黒田清輝、岸田劉生、高村光雲ら、日本美術界のそうそうたる顔ぶれの大作が並びますが、ただの名品展ではないのがポイント。どの作品も、重要文化財に指定されるまでのストーリーが波乱万丈で、そのエピソードがとことん面白いのです。
 

なぜこれが重要文化財? 紆余曲折のエピソード

日本画
まずは日本画の重要文化財が並ぶゾーンからスタート

そもそも重要文化財とは「1950年に公布された文化財保護法に基づき、日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料などの有形文化財のうち、製作優秀で我が国の文化史上貴重なもの等について文部科学大臣が定めたもの」のこと。

2023年3月1日時点で1万3000件以上の作品が指定されていますが、明治以降の絵画・彫刻・工芸に絞ると、たった68件しかありません。これは制作されてからあまり時間がたっておらず、本当に価値があるのか見極めが難しいというのが理由の1つだそうです。
 
発表当時は、絵なのか? 模様なのか? と賛否が割れるも、後に評価された福田平八郎の『漣』や、卒業制作の作品として描かれた時には19人中16番目という低評価、しかし後に時代を象徴する記念碑的作品として評価を得た萬鉄五郎の『裸体美人』。誰もが知る油絵の名作だけど、なかなか指定されず、1999年にやっと重要文化財になった黒田清輝の『湖畔』などから分かるように、時代の空気や、変化する価値観とピタリと合ったタイミングでしか重要文化財の指定は得られません。そのため歴史に翻弄されたエピソードなど、作品ごとに紆余(うよ)曲折・波乱万丈のストーリーがあり、非常に興味深いのです。
 
アナウンサーの新井恵理那さんと声優の小野大輔さんがナビゲートする音声ガイド(1台650円・税込)には、このあたりの情報が満載。会場でのレンタルを強くおすすめします。
 

40メートルの絵画も!

横山大観『生々流転』
横山大観『生々流転』(重要文化財)東京国立近代美術館所蔵/「重要文化財の秘密」での展示期間・通期

今回特に見逃せないのが、会場入ってすぐのところに展示されている横山大観の『生々流転』。

山奥の1滴の水が山深い地から渓流となって大河となり、そして最後は龍になって天へ帰るという作品なのですが、なんと全長40メートルという文字通りの超大作! 全て広げての展示が難しい、展示スペース泣かせの逸品です。

所々になんともかわいらしい人々の生活の様子も見られて楽しいのですが、全貌を見られる機会は大変貴重。この機会に観ておきましょう。
 

貴重ゆえ、どんどん変わる展示作品

彫刻・工芸ゾーン
ラストは彫刻・工芸のゾーン

当たり前ですが、展示されているのは人気作ばかり。全国各地で開催される回顧展などに貸し出される機会も非常に多く、これだけの数を一堂に集めるのは美術館としてもかなり苦労があったそうです。

しかも重要文化財だけに作品の保護が大事。それゆえ長い間は展示できないものも多々あり、期間中も作品の顔ぶれがどんどん変わっていきます。会期中何度訪れても違った作品と出会えるのは刺激的ですね。
 
世間の評価などものともせず、己の道を突き進んでいた芸術家たち。その波乱万丈な逸話を知れば知るほど、わが道を貫くことの尊さも伝わってきます。
 
 
<DATA>
東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
会期:2023年3月17日(金)~ 5月14日(日)
休館日:月曜日(ただし3月27日、5月1日、5月8日は開館)
アクセス:東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分


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