「1カ月間断酒して!」
そう言われて、やり切る自信がみなさんにはあるでしょうか?
実は今、1月に「断酒」してお酒との付き合い方を見直すきっかけにする人が増えてきています。世界的にトレンドになりつつある「ドライジャニュアリー」というムーブメントについて、日本初のノンアルコール専門商社の代表である著者が紹介していきます。
今やアメリカ人の7人に1人が「断酒」する?
「ドライジャニュアリー」とは、イギリスのAlcohol Change UKというチャリティー団体が企画したイベントで、1月にお酒を断つことでアルコールとの付き合い方を見直そうというものです。
もともとは、あるイギリス人女性が2月のハーフマラソンに参加するために、1月に禁酒してトレーニングに打ち込んだことに端を発します。
この1カ月間の禁酒体験は、本来の目的であるハーフマラソンの完走はもとより、彼女の体に減量、快眠、気力充実などいくつものポジティブな結果をもたらしました。その体験を得た彼女は、お酒との付き合い方に疑問を感じる多くの友人知人の良き相談役になっていったのです。
その後、彼女はAlcohol Change UKに勤め、自身の体験をドライジャニュアリーという企画に落とし込み、2013年からイベントをスタート。
クリスマスや大みそかなど行事が盛りだくさんな12月の翌月で、お酒を控えたいという人が一定数いたこともあり、ドライジャニュアリーは徐々に浸透していきます。
2013年にイギリスにおいて4000人規模でスタートしたキャンペーンは、大西洋を越えてアメリカでも広く市民権を獲得し、今日ではアメリカ人のおよそ7人に1人が参加する巨大イベントに成長しているとも言われています。
海外の「ドライジャニュアリー」成功要因は?
では、ドライジャニュアリーは海外でなぜここまで成功したのでしょうか?
日本と同じように海外でもお酒の消費量が減っていて、反動としてノンアルコールの需要が上がっているのでは?と思う人もいるかもしれません。それは半分正解で半分不正解です。
確かにZ世代をはじめとした若年層ではお酒を飲まない人の割合は増えていますが、全体としては横ばい~微増が近年の傾向です。
では、何が人々をノンアルコールにつき動かしているのかというと、以下の3つが原動力になっているようです。
1. 健康意識の高まり
1つ目は、健康への関心がここ数年(特に新型コロナウイルスの影響もあり)で高まったということです。ただ飲む頻度が減ったというだけでなく、若年層を中心にビンジ飲酒(暴飲)することが減ってきています。
2. ノンアルコール商材の高品質化
2つ目は、ノンアルコール商品が洗練されてきたということです。これまで、ノンアルコールというとジュースやソーダなど「お子様のドリンク」というイメージが強かったのですが、ここ7~8年のノンアルコール産業の変化によって、そのイメージは覆されました。
今では、コーヒー店でデカフェ(ノンカフェイン)コーヒーを注文するように、当たり前のこととして、レストランやバーでノンアルコールの商品を頼むことができます。
こうした「大人の空間」や「大人の時間」に飲んでも違和感のない商品が数多く出てきたことが、消費者の行動にも変化を与えているようです。
3. リスク回避的な志向
3つ目は、主に若年層を中心としたリスク回避的な志向です。
健康リスクだけでなく、酔っぱらった自分の姿が友人の目に奇異に映らないか、SNSに投稿されても大丈夫か、気が大きくなって誤った行動(飲酒運転など)をしてしまわないか……。そんなリスクを背負うくらいなら、いっそ飲酒しない方が良いという考え方です。
人々のこうしたノンアルコールへの流れが、タイミングよくドライジャニュアリーというイベントと一緒になったことで大きな流れとなったようです。
日本における「ドライジャニュアリー」の可能性
では、日本での受け入れられ方はどうでしょうか?
日本にドライジャニュアリーが本格的に輸入されてきたのは2022年です。国内にファッションビル「PARCO」を展開するパルコによって、オンラインおよび一部店舗でのノンアルコールドリンクの販売、トークイベントという形で実現されました。
さらに2023年の今年も、パルコは引き続きイベントを実施しており、参加企業は倍以上に増え、渋谷パルコでのDJイベントなども企画されています。SNSなどでも「#ドライジャニュアリー」というハッシュタグは出てきていますが、まだまだ認知度、規模ともに小さいのが現状です。
それでも、海外でのノンアルコールの広まりを支えた3つの要因は、そのまま日本にも当てはまるようにも思えます。
「ドライジャニュアリー」どう始める?
「そうは言っても、もう1月だし、お酒も飲んでるし……」という人もいるでしょう。
でもご安心ください! ドライジャニュアリーの目的は禁酒や断酒ではなく、お酒との付き合い方を見つめ直すことにあります。
いつも習慣的に開けてしまっているその缶ビールを、自分が本当に飲みたくて開けているのか、飲まなければどうなるか……そんなことを考えてみるのもドライジャニュアリーの一歩ではないでしょうか。
安藤 裕プロフィール
ノンアルコール専門商社株式会社アルト・アルコの代表取締役。大学在学中にワーキングホリデービザで単身渡仏し、現地の食文化に触れ、以来食分野でのキャリアを志す。海外のトレンドを先んじて取り入れるため日本初となるノンアルコール専門商社アルト・アルコを起業。2021年には『ノンアルコールドリンクの発想と組み立て』(誠文堂新光社)を上梓。
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