「エスカレーター」は東京と大阪で立つ位置が違うのはなぜ? 正しい乗り方は? 【エスカレーターの豆知識】

3月8日はエスカレーターの日! エスカレーターの語源や、関東と関西で片側空けが逆の理由など、「違いの分かる人」になれるエスカレーターの豆知識をご紹介します!

3月8日はエスカレーターの日!


1914年のこの日、上野の大正博覧会の会場で日本で初めてエスカレーターが試運転されたことにちなんでいます。


今回はエスカレーターの語源や、関東と関西で立つ位置が逆の理由など、「違いの分かる人」になれるエスカレーターの豆知識をご紹介します!
 

画像出典:いらすとや

 

「エスカレーター」はエレベーター会社の登録商標だった

エスカレーター(Escalator)は、建物の各階に移動する目的で使われる階段状の昇降装置。1896年、発明家のジェシー・W・リノによって、世界初の実用化されたエスカレーターがニューヨークのコニーアイランドに設置されました。


ただ、こちらは傾斜のついたベルトコンベアのようなものでした。現在のエスカレーターのような動く階段タイプを実現させたのは、同じく発明家のチャールズ・シーバーガーです。1900年のパリ万博への出展に合わせて「escalator」と命名して商標としました。


シーバーガーの手稿によると、ラテン語で「上に上げるもの」を意味するscalaに接頭辞・接尾辞を付け加えたものとされています。1910年、シーバーガーはエスカレーターの特許権を、共同制作したオーチス・エレベータ・カンパニーに売却。


同社はエレベーターの落下防止装置を発明し、エレベーター(Elevator)という名前も命名したエリシャ・オーチスが設立した世界最大のエレベーター会社です。エレベーター会社がエスカレーターの特許・商標も持っていたというのは面白いですね。


日本エレベーター協会によると、日本でも商標が普遍名称化する1950年まではエスカレーターという名前を使うことができずに「自動階段」などと呼ばれていたそうです。

 

「エスカレートする」という言葉はエスカレーター登場後に生まれた

上述の通り、「エスカレーター」はシーバーガーによる造語なので、それまでは存在しない言葉でした。つまり、現在当たり前に使っている「行動がエスカレート(escalate)する」や「上長にエスカレーション(escalation)する」といった言葉は、エスカレーターを語源とする言葉なんです!


元々は単純に「エスカレーターを使って上に移動する」という意味の動詞として「escalate」が生まれ、そこから今日で使われている「徐々に増大・発展・悪化する」という意味になりました。今で言えば、スマホを使うことが「スマホる」という動詞になった、といったようなことが起きたわけです。


エスカレーターは発明されてまだ100年余りですが、人類の歴史、そして私たちの生活に大きな影響を与えたことが分かりますね。

 

立つ位置が関東と関西で逆の理由

日本でエスカレーターの「片側空け」が始まったのは、1967年に阪急電鉄が梅田駅のエスカレーターで「左側をお空けください」とアナウンスで呼びかけたのが最初とされています。


ロンドンの地下鉄に倣ったとされていますが、そのルールが1970年の大阪万博で定着。アナウンスは1998年に打ち切られましたが、30年も続いた習慣は変わらず、現在でも大阪とその通勤圏では「左側空け」になっています。


一方、東京では1980年代末ごろから、自然発生的に「右側空け」が始まったとされています。右側を空けることになった理由は、駅構内の「左側通行」のルールが影響しています。


現在の道交法では、後ろから来る車との接触を避けるために「人は右側通行・車は左側通行」になっていますが、1949年に改正されるまでは「人も車も左」でした。これは武士の刀の方向や、心臓の位置などが影響していると言われています。


大戦後、GHQは米国と同じく「人は左のままで車は右」に変えようとしましたが、日本中の標識を変えるのは財政的に困難であるため「人は右に変えて車は左のまま」となりました。


しかし、車が走らない駅の構内までは指導が徹底されず「左側通行」が残りました。この「左側通行」のルールでエスカレーターに乗ると、左側で立ち止まる形が自然です。必然的に右側は急ぐ人の追い越し車線として空けるという「右側空け」が定着していきました。


この東京方式が新幹線網の拡大に伴い地方へ広がっていき、現在の「全国的に右側空け・大阪周辺だけ左側空け」という違いが生まれることになったわけです。


ただし、どちらも正しい乗り方ではありません。


安全面からも耐久面からも、エスカレーターは片側に寄らず、追い抜かず、手すりに捕まり立ち止まって乗るのが正解。鉄道会社でも現在はそのようにアナウンスしています。ただ、やはり長い間の習慣を変えるのは難しく、東京も大阪も「暗黙のルール」がそのまま残ってしまっているのが現状です。



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